是枝裕和監督 東宝 GAGA 吉祥寺オデヲン
やっと観る事が出来ました。
最近は予告編も観ないようにして、期待値は出来るだけ上げないようにしています。基本情報は、監督、演者、終わりです。でも、劇場に行くと予告編が付いてきますので、どうしても観ちゃいますね。
でも、是枝監督作品ですから、当然、観に行こうと思ってました。
シングルマザーで小5のミナトの母(安藤サクラ)はミナトに振り回される毎日が、輝いて見える充実した日々を送っているのですが、近隣のビル火災があり・・・というのが冒頭です。
なんだこれは!という岡本太郎丸パクリの驚きです。もう、すぐにもう1回観に行きたい。しかし、当方にはその金銭的時間的余裕がありません。そして、出来るだけ1回の視聴で全集中力をかけて画面で起こるすべてを漏らさないように観ているつもりでも、どうしても掬い切れない情報たくさんありますね・・・
まず、何も知らないで今から劇場に観に行ける人が、うらやましい!まだ未見の人は是非のオススメです。
で終わりでいいと思うんです。
アテンション・プリーズ!
ここからはネタバレありの感想です。未見の方はご注意下さいませ。
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ココからネタバレありの完全な個人的感想(≒妄想)です。建設的な時間を重要視される方はご遠慮くださいませ。あくまで極私的な閉鎖された感想です。
ただ、いつも思うのですが、こういうオープンエンドの良作って誤解を含めて、どんな感想もその人の大切な正解だと思います。当然、鑑賞後に、解析度の高い人、映画考察力の高い人と話したり、感想レヴューを読んでなるほど、と感想が変化する事もあります。それでも、その変化含めて、その人が受け取る何かだと思います。
だから、凄く野暮な事なんですけれど、野暮というフィルターであり、遠回りをしないとたどり着けないモノも存在すると思うのです。それに私は書いてみないと感想がまとまらないタイプですし、最近、膝を打つお言葉もいただいたのですが、私は同じところで1人でぐるぐると思考が回っているのが好きみたいです。別に他者が居なくても大丈夫な気さえします。
なので野暮なんだけれど、私なりの今の感想です。
恐らく、映画が好きな人ならどうしても黒澤明監督の「羅生門」を思い出さずにはいられません。本当は何がどうだったのか?藪の中を想像するしかない。そして、三者三様の捉え方が出来ます。
最初は、どう考えても、不憫にしか思えないシングルマザーであるミナトのお母さんの目線で進むのですけれど、不穏感が徐々にエスカレートしていくの、本当に上手いです。物凄く嫌な感じしかしません。そして自分だったら、と思うと、非常に恐ろしくなりますし、どう考えてもおかしい!という義憤を溜め込んでしまいそうです。この映画内ではSNSに対しての言及はありませんでしたけれど、もし、このお母さんがSNSの扱いが杜撰だったら、と思うとより恐ろしいです。
これは、どう考えても、このホリ先生はダメだ、教師失格!という義憤を溜め込んだところで、いきなり、冒頭に戻ると、今度はホリ先生の視点で再度物語は進んでいきます。
このパートを見ると、あんた、杜撰!無神経!でも、このホリ先生を簡単に批判出来ない!あれ、さっきの義憤、憤りはなんだったの?ってなります。う、是枝監督、上手い!となって、え?となった瞬間、今度はミナトくん視点でまた振出しに戻るのです・・・
このパートが最も苦しい・・・しかも簡単に文章で感想を述べるのに凄くヨクナイ事なのでは無いか?とも思ってしまいます。
なので、物語の脚本上の結末は、私はある種のハッピーエンドだと思いたい。それは私がネガティブな人間だから、なのかも知れないけれど。
で、この映画は役者が本当にハイクオリティ過ぎました・・・中でも、このハイクラスの中でも恐ろしいのは、ホシカワくんを演じた柊木陽太くんです。断トツの、驚愕の演技力と自然さ、さらに純粋さの中に少しだけ憂いを感じさせるそのセンス、ちょっとどういう事?と思いました。
