中平 康監督 日活 AmazonPrimeVideo
またまた友人のオススメ作品です。が、非常に奇妙な映画作品なんですけれど、大変いびつな感じを受けるんですけれど、大変面白かったです。
とにかく、芦川いづみさんが魅力的!これは相当な人気があったであろうと思われる女優さんで大変魅力的です。私が見た事あるのは川島雄三監督の「幕末太陽伝」だけなんで、そこまで注目はしてこなかったのですが、素晴らしく美しい。美貌のなせる業なんでしょうけれど、それだけでない演技も見せてくれます、でもこれは、もしかすると監督の好みの演出なのかも。
1965年の作品です。
戦後の昭和。友人と上司の結婚式に出席するツルカワ シマコ(芦川いづみ)は30歳になって結婚を焦り・・・というのが冒頭です。
現在でも感じる事が出来る、結婚という制度でもあり文化でもあり、当然生活でもある事を考えさせるような批評性のある部分もありますが、とにかくかなり突飛な話しと言えなくもないです。
しかし、なによりも芦川いづみさんの魅力的な表情がたくさん見れます、そういう意味では成瀬己喜男監督の「乱れる」(邦画の今の所完成度と衝撃度でオールタイムベスト級に好きな作品です)に近いとも言えますが、こちらはもっと起伏のあるメロドラマに満ちています。
悲しむ、嬉しがる、パッと明るく転換したり、激しく動揺したり、目まぐるしく表情が変わる芦川いづみさん、本当に表情豊かです、そして凛々しい。ある文章を書くシーンの、机に向かっている芦川さんを、ベタにカメラは机の高さで捉えた顎をひいた決意を持った芦川さんの表情は大変凛々しかったです。奥に見えるシマコの母とのギャップ!(シマコの母を演じている俳優さんのお名前がワカラナイのですが、自然さ!演技の自然さというより、本当にこういう人なんじゃないか?と思わせる自然さ!圧巻です、ただおろおろするだけなんですけれど・・・)演技が上手いというのは、映画内現実の中で、そういう風に、ぴたりとはまって見せられる、映画内現実感がある人、だと思っているのですが、本当に凄いです。
沢村貞子の演技はちょっと凄みを感じましたし、この人あまり認識していませんでしたけれど、相当に幅のある演技が出来る人だと感じました。これは相当凄いですよ・・・名わき役という事になってるのでしょうけれど、確かに!と感じました。なんというか、メガネを外す、というだけでスイッチの入るあの目の演技は、本当に凄い・・・
それにある未亡人役の俳優さんの名前も分からないのですが、とんでもなく肝の据わった、ちょっとどう演じるか?でかなり変わってしまうキャラクターに命を吹き込んで、非常に突飛な、かなり異様な展開の重要な人物に、重みを与えてくれています。それにしても凄いセリフ・・・令和の今ですと完全なる死語を、その時の用例として用いられている所を目の当たりにしました・・・いや、この昭和初期でもなかなか使わない単語だと思います。
これ、とても日本的な文化の中での「結婚」という制度の成り立ち方を捉えた作品だと思います。そういう意味で言えば、これからも晩婚化というか、既に晩婚どころではない世界なので、もしこの主人公である芦川いづみさん演じるところのツルカワ シマコさんが現代に生きていたら、昔は窮屈で、世間に縛られていた、と感じる事でしょう。もちろん、逆に今でも縛られている部分もたくさんありますし、何も考えないで『今までこうだったから、何も考えずに従う』という事が出来るのであれば幸せな世界だったんだな、とも思う事でしょうけれど。
生まれる時代や場所は選べないですからね・・・そして2022年の日本は平和でもありますが、だからこその地獄と言うモノもあると私は感じます。どの世界にもその世界なりの地獄があるように。
注目はもちろん芦沢さんなんですけれど、本当に『おい、どこで見つけてきたんだよコレ・・・』という銅像が数体出てきます・・・すげぇケンタウロス・・・マジで、いろいろな暗喩に使えるよコレ・・・と思いました・・・絶対、監督の趣味だと思う。
芦川いづみさんに興味のある方に、オススメ致します。
早川千絵監督 ハピネット
