井の頭歯科

「BEAU IS AFRAID」を観ました

2024年3月5日 (火) 09:07

 

アリ・アスター監督   A24    吉祥寺アップリンク
2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は2/17,18 日を開けて2回観ました。
2024年に観たかった作品の2本のうちの1本です。あの、アリ・アスター監督の映画ですから、まぁいろいろあろうとは思いますけれど、期待値は嫌が応にも高まります。
メンタルクリニックで診察を受けているボー(ホアキン・フェニックス)は診察されて、質問を受けているのですが、上手く答えられずに、緊迫感を募らせていて・・・というのが冒頭です。
もう、本当におかしかったです。笑える、と言う意味でも頭がおかしくなるくらいに笑えますし、それ以上に、何てことを考えているのだ、という意味で頭がオカシイ人が、監督です。そういう事すべてが、興味深い。なんでこんな映画監督が出来上がったのか?について、非常に興味があります。
これまでの映画「ヘレディタリー/継承」も「ミッドサマー」も結局のところ、家族という呪縛の話しでしたが、今作も同じです、と言い切っても良いかと思います。
ネタバレは出来る限りしない感想ですけれど、ちょっと長かったかな、とは思いましたが、凄く不思議な作品。そして2回目の視聴だと、短く感じましたし、細かな点がいくつか確認出来ました。
最初のパート、何が起こるか?は言えませんけれど、とにかく、笑ってしまいました。劇場でここまで笑いをこらえるのは、本当に久しぶりの事です。
そして、関連する映画をいろいろ考えてしまいます。
ホアキン・フェニックスの演技は、いつも通りで凄く雰囲気があり、上手いです。顔芸もやってくれますし、全身で演技されていますし、感謝しかない、とアリ・アスター監督も思っていることでしょう。
それ以外の方は多分初めて観る方々ばかりでしたけれど、見応え、演技、十分過ぎるくらいありました。特に外科医の人は、そういう職業の人に、ちゃんと見えます。そういう些細な部分もかなり作り込んでいます。あの笑みが恐ろしくもありますし、そういうのって本当に凄い事です。
さらに美術も、相当なこだわりを感じます。それこそ、悪夢的と言える場面を、キッチュなのにキャッチ―で、ポップなのに毒々しさがあり、リアルでは無いのに皮膚感覚まで醸し出しています。相反する2つの感覚がちゃんと感じられるようにしているの、本当に凄いです。
それと同時に、ある部分に、あの「オオカミの家」の監督コンビが関わっています。これも凄くイイです。
さらに、音楽も良かったと思います。劇中に出てくるとあるCD、私も好きですけれど、まぁね。
ただ、莫大な予算がかかった作品、ある意味、前2作の成功があって、好き放題にやった結果、これはちょっと受け入れにくいだろうな、受け手である観客も、結構困っている感覚を、公開2日目の最終回でしたが、感じました。

お客さんは、それなりに入っていましたし、若い人、それも女性の数人グループが多かった印象があります。それもミッドサマー的なモノを求めていらっしゃってた人たちの頭の上に大きな?が浮かんでいたのを、鑑賞後の出口付近の人だかりで感じましたし、まぁそうなるよな、とも思いました。そして、10日目くらいのレイトショーでも、困惑顔の人、頭に?を乗せている人も散見されましたけれど、それ以上に、複数回来ていて、笑いをこらえている、もしくは困惑顔の頭に?を乗せた人の観察にいそしむ人もいらっしゃいました。

基本的には、やはり、家族という鎖について、遺伝子という牢獄に関心のある人に、オススメ致します。
アテンション・プリーズ!!!
ここからはネタバレありの感想なので、未見の方はご注意下さい。
ネタバレありの感想ですけれど、とにかく最初のパートの掴みが最高です。
常に何かしらの不安を常に感じている(そりゃ当たり前だろう!という事については後述)ボーの目から見える世界の恐ろしさ、そのなんというか世紀末感、分かる!という他ないです。もう見るモノ全てに何らかの悪意を汲み取ってしまう、日常的な不安感からくる認知のゆがみ、それが全てにおいて恐ろしさに繋がる感覚がもたらすカオスな世界、それだけで恐ろしいのに、そこからさらに、accel.が効いて、加速度的に物事がより恐ろしい方向へ向かう様は、大変気の毒なんだけれど、どうしても笑えて来ます。
なんでここに住んでるだ?となるまるで北斗の拳の世界のような世紀末世界。その上にツイストを効かせて、さらなる思った方向の斜め上の事態に繋がる世界が、最高に笑えました。
これ、困り顔の大家であるコリン・ファレルが演じてても、最高だと思いますが、流石のホアキン・フェニックスの演技です。流れるような絶望感、もう本当に最高。
常に自室に侵入しようとしてくる怪しげな前進タトゥーの男との、ドアの閉め合い合戦が常に繰り広げられていると思わせる描写からの、ジプノティクリル服用したかと思ったら水が無い!水道出ない、ネットで調べる、死亡記事、鍵が無いからドアを施錠出来ないけど、水が無い、という最悪の展開、ここまでくると笑えて仕方なかったです。ドリフのコントかと思ってしまいます。
それに、あの部屋の毒クモ!の存在!!これは勝手な妄想ですけれど、恐らく、ボーにとっては毒クモも恐ろしいけれど、勝手に人が侵入する可能性の恐ろしさより、毒クモと暮らす方がまだマシ、という考え方があった為と思われますけれど、その考え方が既に末期的症状で笑ってしまいます。
それに、すべてを諦めた後、とりあえず風呂に入るボーに滴る水滴、からのなんで天井に人が張り付いてる?からの、落下、もう思い出すだけで笑いがこみ上げてきます。よくこんな事考え付くな、という流石アリ・アスター。どこまでも容赦が無い。