パンフレットによると、子役として既にいろいろ経験しているのだそうです。とにかく名前を憶えておきましょう。是枝監督作品には、毎回と言って良いほど、上手い、しかもそれだけじゃない、という子役が出てきますけれど、万引き家族の城桧吏さんも、何処で見つけてきたの?というくらいの素晴らしい原石でしたけれど、柊木さんはまたちょっと凄い役者、もう子役ではなく、役者さんですよ。
3パート目、もうすべてこの柊木くんが持って行きました。この子の輝きが凄すぎる。
で、1コ残った謎は、やはり、柊木くんが2パート目に言う「ホリ先生はミナトくんをいじめてる」が何故出てきたか?です。それ以外はだいたい妄想的な補完が効きますけれど、この部分が分からなかったです。
安藤サクラさん、安定の安心感しかないです。でも共依存は気をつけたい。永山瑛太さん、確かにこういう人いる!という感覚があります、不憫。でもしょうがないし、最後に気付いているの、ココがこの人素晴らしいと言える。ただ、すべてにおいてタイミングが悪い。でも悪いにはタイミングであって、ホリ先生なんじゃない。そして校長先生、恐らく元凶はこの人、なんだけれど、この人もそれなりの傷を負っていて、その為なのかも知れないし、職場(とは言え校長も結構赴任する学校が変わるんじゃ・・・)への愛からなのかも知れないし、ミナトに楽器を吹かせて、発散させるのも教育者としては結構イイのではないか?とも思わせるのです。あからさまに年収、という金額で人間を判断しようとするホシカワの父も、そういう価値観を植え付けられた、と言えなくもない。しかも母親が出て行っているわけです。いろいろに皆、何かしらに問題がある。
あと、個人的に皮膚感覚的にイヤなの、ホリ先生の彼女さんです、怖いし、魅力的なんだろうけれど、私には恐怖感しか感じなかった・・・サイコーに気分を害する人・・・を演じる高畑さん、恐ろしい、そういう人にしか見えなかったですけれど、普段の顔と違い過ぎて恐ろしい・・・これ桐島部活やめるってよの松岡茉優さんの時と同じくらいの凄さ・・・
それと、上手いイジワルだよなぁ、と思ったのが、ミナトの父親の最期の辺りをミナトがホシカワくんに説明するの、本当に上手いしイジワル。現実って、こういう事だと思います、素晴らしい親でも、欲求はあるし、人でなしにも、善き行いがある。
あと、やっぱり校長先生演じる田中さんが、恐ろしいまでの迫力がありますね・・・特に、お前が学校を救うんだよ、は迫力があり過ぎますよね・・・
当たり前なんですけれど、誰が悪いのか?なんて言えない事多いですよね・・・校長は、確かに元凶ですけれど、もしかすると、というか実際にマニュアルがあって、それに沿う事を強要されているのかも知れません。そこから逸脱する、という事は組織から逸脱するので、そういうパーソナリティって日本社会だと、村八分という恐ろしいネーミングという恐怖による強要部分も、有ると思います。
村八分、凄いネーミングだ・・・
ちょっと気になって英語にあるのか調べたら、village ostracismってなってて、あるんだ!という驚きです・・・
怪物は誰なのか?私は感情に乗っ取られて理性というコントロールを失った人物全てが怪物だと感じました。誰でも怪物となる恐れがある、という事なのかな。
音楽、凄く良かった。良かったけど、正直、音楽があるから、この長さなのかな、とも思いました。
もう1つ、3パート目のとある窓を2名の大人が拭くシーンの雨後の、まるでプラネタリウム、それも人が自然の天空を模して作ったプラネタリウムじゃなく、自然のプラネタリウム(もちろん矛盾しているのですが)みたいな美しさがあって、初めて観ましたし、見とれてしまいました。
インティマシーコーディネーターが居たのも良かった。
という訳で、やっと感想まとまったので、他の人の感想見て、結末をどう考えている人が居るのか、これからいろいろ読みに行きます~