井の頭歯科

「プレステージ」を観ました

2024年4月30日 (火) 08:53

クリストファー・ノーラン監督     タッチストーンピクチャー     U-NEXT
2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は8/38
「OPPENHIMER」があまりに素晴らしかったので、未見ノーラン監督作品はあと3つしかないのですが、そのうちの1つである、こっちを。小説家とか漫画家で、気になった作家はだいたい処女作を読んだりしてから、好きか嫌いか?を判断するようになってしまいましたし、だいたいに於いて、処女作にはその作家性が潜んでいると思うのですが、まだノーランの処女作は観てないので、いつもとは真逆の展開になりました・・・なんでだろ・・・
と言っても、そんなにノーラン監督の事を最高!とか思ってるわけじゃなく、段々と格式、それも映画のステージが上がってる監督だと思っています。インセプションとテネットはいまだに合理的な説明はなされていないと思ってますし、辻褄とかは比較的どうでも良くて、それよりも、俺の撮りたい絵(ただし、実写に限る)を連続して見せる為のモノ、と思っているふしさえ感じます。
19世紀末のロンドンでマジックショーが開かれており、マジシャンであるグレート・ダントン(ヒュー・ジャックマン)は瞬間移動を行おうとしているのですが、そこにライバルであるプロフェッサー(クリスチャン・ベイル)が・・・というのが冒頭です。
これは、エンタメ性と絵柄というかルック、見栄えが素晴らしく融和していると感じました。もしかするとエンタメで言えば今までで1番なんじゃないでしょうか?凄く娯楽作になっていますし、それなりに深い意味も感じます。
伏線回収という点だけみれば、かなり上手いですし、でも、ちょっと説明過多な気もしますけれど、年に1本だけ映画を観ている、くらいの人にも、凄く刺さる映画に仕上がっていて7,ウェルメイドな作品と、ノーラン監督作品の中では言える。
それに役者さんも豪華で、まさかのヒュー・ジャックマンのグレイテスト・ショーマンチックな役柄ですし、クリスチャン・ベイルも負けじと頑張っていますし、2人の主演の愛憎劇になていますので、エモーショナルな瞬間が多く、それぞれの役者さんのファン目線も上手く取り入れていると感じました。
そこにさらに、スカーレット・ヨハンソンが、なんか癖強いな、というキャラを演じてくれているのですが、まぁ主演の2人の余波を描くキャラクターなので、仕方ないかも。
結論に納得するか?は微妙ですけれど、まぁ上手いとは思いました、かなりはじめの方で分かりますけれど・・・
そして、猫映画でもあった。それだけで結構点数高くなってしまいます。黒猫カワイイ。
マジックはタネがあるショーです。超能力でも何でもなくて、あくまで手品。ただ、ショーアップする事があるのみです。その辺で行くと、キャラクターとしては、クリスチャン・ベイルのキャラクターの方が共感は出来る。
しかし、あのギミックをこの時代で、って考えると、まぁ出てくるよな、が出てきて、あの人が演じているとなると、納得感しかない。
ノーランっぽくないと言えば無いし、不思議な作品。
エンタメ性ある、ノーラン作品に興味のある方にオススメ致します。

「What Jennifer Did ジェニファーのしたこと」を観ました

2024年4月26日 (金) 09:40

ジェニー・ポップルウェル監督     Netfli
2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は8/37
カナダのドキュメンタリーです。
911への電話音声が流れ、女性が助けを求めているのですが・・・というのが冒頭です。
え~っと。ドキュメンタリーなんですけれど、もうタイトルからして、壮大なネタバレをしている、とも言えます。
私だったら、タイトルは「PLAN」かな。
カナダで高校卒業は17歳。大学進学すると4年間あるから大学卒業は21歳かな?
ジェニファーは21歳くらいと思われます。両親と実家暮らしです。
habit of lyingというよりはbrainwash yourselfという感じです・・・
そして思うのが、まだ係争中なんですけれど(正確には上告)、そしてもちろん犯罪であり、警察の捜査は正しいし、上告しようが、無理なんですけれど、実物の写真、音声、が使われているんですよね。
犯人には人権ってあるのだろうか?と思った次第です。
無論それだけの事をしていますし。非常に重い犯罪に手を染めています。ですが、この映画の扱いは正当なものなのか?は気になりました。
そういえば、うちの国の警察にも早く取り調べの全面可視化をお願いしたいものです。
こういう顛末を知るだけで、犯罪率下げられる気がします。
犯罪者の顛末を知りたい方にオススメ致します。

