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クリストファー・ノーラン監督 ユニバーサル 池袋グランドシネマサンシャインIMAXレーザーGT
2024年公開映画/2024年に観た映画 目標 36/100です。 現在は6/34
やっと日本でも劇場公開されました。クリストファー・ノーラン監督作品ってだんだんと格式高いものになってきてますね。確かに、うちの国は原子力爆弾の被爆国ですけれど、これ、映画作品で、原子力爆弾の製作に関わった人物の1人であるオッペンハイマーの伝記映画ですよ??なんで普通に公開されなかったのか?個人的には不思議です。
えっと、最近の例ですけれど、NHKのBSでスタンリー・キューブリック監督の「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(一応原題だと Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb )」を放送してましたけれど、キューブリックは良くて、ノーランがダメな理由がワカラナイです。多分気分の問題でしょうけれど、もう本当にこういうのは嫌ですね・・・嫌いだし頭が悪いと思います。
映画の本質とは何も関係ない話しでした、すみません。
雨が降っていて、水面に波紋が広がっていきます・・・物理学を専攻しているオッペンハイマー(キリアン・マーフィー)は・・・というのが冒頭です。
いろいろ象徴的な立場の人ですし、原作があるのですが読んでないのでちょっとどのような改変があったのか?ワカラナイですし、時系列をかなりいじっていて、それは多分、過去のどの場面で、このような選択をしたから、今、この立場になっている、というのを示す為だと思われます。
だから凄く分かりやすくなっているとも言えますが、如何せん、話しがあちこちの過去に飛ぶ上に、登場人物がめっちゃ多いので、この辺の整理が頭の中で出来てないと、咀嚼に時間がかかると思います。もう少し勉強してから観れば良かった・・・せめてマンハッタン計画に関わる人の名前だけでも憶えて行けば良かった・・・
さらにもう1つは、裁判のような形式、正確に言うと、1つはオッペンハイマーの資質、というか共産主義者かどうか?に関連するマッカーシズムの聴聞会で弁明をしている場面と、さらにオッペンハイマーをマンハッタン計画に呼んだストロース(ロバート・ダウニー・Jr)を商業大臣として認められるか?を確認するための公聴会の場面があり、それも同時に進んでいくために、結構分かりにくい感じになってると思います。
基本的には、オッペンハイマーの非公開聴聞会と、ストロースの公職に就くための公開公聴会の場面があり、それぞれに重要な場面で、過去を振り返るわけで、しかも、この非公開聴聞会のピークと、公開公聴会のピークを揃えようとしているので、そりゃその方が確かに映画のピークにはなると思うし、サスペンス要素も加わるから、映画的ではありますけれど、分かりにくくはなるよな、とも思いました・・・凄く言い方もくどくなっちゃう。
しかも、ストロース公聴会が現在時間軸はカラー、ココからオッペンハイマー聴聞会は過去の出来事なのに、カラー、でも過去の重要な場面だとモノクロになったりするので、このモノクロとカラーがちょっと1回観ただけだとどういう理由で分けたのか?分からなかったです・・・多分ちゃんとした理由があると思います。
それと、IMAXで観たのですが、映像の解析度の強さも確かに凄いんですけれど、それよりも個人的には音圧。音の圧力に完全に持ってかれました。これもしかすると、IMAXよりもドルビーアトモスとかの方が良かったのかも。
みんな何となく知ってる、第2次世界大戦、それもアメリカでナチスが原子力爆弾を作っている可能性があり、ナチスにそんな危険な爆弾を持たせるわけにはいかない、いつか人類が手に入れるとしてもナチスだけはマズい、という事から始まったマンハッタン計画におけるオッペンハイマーの評伝です。伝記映画です。そして、もちろん、オッペンハイマー含む科学者たちはかなり後悔しています。でも、その時はこうだった、といって責任を逃れるわけにはいかないのです。
もし、アメリカに生を受けて、科学的な知識や論理が際立って優秀だった場合、「マンハッタン計画に名前が上がっていた場合、これを避けるのはかなり難しかったと思います。科学者の中でも、かなり温度差があるとは言え、ユダヤ人であり、ナチスに対抗するために、積極的に関わったのが、オッペンハイマーです。
そういった人物の伝記映画です。これは世界中の人が観るべき映画だと思います。
役者さんはどなたも素晴らしく(約1名はちょっと、とは思いましたがネタバレありの感想で)、しかも豪華賢覧です。とは言え中でも、キリアン・マーフォー、ロバート・ダウニー・Jr、フローレンス・ピュー、そしてベニー・サフディは別格に良かった。特に、フローレンス・ピューは恐ろしいまでの存在感・・・何なのこの子の出演作全部凄いってドユコト?って思います。凄くいろいろな監督に愛されてるんだと思う。
そして撮影も恐ろしくクリアで、焦点がいろいろ合い過ぎてて怖いくらいです。
