川和田恵真 監督 バンダイナムコ
2022年見逃し後追い作品 その3
本当にU-NEXTには感謝しかないです。今年の見逃した作品の中でも結構気になる作品。ただ、テーマ的に結構ヘヴィですし、今の私の精神状態で大丈夫なのか?ちょっと懸念があったのですが、そんなものはもうどうでもいいくらいの、傑作。初監督でこれはマジで本当に優秀な人って世の中にはいっぱいいるのだなぁ、と思う次第。
埼玉県に暮らすクルド人の一家、父、娘サーリャ(嵐莉菜)、妹、幼い弟ロビンの4人家族です、母は他界しています。サーリャは高校3年生で受験も控えているのですが・・・というのが冒頭です。
まず、この嵐莉菜さんというキャスティングが素晴らしい。なにこの主役の存在感。完璧。正直例えに出すのは良くないと分かっていても、episodeⅦが受け入れられたのってDaisy Ridleyさんのおかげだと思いますけれど、同じくらいの衝撃を受けました。
眼差し、佇まい、雰囲気、どれも初主演とは思えないですし、とにかく目の演技は本当に凄いと思いました。これはきっと監督の演出込みだと思いますけれど、本当に凄い。驚愕。言語もかなり難しい、母語ではないのに、自然でどういう才能の持ち主なんでしょう・・・神は二物を与えずって言ってた人いますけれど、全然嘘ですね・・・それか努力する才能があるんだと思いますけれど、本当に凄い。
そしてそれをこういう脚本の主演に連れてこれる監督がまたスゴイし、これが何と言いますか、この家族全員本当の家族というのが、また恐ろしいのです・・・
だって、このお父さんの、日本語のたどたどしくないのに、何処かにまだ不自然さがある感じ、演技や演出で出すの難しいですよ、ある一定の時期にしか現れないと思うので。何と言いますか、演技に見えないのに、役者じゃないというのが、監督の凄さだと思います、流石是枝監督関係者。驚愕です。
そして男の子を演じている奥平大兼さんの自然さも光ります。初々しいのに白々しくないんです。こういうのって本当に珍しいですし、成功していると思います。
テーマについても、流石にある一定の歳になると、移民排斥と融和というだけでない、グレーゾーンについての運用の問題である、とは理解していても、だからと言って個別ケースにはかなりの負荷がかかっていて、それも非人道的である事に、理解はしていても、でも、何の行動も起こしてなかったです、私が。それが、この映画の中で、ある一つの例を知る事で、これはマズイと思うと同時に、未だに非常に閉鎖的な部分があるのだな、とも思います。でもそれで良かった部分(例えば外圧に緩衝地帯がある)もあるし、悪かった部分ももちろんあるので、簡単に良いとか悪いとか言えないけれど、特徴なんだな、とは思います。
それでも、もし、私が同じ境遇で、同じ立場に立たされたら、と思うとやるせないですし、法律や規則というのは理解出来るけれど、受け入れられないと思います。そしてだから、出来る事が何かあれば、と、この映画を観た直後は思います、まるでカンフー映画を観た子供が、映画館から出てきて真似するのと同じくらい拙く幼いとしても、良い事でもあると思うし、知らないのと知っているのは全然違う。
高校生の女性と男性は実年齢で同級生でも、精神年齢で恐らく幼児と成人くらいの開きがあるのを、現代的に、そして男性にも嫌味なく届く演出になっているのも良かったです。
これが初監督・・・シンジラレナイ。
それと、NHKが協力しているみたいなんで、NHKエライと思いました。こんなにバカでかい国家予算を持っていて、受診料をさらに手に入れているのもどうかと思うし、もう少し国営放送とは言え自律性を持たせた方が、とかいろいろ意見はあるけれど、この映画に協力している、というだけで素晴らしい。
もし、海外で日本人が同じ境遇だったら、多分、国家が介入するレベルだと思いますけれど、これが難民なので国家が出てこない。もう少し緩和して良いと思います、でないとあまりに苛烈過ぎると思います。グレーゾーンの運用を頭使ってやりましょうよ、面倒でも、それが交易で共益に繋がると思うんだけど。
そもそも『外国人』という多分江戸時代の鎖国制度のおかげなのか?ワカラナイけれど、異文化を受け入れる土壌がそもそも無いから、当たり障りのない言葉を話しているようで、相手を深く傷つけている 自覚 すらないという恐ろしい事態に陥っているのが、日本の文化なのかと思うと、本当に恥ずかしく恐ろしい。そしてそれを、善しとしてる、知らない事なんだから良いんだ、という雰囲気を、山本七平の言う「空気」を感じる。 私も同じように行っていた事を、そしてこれからは注意しようと思受けれど、繰り返してしまう事を恥ずかしいと思う。
日本に住んでいる全ての人に、オススメ致します。