ポール・トーマス・アンダーソン監督 ユニバーサル
物凄く、おしゃれです。おしゃれとしか言いようがないセンスを感じます。ウェス・アンダーソン監督とはまた別のおしゃれであり、ベクトルが違うのですけれども、まさかPTAがこんなに重くない映画を撮るとは!と言う意味で驚愕した。
一言でまとめると、『センスある少女漫画家を目覚めさせて名作を生ませる基となる映画』です。
少女漫画の基になるセンスばかりが描かれています。音楽も、ベタではない、しかし分かる人には分かるであろう曲(すいません、音楽に詳しくないので、分かる部分私には僅かでしたが、でも、センスがある、という事だけは誰でも分かる!!!!!)が場面にめちゃくちゃ合致していて、最高にアガります。当然、ファッションセンスも美術センスも、しぐさセンスも、すべてがハイクオリティ。しかも70年代の話しなので、割合古臭くなりやすい(しかも80年代よりも前だとどうしても古臭くなりやすいのに)そうならないのが凄いです。
主演は映画初主演なんで全然知らないアラナ・ハイム、そして(俺たちの)フィリップ・シーモア・ホフマンの息子クーパー・ホフマン!!
アラナ・ハイムの、確かにカワイイとは言い難く、美人というには少し違うのだけれど(私の顔の事は当たり前ですけれど、神棚のはるか上に置いておいての発言でありますが)チャーミングで、なによりシンパシーを感じやすい女性が多いのではないか?と感じました。ほんと表情がクルクルと変わり、気分で行動を起こし、家庭でも反抗的であって反抗しきれている訳では無い、凄くセンシティブな感じでいいです。
そしてクーパー・ホフマン(という名前が、日本で、どう略されるのか?興味あります、私は略語を使いたくありませんが)の、非常に強引であり、そしてある種の計算高さもあって、しかも高校生で芸能界にいるという自負もある役を、堂々と演じているのが本当に凄い!
ここに脇を固めるのが、ショーン・ペン!
こういう人いるんだろうなぁ~マッチョの塊!でも渋いし、馬鹿。でも最高。こういう役引き受けてくれて嬉しいなぁ。段々と往年のスティーブ・マックイーンみたいになってきてますね。
そしブラッドリー・クーパー!
なんでこの役?って思いましたけれど、マジでスゴイ演技!今作の中で1番爪痕を残しています!!目のキレたときの演技最高です。役者さんてやはりどこかでネジが外れてるんでしょうねぇ。
そしてベニー・サフディ!
サフディ兄弟監督の弟で「グット・タイム」での役が忘れられないです。今作も苦悩する市長候補を演じていますが、この人周りの演出、脚本は本当に素晴らしかった、いろいろな意味で(ネタバレを避けるためにです)細心の注意を払いつつ、しかし、とてもセンス感じるオシャレなのに、ここだけ大真面目な大上段に振りかざした現代にも繋がる問題を浮き彫りにしていて、その手法含めて素晴らしかった。
冒頭、必ず2回言う話し、とてもイイです、引き込まれます。
そして大事な場面で、盛り上げが必要な場面で走り出す、使い古された、誰でも観たことある演出なんだけれど、それが、凄くイイ。計算されているんだろう、もちろん、でも気づけないし、逆光のラストカットの1つ前、初の接触シーンでの逆光のドンピシャで待ってました感よ!!最高です。上手すぎる!!
とベタに褒めてみましたが、映画の脚本としては、もちろん素晴らしいのですが、ゲイリー・ヴァレンタインの自我肥大は気になるところだし、PTA監督作品の中で1番はやはり「インヒアレント・ヴァイス」ですよ、という評価は崩れなかったけど、良かったです!
音楽が好きな方、少女漫画が好きな方にオススメ致します。