キム・ギヨン監督 YouTube
あのポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」に大きな影響を与えた、という韓国映画が観たくて探していたのですが、日本語字幕付きでYouTubeにある事を友人から聞いたので、やっと観れました。でもこれ、合法なのか違法なのか?私には分からなかったです・・・
ある工場に勤める女性たちはコーラスを習っています。コーラスを教える先生に生徒がラブレター(今となっては死語でしょうね・・・)を渡すのですが・・・というのが冒頭です。
確かに、これは「パラサイト」の基になった作品と言えると思います。1960年の映画ですけれど、非常に面白い作りになっています。
中でも、心情と同じように画面奥の背景がぐにゃり、と曲がる感じがあって、まるで漫画表現のように効果的で、一体当時の技術でこれが可能なのか?それとも、ただ単にフィルムの劣化で起こった事なのか?分かりませんが、物凄い効果を生んでいます。私が思い出したのは、漫画で言うと小山ゆう先生の「がんばれ元気」のショック表現の ぐにゃり です。
現在(2023年)の感覚ですと、大変大仰な、過大な、音楽表現による盛り上がりは、ちょっとやり過ぎと感じます。感じますけれど、これ、確かに当時の感覚で言えば、これくらいの表現で良い事なんでしょう。
つまり、家父長制の強い、儒教の強い影響下に置かれている、価値観の定まった、無論当時の道徳的に、世間的に正しいとされる世界や家庭を生きているとすると、恐ろしいまでの負荷が女性にはあったと思います。
階段という道具、というか生活環境の中にある普通の何気ない段差が、取りも直さす、そのまま階級差を表していて、しかもかなりの断絶があります。
カメラワークもなかなか凝っていますし、今観ても十分面白い作品です。
また、本当に当時を生きている人、大変だったんでしょうね・・・選択肢が無いというのは大変に辛い。しかし、今は逆に選択肢が多すぎて、難しい。でも、どう考えても、選択肢が無い世界の方が全然辛いと思います。選択肢が多すぎても確かに難しいけれど、ある種の選び取ったという責任感が生まれます。それが無いよりはまだいい。
とにかく、1番は下女役のイ・ウンシムさんです。顔は整っていますし、クールな感じさえ漂わせる、かなりしたたかなんですけれど、それでも当時の価値観からは逃れるのが難しいというか当たり前なんですよね。
今だといろいろもっとスリムに出来ると思いますし、同じ題材を、増村保造監督がたくさん撮っていますけれど、私は増村監督作品の、個人の生き方を尊重したくなります。
それと、何度も確認する事になるんだけれど、本当に、男と女って全然考え方、感じ方、その対処について、本当にそもそもが違い過ぎる・・・基本的に、男女とかではなく、人間としてって考え方が当然だと思うんだけれど、あまりに違い過ぎて、なんかコミュニケ―ションを取るための作法や手間がかかり過ぎる。確かに、その為の対価のほぼすべてを今まで女性側が払ってきたからこそ、なのだが、理解はしているし、怒って当然だし、コストがかかるのが当たり前なのだ、という事を十分理解してもなお、当然履いていた下駄がいかに楽であったから、その時の感覚でスピード感あるコミュニケーションを取りたい、という欲求は無くならないし、経験した事を無かった事に出来ない。特に初めて話したり会ったりする場合は本当に大変だと思うから、若い人々が、男性はぼっちだったり、女性は女子会とかをする気持ち分からないでもない。だって大変な手間をかけるよりも同性で、同じ趣味や価値観を等しくしている人と話す方が楽しいし、楽しいまでのコスパがイイ。正直言うと、40過ぎた男性や女性が恋愛感情を持つ、とかちょっとキモチワルイし、まただからと言って、性欲だけが目的なのも、動物として仕方ない部分があるんだろうけれど人間としてダメだし惨め。なので、少子化は進むし退化が始まるんじゃないかと思ったりする。テクノロジーが発達すれば栗本薫著『レダ』みたいな生殖もあり得るだろうけれど。
映画「パラサイト 半地下の家族」を観て好きな映画になった人に、オススメ致します。
ラストのある展開、いらない、と言えばいらないんですけれど、画面の外を描く感覚があって、なかなか面白いとも言えますね。