デヴィッド・モリス ジャッキー・モリス監督 ユニバーサル U-NEXT
ヌレエフの一生涯を追いかけるドキュメンタリーの部分、フッテージされた映像を使う部分と、そのヌレエフにとっての重要な場面を切り取った創作バレエで成り立っている映画です。
ルドルフ・ヌレエフというダンサーであり、振付家でもある人物の、わずか54歳の生涯で、精力的に踊り、若いダンサーを発掘し、振付をしたのですが、この影響があった世代もついに舞台からは去りつつありますね。
1961年にパリで亡命をした際の出来事を映画化している作品もありますが、ダンサーとしても凄いですが、与えた影響の大きさ、その波の余波が本当に絶大。
特に個人的には、パリ・オペラ座での芸術監督になった事で、マニュエル・ルグリやシルヴィー・ギエムを物凄く若い段階で引き上げて経験を積ませるというのが凄いと思います。先見性の高さはちょっと異常です・・・
そんなヌレエフのある種のパートナーでもあったエリック・ブルーンについて、全然知らなかったので、これは凄く良かったです。
チョン・ジュリ監督 RIGHTSCUBE 吉祥寺アップリンク
台風が近づいた為に、仕事のキャンセルがあって、しかもレイトショーはやってた!ので間に合いました。映画好きな友人から、「観た方が良いですし、多分好きな作品ですよ~」との事で、翌日鑑賞出来ました。
全く何も知らないで、監督も調べない、出てる人も知らない状態で観ましたが、かなりヘヴィーな作品。
社会構造を描いた作品なんですけれど、それ以外の、ダンス、の意味がちょっと理解出来なかったです。多分非常に重要な示唆なんだという事は分かるんですけれど、それが何を指しているのか?推察が至らなかったです、未だに謎。なので自分の考えをまとめた後、いろいろなヒトの感想や批評を読みに行きたいです。
鏡の前でイヤホンで音楽を聴いているために、無音の中で無心にダンスするソヒ(キム・シウン)は高校生です。しかし、研修という名で、所属高校の担任から派遣される会社へ働きに出る事になり・・・というのが冒頭です。
ネタバレは無しの感想ですけれど、公式HPにも書かれていますが、実際にあった事件を基にしたフィクションです。ですが、非常にヘヴィーな案件を扱っていますし、恐らく韓国の状況は普通にうちの国でも似たような状況にあると思われます・・・
それと、時々電話で聞く事がある、
対応品質、サービス向上の為にこの会話は録音されております
という一文が何故必要なのか?凄く身につまされる言葉として響きます・・・
お客とサービス提供者の2者関係が閉鎖された空間であれば、何が起こるのか?それも過酷な競争の中で、何が起こるのか?を描いてもいます・・・とは言え、その客も、かなりの時間待機させられ繋がりにくい環境に置かれている、しかも会社の都合で、となると、弱者にしわ寄せが来るのが当然です・・・
社会構造の話しなので、この結果、改善されたようですけれど、よりアンダーグラウンドな世界があって、そこでは変わらず、ヒドイ事が起こっていないか?少し不安になりました。
演者の主役2名の女性は非常に良かったですし、1名は有名な方が出演されているのですが、観てビックリしました・・・あの映画の時と同じなのでは?という既視感があったからです。
野生の動物の食物連鎖、大変厳しいですし、それと比べたら、人間社会はとても、とても理性的で、社会制度として、恐らく2~3000年くらいの歴史により、洗練された構造を持ち、人権の概念があるフランス革命が起こったからこそ、よりよくなっているにもかかわらず、やっぱり今でも、大変厳しいと言わざるを得ないですね・・・
すべての人が幸福になれる、というのは幻想なのかも知れないです・・・
ですが、より良くするための努力、より進化する為の、さらに救われる為の協力はしたい。
あの光の演出、良かったです。
なんだか結構な確率で、邦画タイトルに文句をつけている感じで申し訳ないのだけれど、いくら何でも、あしたの少女 は伝わりにくい・・・多分監督の前作(私は未見)のタイトルにひっかけているんだろうけれど、「次のソヒ」で良かったんじゃないかな・・・
社会性に興味のある方に、オススメ致します。
森達也監督 太秦 吉祥寺アップリンク
公開7日目の朝一で観てきましたが、物凄く混んでいいましたが、もっと混んでいたのが、山田洋二監督作品『こんにちは、母さん』で、高齢女性が大挙して押しかけていて、誰が観るのだろう?と思っていた作品でしたが、ちゃんと受容はあるんだな、と確認出来たのは良かった。びっくりしたけど。
ネタバレ無しの感想です。出来れば多くの人が観た方が良いのですが、でも観た方が良い人には届かず、何となく、観て溜飲を下げたい層に響くであろう作品になってしまったのではないか?と思ったのが観終わった後の最初の印象です・・・