「二百三高地」を観ました

2024年4月23日 (火) 09:15

舛田利雄監督     東宝     U-NEXT
2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は7/36
最近の映画を観ると、どうしても古い作品も観たくなります。最新の映画は確かに凄いし、モダンを観続ける事が、今をみている事になり、その継続が、当然生きてくるのですが、懐古趣味では無いですけれど、昭和生まれとしての、昭和のなつかしさは感じられてしまいますし、だからこそ、当時としては画期的だってんだろう、とか感覚として時代感が理解出来る気がします。
とはいえ、昭和期もなごうございます。昭和初期は全く分かりませんし、第2次世界大戦は1945年に終結していますけれど、この昭和20年辺りも基準点になるでしょうけれど、子の頃も全然肌感覚が無いです、やはり生まれてからの昭和でないと肌感覚は無いですね。それに、昭和が良かったわけではない事は間違いない。凄く汚れていたし、いろいろな意味で今の方がソフティケートされていると思います。
中でも、1番好きな俳優である仲代達也さんが出演しているので。
明治37年満州(現 中国東北部)ハルピン 日本人スパイ(?)2名が捉えられていて・・・というのが冒頭です。
大変有名な日露戦争の陸軍の激戦地である旅順攻略の重要地点の名前が、二百三高地です。名前は知ってましたけれど、恥ずかしながら、司馬遼太郎の「坂の上の雲」を読んでないのですが、コテンラジオの日露戦争を聞いてはいますし、江川達也氏の「日露戦争物語」も一応連載時は読んでました、けど、あれって未完のままなんでしょうかね・・・
それと、戦史モノをどう判断すればよいのか?というのは凄く難しいと思います。なので判断は保留です。何故なら、そう主張したい人、それもイデオロギー的な事で、意図的に資料を基に判断すべきではないと思いますし、動かしがたい事実として、多量の死者が出ている、という事は間違いない、くらいでその他の判断は保留したいです。
それにこれは映画ですし。書籍でも何でも、すべての資料を読み込んだとて、その場に居なかったわけで、その場に居た人でも、記憶違いがあると思われます。都合よく解釈する人もいるでしょうし、私の肌感覚でも、昭和時代なら、乃木さんの司馬史観に対しては肯定的な事が多かったです。けれど、司馬さんが亡くなられた後の批判というのは、あまり好ましい事ではないような気がします。それでも時代が異なるとそういう事も出来ませんし、少なくとも、司馬さんにとっては書籍を書かれる以上、司馬さんの主張が反映されているのは普通の事だと思います。
舛田監督作品って観た事無かった、と自分では思ってましたが、調べてみると、あの「宇宙戦艦ヤマト」の映画の監督、子供の頃観てました・・・そうか、そういう監督なのか・・・実写とアニメーションは違うと思いますし、あまり色眼鏡で見ないようにとは思いますけど、まさかヤマトの監督だったとは・・・
役者さんの仲代達也さん目当てで観ているのですが、やはり主役は仲代さん演じる乃木希典だと思います。凄く、昭和の日本人が感情移入しやすいキャラクター。そして、その親友でもある児玉源太郎を演じるのが丹波哲郎・・・えっと、凄く岡本喜八監督「激動の昭和史 沖縄決戦」の時と真逆のキャスティングです・・・なるほど、これは意識せざる得ないキャスティングですね。
第3軍を率いる乃木の視点で描かれていますけれど、その中に予備役で徴集された、ロシア小説に傾倒する小学校教師をあおい輝彦、その部下の反社会的な人間を佐藤允が演じていて、この2人の、配下軍人の末端の将兵の置かれた現実も映し出されます。
あと、確かに、夏目雅子は美人ですね。私にとっては、三蔵法師の人なんですけれど。
乃木視点だと、非常に厳しい判断をせざる得ないわけで、で、どの段階から児玉源太郎が関わっていたのか?辺りが論争になるんでしょうし、乃木の能力の問題とかも、気になるんですけれど、そういう事は、映画の中の話しと現実は違うので、この映画の中だと、児玉源太郎が差配したわけです。けれど、それまでの、装備や弾数が無い話しとか、本当に苦しい立場に立たされていて、中間管理職の悲哀のようなモノを感じますけれど、とは言え、多大な死者が出ている事実、近代戦闘の要塞化した地への戦闘と言う意味で、当時にはあまり経験したことが無い戦いであり、人間の醜さが戦争で加速する感覚は理解出来ます。
それと、家への市民の鬱憤の晴らし方を観ていると、そしてその後の持ち上げ方を観ていると、凄く感情によって何もかも思うがままに振る舞う幼児を観ているようで、大変にキツイです・・・そしてそれは今も何も変わらない気がするのも、イヤな気持ちになりますね・・・うちの国の特性とも言えると思います。もちろん他の国でも起こる現象でしょうけれど。
あおい輝彦さんは結構良かったですし、佐藤允は、出てくると俄然、映画が動き出すので面白いですし、こういう俳優さん少ないと思います。
ロシア側との交流も実話の様ですし、トルストイは偉大な作家である事は同意したい。
莫大な予算が投入されてますけれど、回収できたのか、微妙な感じがしますし、ちょっと、いや、今だからなのかも知れませんけれど、さだまさしの曲がキツい・・・
それでも、仲代達也の演技の一端を知れる作品なので、仲代さんのファンの人にオススメ致します。