死生観に纏わる映画はいろいろありますが、なかなか考えられています。けれど、個人的には物足りなく感じました。設定も生活描写も問題提起も良いが、もう少し練られたのではないでしょうか?解決方法についての描写も必要だったと思います、もう少し掘り下げて欲しかった。
最大の難点は、ACP(アドバンス ケア プラン)に対する言及が無かった事です。物足りないというか、はっきりとリサーチ不足に感じます、この問題を扱うなら。ココが1番の難点。
映画そのものの感想の前に、映画鑑賞マナーについて
今回鑑賞の際に、隣席の2人組は映画の冒頭が始まった瞬間に劇場入り(注 最初の予告も鑑賞マナーについても映画泥棒についても見ていない)してきた男女の年配男性は恐らく私と同じか少し上くらい。まず席に着くために結局私の視線を遮る。その上着座してから喋り続けたので、思わず私がシーッっと声を出してしまった(深く反省・・・でも他にどうすれば良いのか・・・)。その後、映画は112分なのだが、合間合間に携帯を取り出し光らせる、都合5回。
本当にこういう年配者の指導やマナーの徹底について、どうしたら良いのか?考えてしまう。
今回の客層はおよそ6割の座席が埋まっていて、かつ、年配者が6割くらい。とにかくおしゃべりが多いし、年配者は人格がより良くなる、というような幻想はすでになく、基本感情のコントロール閾値が下がって、意識の駄々洩れが始まるわけで、しかもそういう年配者の耳目を集める映画なだけに、もう少しどうにかならないモノか?と考えてしまう。ゴムパッキンが経年劣化するのと同じように、感情も、その発露も、緩んでしまう。
映画のテーマと同じだが、生きたい人は生きて行けばよいが(ただし同調圧力が高く、空気を読む社会である事を考慮しなければならないが、そもそも社会が幼稚な気もする)、死にたい人が死ねる社会が成熟と言うモノではないか?また、生きていくのであれがもう少しマナーなりルールなりを考えて欲しい、それこそ、不平不満が社会現象になれば法治が必要になり、非常に窮屈な社会が実装されてしまう・・・だから、マナーである事をもう少し徹底しなければならないのだが、良い方法がまだ行き届いていないのが現状と言わざるを得ない。
人格攻撃では無く、服装もだらしなく(人の事は言えないのは重々承知だが・・・)マナーも無い人間を尊重出来ないし、年配者だというだけでは無理だ。儒教の欠点はここにあると思う。
閑話休題
超々高齢化社会(高齢化率21%で高齢化社会ですが、日本は2017年に27.7%なので・・・)で社会保障費の負担に若年層が恨みを持つ日本を思わせる国で、若年者に老人が襲われる事件を契機に、75歳以上の死ぬ権利を認めた社会を描く映画です。
倍賞千恵子さんが演じる75歳オーバーの単身者、老人介護を仕事に持つ外国人労働者、PLAN75を実際に施行している行政の若者、の3つのパートから成り立っています。
高齢者の在宅問題、多死問題、行政の管理問題、賃貸問題、それこそ様々な問題が描かれてはいるが、その解決策がほとんど見受けられなかった事が非常に映画をシリアスでヘヴィーに魅せてはいるが、希望もない状況に向かわせている気もします。
例えば、確かにPLAN75という年齢の区切りは感覚として理解出来るのだが、女性の平均年齢は2020年の厚生労働省調べですと、87.74歳で、男性は81.64歳で、既に75歳を大きく超えています。
また、恐らくですけれど相模原の事件を基に高齢者に置き換えて、契機に変えていますけれど、果たしてそんな事が起こるであろうか?という疑問もあります。何故なら、その後施設側やその環境が改善、もしくは変わったというように感じていないからです。
映画でこの手の問題は結構数多く描かれていますけれど、中でも秀逸だったのは「未来惑星ザルドス」と「ソイレント・グリーン」だと思います。漫画で言えば藤子・F・不二雄先生の「定年退食」ですね。
この中でも最も良い解決策は、個人的には、恐ろしくもあるけれど理にかなっているので「ソイレント・グリーン」のホームだと思います。
個人の意思が働かなければ、自己決定(と言っても、自由意思が存在するのか?という論点すらあるのですが)がなされていなければ、そして自らの行動でなければならないのではないか?と考えています。