小池都知事(私は東京都民なので責任がある・・・)や松野官房長官(選挙区は千葉3区)のような人物が現在に存在するうちの国で、非常に重要な事件を扱った、劇映画であり、実際の事件を基にした映画です。
過去の過ちから学ぼうという姿勢が無い、という事が恐ろしいですし、私含むうちの国の集団心理や同調圧力を考えると、本当に恐ろしいのですが、自国民を殺害しているという事実は変わらないわけで、本当に恐ろしです。
もっと言うと、過去から学ぶよりも、自国の良い部分、心地よいものしか見たくない、という姿勢を保守とは呼ばないと思いますし、なんなら無かった事にしてしまう、というのが恐ろしい。心地よい方を選んだ、とも言えるし、ゲッペルスのいう『しつこく同じように繰り返せば、嘘でも信じる』というプロパガンダが今でも十分通用する、という事を現在の国家レベルで行っているのが恐ろしい。しかも報道があっても問題視すらされていないし、既に手遅れな感覚がある。
立場的に、アメリカにおける黒人差別の歴史と同じ構造もあると思います。差別していないという事にしていても、内心恐れているからこそ、そして迫害している自覚があるからこそ、恐れているわけで、それが大きな災害時に、冷静さや事実確認を疎かにしてしまいかねない状況の時に、今でも起こる事件だと思います。
そう言う意味で作られた意義はことのほか大きい。特に邦画では珍しいからこそ、意義は大きい。
大きいんだけど、そして、時系列が必要だし、それなりの時間がかかるのも十分理解出来るんだけど、劇映画としてのテンポの悪さ、136分は、流石に長すぎるし、テンポの悪さが余計に目立ってしまっているのが本当に残念。
役者は総じて良いキャスティングで、中でも東出昌大、田中麗奈、永山瑛太の3名は非常に良い演技で(演出に問題があるとしても)満足です。中でもキャラクターと演者の違和感が最もなかったのが、初めて観る杉田雷麟さんです。凄く存在感含めて、キャラクターに合っている。今後この人が出演する作品なら見てみたいと思わせるに十分な魅力を感じました。
過去の、というか今でもネットが遮断されるような、混乱時に起きかねない惨事について学びたい方にオススメします。
もっと劇映画として、完成度が高かったら、観た方が良い友人の分までお金を払ってでも連れて行きたい作品になってたらなぁ・・・
アテンションプリーズ!
ココからネタバレありの感想です。
未見の方はご注意くださいませ。
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ネタバレありの感想だと、まず、主人公の帰国夫婦の話し、カットできたんじゃないかなぁ・・・新聞記者の話しも、基本カット出来ると思う・・・そして出来ればモノクロでもよかったんじゃなかろうか・・・
それで100分くらいにまとまってたら・・・と妄想します。
村の緊急事態を告げる鐘を鳴らす、というシーンで、私は増村保造監督作品「清作の妻」を思い出さずにはいられなかった・・・そう言う意味で、増村保造監督はやはり偉大。天才的な監督だと改めて実感してしまった。本作で描かれている問題を、既に照射している作品と言える。
恐らく「朝鮮人なら殺してもいいのか?」という永山瑛太のセリフが本作を表しています。緊急時なら、とかいろいろ条件を付ければ、私も当然含んで、起こしかねない状況を描いています。
それを無かった事にしない為に、本作が作られた意義は大きいのですが、様々な事象を入れる為に長尺になり、かつ演出が鈍重になってしまったのが、個人的には悔やまれます・・・
柄本さんの件も、確かに閉鎖的な大正時代の村社会を理解させるために入れるべきだったのは理解するけれど、個人的には切って良い部分なのではないか?と思います(そう言う意味でも「清作の妻」は凄い!)。
もっと映画として興味深く出来るんじゃないか?と、増村保造監督作品、そしてスパイク・リー作品を観ていると感じてしまった、というのが実情です。
軍人でもないのに軍服を着ている、自尊心を満たすために国家とか軍隊とかより大きな存在に依存している人間がどれほど危険か?を表しているのだけれど、そういう人は見に行かないだろうと思われるので、主義は正しくとも、手法をもっと考慮しても良かった気はするけれど、製作者側の想いもあるだろうし、これはこれで仕方ないのかも。
結局のところ、映画化しているフィクションなので、仕方ないのかも知れませんけれど、今作の殺害シーンももっとリアルでも良かったのではないか?とも思うし、何と言っても、その後の加害者がどう罰せられたのか?恩赦があった事実含めて、そこまでは描いて欲しかった。
本当の所、女性が最初に手を出したのであろうか?