「OPPENHIMER」を観ました

2024年4月19日 (金) 09:30

クリストファー・ノーラン監督     ユニバーサル     池袋グランドシネマサンシャインIMAXレーザーGT
2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は6/34
やっと日本でも劇場公開されました。クリストファー・ノーラン監督作品ってだんだんと格式高いものになってきてますね。確かに、うちの国は原子力爆弾の被爆国ですけれど、これ、映画作品で、原子力爆弾の製作に関わった人物の1人であるオッペンハイマーの伝記映画ですよ??なんで普通に公開されなかったのか?個人的には不思議です。
えっと、最近の例ですけれど、NHKのBSでスタンリー・キューブリック監督の「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(一応原題だと Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb )」を放送してましたけれど、キューブリックは良くて、ノーランがダメな理由がワカラナイです。多分気分の問題でしょうけれど、もう本当にこういうのは嫌ですね・・・嫌いだし頭が悪いと思います。
映画の本質とは何も関係ない話しでした、すみません。
雨が降っていて、水面に波紋が広がっていきます・・・物理学を専攻しているオッペンハイマー(キリアン・マーフィー)は・・・というのが冒頭です。
いろいろ象徴的な立場の人ですし、原作があるのですが読んでないのでちょっとどのような改変があったのか?ワカラナイですし、時系列をかなりいじっていて、それは多分、過去のどの場面で、このような選択をしたから、今、この立場になっている、というのを示す為だと思われます。
だから凄く分かりやすくなっているとも言えますが、如何せん、話しがあちこちの過去に飛ぶ上に、登場人物がめっちゃ多いので、この辺の整理が頭の中で出来てないと、咀嚼に時間がかかると思います。もう少し勉強してから観れば良かった・・・せめてマンハッタン計画に関わる人の名前だけでも憶えて行けば良かった・・・
さらにもう1つは、裁判のような形式、正確に言うと、1つはオッペンハイマーの資質、というか共産主義者かどうか?に関連するマッカーシズムの聴聞会で弁明をしている場面と、さらにオッペンハイマーをマンハッタン計画に呼んだストロース(ロバート・ダウニー・Jr)を商業大臣として認められるか?を確認するための公聴会の場面があり、それも同時に進んでいくために、結構分かりにくい感じになってると思います。
基本的には、オッペンハイマーの非公開聴聞会と、ストロースの公職に就くための公開公聴会の場面があり、それぞれに重要な場面で、過去を振り返るわけで、しかも、この非公開聴聞会のピークと、公開公聴会のピークを揃えようとしているので、そりゃその方が確かに映画のピークにはなると思うし、サスペンス要素も加わるから、映画的ではありますけれど、分かりにくくはなるよな、とも思いました・・・凄く言い方もくどくなっちゃう。
しかも、ストロース公聴会が現在時間軸はカラー、ココからオッペンハイマー聴聞会は過去の出来事なのに、カラー、でも過去の重要な場面だとモノクロになったりするので、このモノクロとカラーがちょっと1回観ただけだとどういう理由で分けたのか?分からなかったです・・・多分ちゃんとした理由があると思います。
それと、IMAXで観たのですが、映像の解析度の強さも確かに凄いんですけれど、それよりも個人的には音圧。音の圧力に完全に持ってかれました。これもしかすると、IMAXよりもドルビーアトモスとかの方が良かったのかも。
みんな何となく知ってる、第2次世界大戦、それもアメリカでナチスが原子力爆弾を作っている可能性があり、ナチスにそんな危険な爆弾を持たせるわけにはいかない、いつか人類が手に入れるとしてもナチスだけはマズい、という事から始まったマンハッタン計画におけるオッペンハイマーの評伝です。伝記映画です。そして、もちろん、オッペンハイマー含む科学者たちはかなり後悔しています。でも、その時はこうだった、といって責任を逃れるわけにはいかないのです。