だからこそ、ACP(アドバンス ケア プランニング)の意義があり、未来は不確定なので、備えなければ、それこそ様々なケーススタディを考慮した上で、決定しなければなりません。しかもその事を周囲に伝えておかねば、それすら叶わないわけです。
非常に難しい問題で、死を忌避する国民性のあるうちの国だと、より難しくなります。個人の尊厳が認められていれば、もう少し導入しやすく広まり易いのでしょうけれど、とても現在の状況は進んでいるとは言えないのではないか?と思います。
これは死生観も非常に重要ですけれど、ムラ社会とか、家父長制とか、家制度とかに密接にかかわってくるので、この辺が変わらないと難しいのでしょうね、という事は未成熟な社会なんだな、コンテクストが重要視される社会で生きていれば、忖度という便利に働く部分もありますけれど、主語述語を明記しない負の側面も必ずあります。
この映画で最も興味深かったのは、行政に、もっと言うと市区町村レベルの行政に、その執行が担わされている、という点です。
行政が担う事によって、非常にカフカ的な、何処に責任が発生するのか?が分からなくなる点が非常に面白い、と感じましたし、とても恐ろしくも感じました。
既に超々高齢化社会に突入していますし、出生率は1.36(2019年)ですし、2025年、あと2年半後には2人に1人が50歳という国になるますし、もう少し真剣に考えるべき時が来ているように感じます。その契機になるのであれば、出来ればACPの話しをいれて欲しかったです。
超高齢化社会を迎える国の人にオススメ致します。
アテンション・プリーズ!
少しだけ、たくさん考えましたが、少しだけネタバレ含む感想になります。
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PLAN75を進めると、給付金が発生するのですが、その金額が10万円というのも驚きました。そして、それくらいにされそうだな、とも思います。年金制度を考えればこの先1年間分の社会保障費を支払っても良いくらいだと思われますが(はっきり映画内で、寄り添いつつ、PLAN75権利行使【もっとはっきり言えば、自死を選択】するように、オペレーターを管理するであろう監督官と思われる人物が、オペレーターたちを諭しています)、でもなんだかんだ言って現政府であれば10万円くらいに落ち着きそうな感じもします。 国家の為に死する事に親和性が高い、という趣旨の発言を、PLAN75広報活動におけるCMで、行使するであろう人物が言っているのも、なかなか面白い指摘だな、と感じました。 この行政の執行に関する部分は大変新鮮な描写も多かったのですが、しかし残念ながら、それ以外の部分で目新しいものはあまり存在しなかったとも言えます。 何しろ、何故主人公である倍賞さんが生き残ったのか?その後は戸籍も財産も所持品や金銭すらない状況で放り出されていますし、そこに希望が存在するのでしょうか?ここで思い出されるのは、浅野いにお先生の描く超々々高齢化社会での、科挙みたいな制度を描く漫画「TEMPEST」です。まぁこれもネタバレになってしまいますが、高齢者を排除する執行を高齢者に背負わせるという、非常に合理的でありながらグロテスクな社会を描いています。
自国民の介護を外国籍の方にさせる、というのも凄く厳しい状況ですけれど・・・ここはもっと脚本を練れたと思います。 「煙か土か食い物」というタイトルの小説があるのですが、本当に名言。戦場か山か海、というのが今の所の私の答えなんですけれど、それも多大なる迷惑行為であるのも事実ですし、今読まねばならないのはもしかすると、古市憲寿著「平成くん、さようなら」なのかもしれないです。
自死問題を扱うと、何故何歳からはよくて、何歳まではダメなのか?に答えなくてはなりません。もしくはルール化の事です。宗教とか神を持ち出さずに。そして、現状はモラル的な事でしか、ブレーキがかかっていません、何しろ止められませんし。それに日本ではH10からH22までは3万人を超えています、確かにわが国は自死に親和性が高いかも知れません。