この部分の編集、テンポも凄く上手いと思いました。

さらに、2パート目、もう何が何だか?展開ですけれど、この病人パートもかなり楽しめました。完全におちょくりに入ってますよね?
葬式に行きたいけれど、身動き取れないし、明らかに大丈夫じゃないPTSD症状の元軍人で息子の直接の殺害者の可能性もある、夫婦に言わせると英雄も恐ろしいけれど、それ以上に娘の目の数光年彼方まで行っちゃってる目つき・・・正直PTSD軍人も恐ろしいけれど、私もそうですけれど、初老の男性からすると、全然行動が読めない上に動機も不明で言いがかりを付けられたら社会的に抹殺されかねない若い女性の方が恐ろしい、という感覚あります。
そんなカオスの家で、安心できるわけないし、結局のところ、その娘がトリガーになって出ていくのも、分かってはいたけど、恐ろしい。
とは言え、ここで伏線が既に引かれていて、それも、ああやっぱり、な伏線で、ここでだいたいのオチの方向性は理解出来ました。でも、ここ、ちょっと「ファニーゲーム」を思い出した人いると思う~

んで、多分1番難解なのが3パート目なんだと思うけれど、ココは普通に、この映画に最も近いの間違いなくジョエル&イーサン・コーエン監督の「シリアスマン」なんで、普通にヨブ記なんだと思います。それに、このヨブ記を普通にコメディにするのも、笑えました、そうだ、俺、なんもしてないから息子いるわけねぇ、で目が覚めるの、すげぇボケ方だと思いました。でも、それも、「どうしたらいいか?ワカラナイから教えて~」というボーなら言いそうw

で、いよいよ4パート目。ここですべての謎が解けるのですが、ボーのこれまでの母親の支配を考えると、そりゃ、運命の女性、というか、ぐいぐいくるあの娘にやられますよね~得てして男性にとっての究極の女性像は、絶対に叶わないからこそ忘れられない、という奴じゃないでしょうか?そもそも母親の支配が強すぎる上に、何が正解かワカラナイ、というか何処にも正解が無いんですよね、そりゃ「どうしたらいいか?ワカラナイから教えて~」になるのも無理はないですよ・・・
母親の支配の強さは尋常じゃないレベルで、
・父親は受胎時に死んだ
・なんならその祖父も
・遺伝的な病気だ
となれば、自分も行為をすれば死ぬ→出来れば究極のあの子がいい のまま数十年の状態で睾丸は恐ろしく腫れているwが何を意味するかは受け手次第ですけどね・・・
・母親は基本何をしても満足しない
・の上に監視はパーフェクト
・従業員の生死すら金次第
という人物から、よくあのアパートまで逃れられたな、というのがボーにとってはかなり頑張ったんじゃないでしょうか?
その後の首絞めは、私は完全にとある映画を思い出しました・・・もうこう無間地獄から逃れるには殺すしかない、というギリギリまで行ってしまったと思います。
そこからの、マジでまんまピーター・ウィーアー監督「トゥルーマン・ショー」ばりのラストです。
ここも酷くて笑えますけれど、被告人であり、検察側の母親の責めに対して、弁護人は豆粒くらいの大きさで喋る声も小さく、しまいにはいなくなってて、もうダメだこれは、都しか感じなかったです。
これだけの母親の呪縛から、仮に、逃れられたとしても、自責の念、自分からは逃れられない、という結末は、まぁ、そうでしょうけれど、監督の家族環境が知りたい、ですよ。
そして、この後、考察をする動画をいろいろみてしまったのですが、この人の動画の説得力、そして正解を探しているのではなく、あくまで解釈、私の解釈、というスタンスが素晴らしかったです。
https://www.youtube.com/watch?v=SY1Abs-c-58&t=185s
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