もし、アメリカに生を受けて、科学的な知識や論理が際立って優秀だった場合、「マンハッタン計画に名前が上がっていた場合、これを避けるのはかなり難しかったと思います。科学者の中でも、かなり温度差があるとは言え、ユダヤ人であり、ナチスに対抗するために、積極的に関わったのが、オッペンハイマーです。
そういった人物の伝記映画です。これは世界中の人が観るべき映画だと思います。
役者さんはどなたも素晴らしく(約1名はちょっと、とは思いましたがネタバレありの感想で)、しかも豪華賢覧です。とは言え中でも、キリアン・マーフォー、ロバート・ダウニー・Jr、フローレンス・ピュー、そしてベニー・サフディは別格に良かった。特に、フローレンス・ピューは恐ろしいまでの存在感・・・何なのこの子の出演作全部凄いってドユコト?って思います。凄くいろいろな監督に愛されてるんだと思う。
そして撮影も恐ろしくクリアで、焦点がいろいろ合い過ぎてて怖いくらいです。
その上を行ったのが音圧と音楽。これは肌感覚で、音に包まれる感覚で、今までの映画体験の中で1番凄かった。
これを観て、何を感じ、何を考えるか?きっと様々で正解は無い。監督には製作の動機、見せたい風景、音、いろいろあるでしょう。聞けば教えてくれる監督もいるとは思いますが、基本映画を観てくれ、としか言いようがないと思います。言いたい事は全部映画の中に込めていると思いますし、それをわざわざ監督に言葉にさせるのは、ちょっと上品とは言えないし、聞けないのが普通の人だし、そう言うモノだと思います。だから自分で感じ取った物が自分の正解だし、他者と話して感想が変わる事、あると思います。それでもいいと思うのです。もちろん映画評論家のような人の監督へのインタビューとかは有り難く聞きますし読みますけれど、別にそれが正解じゃないと思います。監督だってその時の気分で答えが変わる事もあると思いますし。
ただ、オッペンハイマー個人の人柄というか性格、ちょっと褒められたものでは無いとも思うし、とは言え、仮に共産主義者だったとしても、国籍を奪えるはずもないとも思います。しかも、共産党員は犯罪者ならいざ知らず、ただ共産党員だったことが罪に問われるのはオカシイと思います。それに、共産党を庇うつもりは毛頭ないけれど、心の問題、実際に映画の中でも、主要登場人物の発言にある通り、非常に大きい力を持つ爆弾という、人を傷つける装置を作る事を拒否する人もいます。心情や信仰を罪とするのはオカシイと思うのです。
時間の経過とともに、常識は変わっていきます。ナチスを相手にしていた時は開発が必要だったのだろうけれど、降伏したら必要が無くなった。しかし、まだ日本が抵抗している(けれど時間の問題でもあった)し、冷戦がはじまる直前ですし、ソビエト連邦をけん制したい。常識は変わるし、未来は見通せない。でも、今、決断しなければならない。その決断に責任を負わなければならない。そういう人の話し。
決断を迫られた事がある人に、今の地球で生きている人にオススメ致します。
アテンション・プリーズ!
ここからはネタバレありの感想です。未見の方はご注意を。
ネタバレありとしては、やはり、オッペンハイマーという人が、凄く不思議・・・二面性どころか三面性ある感じです。そして、その軸になるモノが、希薄な気がします。
物理理論が得意だけれど、実験は苦手。ホームシックに罹ったから、教授の食べる可能性がある林檎に青酸カリ・・・ちょっと何を言っているのか分からないくらい、支離滅裂ですけれど、強い自己顕示欲の表れ、と言えるかもしれないが、不安定。
共産主義者とも話し合える懐の広さもありつつ、党員にはならない。
自分を引き上げてくれたストロースに対して、卑しい靴売りなどという凄く失礼な発言を、何とも思ってない辺り、非常に居丈高で、権威を持っている自覚が乏しい上に、配慮は全くないので、恨まれて当然だとも思うけれど、この人は他人の感情なんか考えてないので、自業自得。そのくせに、何故か自分は大切にされると思い込んでいて、そういう都合の良さがある・・・
学校の中で生徒を巻き込んで、急に組合を作り出そうとして見たり、それがいかに稚拙でどう見られる事になるか?という視点が欠如している割に、助言があればすぐに止める・・・そこまでの信念があるように見えない・・・