それと、帰国夫婦の夫、村長、そして村民たちの止められなかった、という罪は、個人的にはキツイけれど重いと感じます。傍観し、時流に流されやすいうちの国だからこそ、こういう場合の対処法が知りたい。恐らく、これ以上体制派や主流派に抵抗すると、村八分や実被害を受ける事が分かっているからこそ、みんな傍観する事を覚えたと思うし、そこには空気の支配が発生する個人の無い世界、世間があると思うので・・・
だらだらとした感想になってしまったけれど、それでも、作られた事に意義がある作品。 しかし東出くんは、なんだかアダム・ドライバーみたいな立ち位置になっていきそうで、それはそれで凄い。
A・T・ホワイト監督 KOOKSFILM U-NEXT
映画好きな友人からオススメして頂いたので。
誰かのお葬式に参加している主人公オープリー(バージニア・ガードナー)はいたたまれなくなり、早々に葬儀を後にするのですが・・・というのが冒頭です。
まず、映像美が素晴らしいです。女優さんもかなり頑張っていますし、なかなか見応えある作品です。ただ、最初は何の話しをしているのか?ちょっと判断に苦しみました。ですが、映像は素晴らしく美しいし、新鮮な驚きがあります。
恐らく、それほど潤沢な予算があるわけではないのに、凄く映像がフレッシュで、良い意味で驚かされます。
で、私もあまりストーリィはよく理解出来なかったですし、冒頭にハリウッドではよくある、
実話に基づく物語 BASED ON A TRUE STORY
という表記にも、余計に分からなかったのですが、公式サイトの監督インタビューで、かなり理解出来ました。
かなり納得出来ましたし、補完として必要なインタビューです。
これは、実際にある人に起こった出来事なんだと、理解出来ました。
ある意味 喪失+名曲Mr Summertime の話しなんです、凄く個人的な話し。
かなり好きな映画になりました。こういうオシマイの話しって大好物です。
それと、主人公が着る事になる、あのモフモフオオカミコートが欲しい!!!!!!
映像美に興味がある方に、喪失に興味がある方に、オススメ致します。
アテンション・プリーズ!
ここからネタバレありの感想になります。未見の方はご遠慮くださいませ。
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やはりこれは監督本人の体験談だと思います。
親しい友人(ミックステープを交換し合うほどに!)がかなり若い段階で亡くなられてしまった後、なんとか生活を維持するために藻掻いた、その心象風景の映画であり、その友人の病気で苦し時に、自分は、自らの浮気が原因で離婚騒動の真っ最中で、友人を助けに行けなかった罪を背負っている監督本人の話しだと理解すると、凄く飲み込みやすいと感じました。
その他のコードとか曲とか怪物とかは本当にどうでも良い、ある程度、どうでも良い出来事で、トピックなんだと思います。ただ、曲はなかなか素晴らしかったです。トランシーバーとかの小物も面白いですし。
それと、トランシーバーでの会話とか、急に場面転換とかは、恐らく精神状態が普通じゃない人、うつ傾向、の人にはよくある事で、私もネガティブ思考の酔いに塗埋もれていると、自分と世界との間に被膜のようなベールがあり(分厚くしようと思えばかなり分厚く出来ます)、他者からの信号とか会話とかニュアンスが全く通じなくなる事が経験としてありますし、殻に閉じこもりたくなる場合は、出来ます。
その暗喩なんだと思いました。
そう言う意味で、希望でもあり、破滅でもあり、殻を破る話し。説明しないところも大好きです。 なかなかの映像美だと思います。