井の頭歯科

「いつかの君にもわかること」を観ました

2023年11月14日 (火) 09:17

 

ウベルト・パゾリーニ監督     キノフィルムズ     U-NEXT
2023年見逃し後追い作品 その2
2023年公開映画の32本目/今年81本目  36/100 を目指しています。
映画好きの友人からのオススメなんで観ました。
そろそろ今年のベスト10とかいろいろ出てくる事になるでしょう。まぁいろいろ見ていた方が年末に映画好きの方とお会いする時も楽しめますから、だからこそ、11月の段階で暫定ベスト10を教えてもらいました。その中で今すぐ見れる作品だったのが、本作。その映画好きの方は今年はどのくらい見ているのかワカラナイですけれど、きっと300本くらい年間に観る人なんで私は1/10くらいですから、比較にならないのですが。
事前情報は全くなし。何の映画なのかも知らないで観ましたが、これが最も映画を楽しめると思います、ジャケすら観てないです。
いろいろな街の風景が映る中(窓の外から見る窓の中の世界は、優しく清潔で温かみを感じます)、窓の外側で清掃をする男(ジェームズ・ノートン)は仕事を終えて家に帰ると男の子が迎えてくれて・・・というのが冒頭です。
これは、とてもヘヴィーな案件を扱った作品で、気軽な気持ちで観るのは避けた方が良いと思います。しかし、映画が好きな方、死について考えた事がある方には、強くオススメしますし、家族がいる人にも、オススメしたい。
ウベルト・パゾリーニ監督、初めて観る監督ですが、非常に面白かった、考えさせられました。
主演のジェームズ・ノートンさんも初見ですけれど、素晴らしい演技、というか、本当にそういう人に見えます。
原題は「Nowwhere Special」邦題は悪くはないと思います。
ネタバレなしで言える事は大変少ないのですが、誰しも必ず起こる事についての映画。しかもそれを託さなければならない、という当たり前だけれど、なかなか考えない事に対しての映画です。
是非のオススメ。
なんですけれど、予告編の日本の作り方、凄く幼いし観客を信用していない、幼稚さを感じます・・・凄く残念。多分、本当の意味で、映画が好きな人、映画館に足を運ぶ人の絶対数が少ないのだと思います、だから、年に1本映画を観る人に向けた宣伝になっていて、本当に残念・・・
アテンション・プリーズ!
ここからはネタバレありの感想ですので、未見の方はご注意くださいませ。
まず、全然説明はないのですが、恐らくの末期ガン患者、自身も4歳までは実父に育てられていたらしいが、その後は施設と里親を転々としていたらしい、といういわゆる貧困の連鎖を感じさせます・・・だからこそ、里親探しに協力的な女性の存在、それも、ある種の規則を捻じ曲げて停職の恐れがありつつも協力的な女性が居た事が稀有な例だと思います。
ガン患者になる事は、恐らく、死を間近に感じる事で、しかし、それは今を生きている健康なヒトであっても、必ず死者になるので同じなんだと思います。
ここに幼子である4歳の、かつての自分とも思えるマイケルの存在が、重くのしかかります。その事後を託せる養子縁組の相手を探す、他者家族と出会う事になりるからです。しかし、映画内での言葉の説明は一切ないです、そういう観客を信頼している所が本当にいいです。
様々な家族と出会う事で、そして当たり前なんですけれど、どの家族もマイケルを託すだけの確証が得られない上に、刻々と自分の寿命、体の変調を感じつつ、それでも日常としてかけがえのない時間、ただマイケルとの時間を共有する幸せも感じています。
子供を育てる、この正解のない、それでいて何物にも代えがたく自分が必要とされる行為は、個人の成長と、そして過去に自分が受け取ってきた愛情やイベントを、思い出し噛みしめる行為だと思います。私には縁がない上にとてもじゃないけれど自己中心的で出来ない事ですけれど、その重責は理解出来るつもりです。
最後に託す相手は、映画の通りで私は正解だった、と思っています。
この世の中に特別な場所は存在しないし、理不尽が当たり前の世界だけれど、自分にとっての特別な場所は、自分で作るしかなく、しかもその大きな部分は人と人との縁に依存している気がします。
この世を去るときに後悔しないように、今が最後の瞬間かも知れない、という覚悟を持って生きていても理不尽はキツイのですが、それでも。
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