その上、女性に対しても、複数と割り切った関係を結べていて、それなのに、大人の女性の振る舞いを強要しつつ(自分の弁護の時だけ・・・)、自分にとっての大切な人が亡くなったと知ると、荒野で半べそ・・・いくらなんでも・・・
軍服を着てみたり、脱いで科学者然として見たり、とは言え統括はしているけれど、実際の所、自分で専門的な何かを作り出している訳では無い。もちろんリーダーシップがあるとも言えるけれど、傲慢とも言える・・・
さらに、公職に就き続けるべきだと思っている・・・もしかすると身の潔白を示そうとしているだけなのかも知れませんけれど、何を考えているのか?が凄く分かりにくい。
それでも、ナチスだけに原子力爆弾を作らせるわけにはいかない、恐ろしい事になる、という事だけは信念に感じました。それは誰だってそう思う。
で、そこだけは覚悟があるように感じましたが、その先はあまり覚悟を感じられなかった。そして原子の佇まいを想像して、そのエナジーを、震えを、幻視している・・・想像力のなせる技・・・そのくらい物理学に才能があると、感じるモノなのか?全然不明ですけれど、この映画の描写としては、上手いと思います。常に原子のゆらぎを感じ続けている人生、恐ろしいです。だから、心ここにあらず、みたいな感覚がある。
もう1点は、水素爆弾について、開発に反対している事には、ある種の信念に近いものを感じました。
オッペンハイマーは原爆の父ともてはやされ、TIME誌の表紙にまでなっているのに、原子力爆弾の被害のスライドには眼を背けているわけです。それは本当に心からの逡巡があるわけではないようにも見えますし、どう解釈するか?は観客次第な気がしますが・・・
ストロースの芝居がかった、自分の種を蒔いておいて、映画の冒頭では知らんぷりしているのは、映画の構造上仕方ないのかも知れないけれど、あまり上手くは無いと感じました。
それとマトデは本当にこういう奴だと思ってるし、イヤな奴だな、その食べ方も下品、と思いました。何でこんなにこの人の事が好きになれないのか・・・
もしかすると、フローレンス・ピューが演じた、ジーン・タトロックは自殺じゃなくて、一瞬黒い手袋はめた手が映った気もするし、あんな恰好での自死を選ぶの、違和感あるし、どうなんでしょう?と思いつつも、とにかく凄い存在感と吸引力がある、正直全然顔もスタイルも好みですらないというか、基本的に嫌いな範疇に入るのに、なんでか、目を持ってかれる感覚があって、本当に不思議。同日のこの後同じIMAXレーザーGTで観た「DUNE part two」でも出てきて、なんか妙にザラっとした存在感で、凄かった・・・
それとベニー・サフディの、そういう人感が本当に凄い。この人は監督もするのですが、最近は役者の仕事が凄くて、ちょっとこういうキャラクターの役全部やって欲しってくらいの感覚がありましたね・・・英語訛りの感じもなんかイイ。英語の発音なんか全然ワカラナイのに、何故かこの人は訛っている、と分からせるの凄いと思う。
全然気づかなかったけれど、パンフレットで知った、アインシュタイン訳が、トム・コンティで、ってことはミスター・ローレンスな訳で、びっくり・・・年齢を感じる・・・
それに、デイン・デハーンまで出演していた事に、全然気づかなかった私の目はふしあななんで、私の感想もふしあなだらけだと思ってますし、思ってください。
衣装も素晴らしかった。それぞれのスーツ、本当にいい生地、テクスチャーを使っているのが分かるし、ネクタイや帽子というスーツ周りのアイテムの使い方含めてチャーミング。
最後に、原子力爆弾と水素爆弾の違いや製作の仮定は知れて良かったし、仲間で科学者のイジドール・ラビが言う「300年物理学が発展してきて最後が爆弾に帰結するのは悲しい(正確なセリフでは無いですけれど、私にはこう聴こえた)」という言葉が最も響いたです。
あと、ジョン・フォン・ノイマンが出てこないのはちょっと、と思いましたが、この人が出てくると、どう考えてもオッペンよりもヤバめの人なので、主役なのに喰われてしまうので仕方ないのかも。
日本でこそ公開しなきゃいけなかった作品。

