ヨルゴス・ランティモス監督 サーチライトピクチャーズ 吉祥寺オデヲン
原題は「Poor Things」で原作もあってアラスター・グレイというスコットランドの作家の1992年発表の小説です。これは原作を読んでみないと何とも言えないし、監督が何をもって映画化映像化したくなったのか?は原作を読んでみて考えてみたいです。
架空の、もしくはパラレルワールドのようなロンドン。河に架かる橋の上に居る青い服の女性が身投げして・・・というのが冒頭です。
まず、2024年に観たい作品の2本のうちの1本で、それはヨルゴス・ランティモス監督だから、です。何と言っても2009年の「籠の中の乙女」の衝撃、そしてその後知る事になったキャストの悲劇を聞いて、本当に頭がオカシイ(←褒めています)監督だと思っていたのですが、その後2015年の「ロブスター」もかなり変わったSFでしたしなによりもコリン・ファレルの困り顔がこんなに!という作品(その後コリン・ファレルの困り顔映画としてはさらに上を行く「イニシェリン島の精霊」という作品もありますし)で、2017年の「聖なる鹿殺し」では怪演バリー・キョウガンを見出したヘンテコリンな映画で、ここまでは監督自身が脚本を書いていたのです。
それが2018年の「女王陛下のお気に入り」から監督に専念するようになりまして、ちょっと毒が抜けた、エッジが割合少なくなった印象があり、その代りに、知名度が格段に良くなって一般の人気も高まった気がします。なので、監督としては、次作はかなり好き放題出来るタイミングだと思うのです。
製作者やプロデューサーの意見を聞いて作った作品よりも、監督の好きに作った作品の方が面白いと思える事が多いですし、ある程度の大作、製作資金が莫大な作品ほど、難しくなるわけですが、1度ヒット作を出した後ならば、監督の好きに作れる機会が得られたと思ったからです。
で、今作は原作がありますし、しかもはっきりと、女性という事柄を扱った作品で、ヨルゴス・ランティモス監督なら、もっとエッジの効いたことをしそうな感じでしたが、どちらかと言えば、とてもライトな人にも楽しめる作品に仕上がったと思います。
個人的にはちょっと残念でしたけれど、観ている間は大変新鮮で、ちょっと世界観の作り込みではジャン=ピエール・ジュネ監督を思い出しましたし、テーマで言えばグレタ・ガーウィグ監督の「バービー」ですが、もっとセクシャルで哲学的でもあると思います。
結局のところ、本当にもっと困った事態にもなり得たし、好奇心というエンジンにはブレーキが存在しないし、取り返しのつかないダメージは負わないご都合主義とも言える部分もある。
けれど、ここまでの世界観の作り込み、美術、スタイル、衣装、は素晴らしかったです。
個人的には音楽は、もう少し面白くポップでも良かった気がします。ちょっと薄いと感じたし物足りなさも感じました。
そして結局のところ、エマ・ストーンの、エマ・ストーンのよる、エマ・ストーンの為の、ベラ・バクスターな作品。
あ、ウィレム・デフォーとマーク・ラファロは、凄く良かったです。
それとハリーは大変重要なキャラクターで、私はハリーとゴドウィン・バクスターの中間に居たい。
エマ・ストーンが好きな方に、オススメ致します。
だって、もし、エマ・ストーンじゃなかったら?成立しにくい説得力。女性の話し、とも言えるけれど、そこまで大きな話ではない気がする。
アテンション・プリーズ!
ここからはネタバレありの感想になります。
未見の方はご注意ください。
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