「異人たちとの夏」を観ました

2024年4月16日 (火) 09:25

大林亘彦監督     松竹     U-NEXT
2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は5/33
昨年亡くなられた日本が誇る脚本家の1人である山田太一さん原作、大林亘彦監督の映画です。公開当時1988年は見逃していて、初めて観ました。そして、なんと、2024年4月19日に、あの、アンドリュー・ヘイ監督がリメイクして公開する、という情報を聞いたので。アンドリュー・ヘイ監督は「荒野にて」しか観ていないものの、絶大な信頼が置ける監督だと思ってます。なので、期待しか無いのですが、一応過去作を履修しようと思って。
病院で看病する人を撮ったビデオを早回ししながら確認しつつ電話に出る脚本家原田(風間杜夫)は間宮(永嶋敏行)へ、演出の不満を漏らしているのですが・・・というのが冒頭です。
これは、山田太一原作の映画化、という部分と、大林亘彦映画、という攻めぎ合いのようなものを感じます・・・凄く、不思議な作品。
でもちゃんと、山田太一さんの良さも、大林監督の良さも、ちゃんとある。
まずキャスティングが今観ると、これで良かった、と言い切れる気がします。でも、1988年だったら、多分違う感覚があったと思う。でも、今観ると、風間杜夫、片岡鶴太郎、秋吉久美子、名取裕子、そろぞれ、確かに持ち味を感じさせる。そう言う意味では、これは大林監督の映画。
ラスト辺りのアレも、どう考えても大林監督作品でしかありえない感覚。その前にすんごくイイ食事お別れシーンやってるのに、それなのに、え!!!っていうくらい、めっちゃ変えてくる。流石。子の頃はまだ大林亘彦監督、お元気だったんだろうね。
演出もキャスティングも、凄く山田太一さんっぽくないと言えるけれど、テレビドラマの山田太一さんというよりは、小説家の山田太一さんぽいです。私が読んだのは「飛ぶ夢をしばらく見ない」くらいですけれど、シナリオは「ふぞろいの林檎たち」ⅢまでとⅤを読みましたし、「岸辺のアルバム」はシナリオ読みました。でも、シナリオというよりは原作、という関わり方なのかな?と思います。
そして音楽は多分山田太一さんの趣味なんだと思います、それに合ってると思います、プッチーニ。
秋吉さんも名取さんも、凄くキャラクターの芯を捉えた演技をされているので、凄く良かった。何と言っても、そんな人いますか?というキャラクターを演じている名取さんの凄みは感じますし、秋吉さんの、お母さんなのにコケティッシュという相反するキャラクターってちょっと難しすぎると思うんですけれど、それが良い意味で、リアル。ちょっと凄い。
しかも片岡鶴太郎をここに連れてくるの、かなり異質感あるんだけれど、でも、悪くないんですよね、びっくり。
凄く、凄く、今半別館ですき焼きを食べたくなります。
すき焼きが食べたくなりたい方にオススメします。
さて、和風はこういう事になるし、大林亘彦監督だから、と言う意味で理解出来るけれど、アンドリュー・ヘイ監督が、あの繊細なタッチで、演出で、どう映画化しているのか?期待してしまう。
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