その上を行ったのが音圧と音楽。これは肌感覚で、音に包まれる感覚で、今までの映画体験の中で1番凄かった。
これを観て、何を感じ、何を考えるか?きっと様々で正解は無い。監督には製作の動機、見せたい風景、音、いろいろあるでしょう。聞けば教えてくれる監督もいるとは思いますが、基本映画を観てくれ、としか言いようがないと思います。言いたい事は全部映画の中に込めていると思いますし、それをわざわざ監督に言葉にさせるのは、ちょっと上品とは言えないし、聞けないのが普通の人だし、そう言うモノだと思います。だから自分で感じ取った物が自分の正解だし、他者と話して感想が変わる事、あると思います。それでもいいと思うのです。もちろん映画評論家のような人の監督へのインタビューとかは有り難く聞きますし読みますけれど、別にそれが正解じゃないと思います。監督だってその時の気分で答えが変わる事もあると思いますし。
ただ、オッペンハイマー個人の人柄というか性格、ちょっと褒められたものでは無いとも思うし、とは言え、仮に共産主義者だったとしても、国籍を奪えるはずもないとも思います。しかも、共産党員は犯罪者ならいざ知らず、ただ共産党員だったことが罪に問われるのはオカシイと思います。それに、共産党を庇うつもりは毛頭ないけれど、心の問題、実際に映画の中でも、主要登場人物の発言にある通り、非常に大きい力を持つ爆弾という、人を傷つける装置を作る事を拒否する人もいます。心情や信仰を罪とするのはオカシイと思うのです。
時間の経過とともに、常識は変わっていきます。ナチスを相手にしていた時は開発が必要だったのだろうけれど、降伏したら必要が無くなった。しかし、まだ日本が抵抗している(けれど時間の問題でもあった)し、冷戦がはじまる直前ですし、ソビエト連邦をけん制したい。常識は変わるし、未来は見通せない。でも、今、決断しなければならない。その決断に責任を負わなければならない。そういう人の話し。
決断を迫られた事がある人に、今の地球で生きている人にオススメ致します。
アテンション・プリーズ!
ここからはネタバレありの感想です。未見の方はご注意を。
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ネタバレありとしては、やはり、オッペンハイマーという人が、凄く不思議・・・二面性どころか三面性ある感じです。そして、その軸になるモノが、希薄な気がします。
物理理論が得意だけれど、実験は苦手。ホームシックに罹ったから、教授の食べる可能性がある林檎に青酸カリ・・・ちょっと何を言っているのか分からないくらい、支離滅裂ですけれど、強い自己顕示欲の表れ、と言えるかもしれないが、不安定。
共産主義者とも話し合える懐の広さもありつつ、党員にはならない。
自分を引き上げてくれたストロースに対して、卑しい靴売りなどという凄く失礼な発言を、何とも思ってない辺り、非常に居丈高で、権威を持っている自覚が乏しい上に、配慮は全くないので、恨まれて当然だとも思うけれど、この人は他人の感情なんか考えてないので、自業自得。そのくせに、何故か自分は大切にされると思い込んでいて、そういう都合の良さがある・・・
学校の中で生徒を巻き込んで、急に組合を作り出そうとして見たり、それがいかに稚拙でどう見られる事になるか?という視点が欠如している割に、助言があればすぐに止める・・・そこまでの信念があるように見えない・・・
その上、女性に対しても、複数と割り切った関係を結べていて、それなのに、大人の女性の振る舞いを強要しつつ(自分の弁護の時だけ・・・)、自分にとっての大切な人が亡くなったと知ると、荒野で半べそ・・・いくらなんでも・・・
軍服を着てみたり、脱いで科学者然として見たり、とは言え統括はしているけれど、実際の所、自分で専門的な何かを作り出している訳では無い。もちろんリーダーシップがあるとも言えるけれど、傲慢とも言える・・・
さらに、公職に就き続けるべきだと思っている・・・もしかすると身の潔白を示そうとしているだけなのかも知れませんけれど、何を考えているのか?が凄く分かりにくい。
それでも、ナチスだけに原子力爆弾を作らせるわけにはいかない、恐ろしい事になる、という事だけは信念に感じました。それは誰だってそう思う。
で、そこだけは覚悟があるように感じましたが、その先はあまり覚悟を感じられなかった。そして原子の佇まいを想像して、そのエナジーを、震えを、幻視している・・・想像力のなせる技・・・そのくらい物理学に才能があると、感じるモノなのか?全然不明ですけれど、この映画の描写としては、上手いと思います。常に原子のゆらぎを感じ続けている人生、恐ろしいです。だから、心ここにあらず、みたいな感覚がある。
もう1点は、水素爆弾について、開発に反対している事には、ある種の信念に近いものを感じました。
オッペンハイマーは原爆の父ともてはやされ、TIME誌の表紙にまでなっているのに、原子力爆弾の被害のスライドには眼を背けているわけです。それは本当に心からの逡巡があるわけではないようにも見えますし、どう解釈するか?は観客次第な気がしますが・・・
ストロースの芝居がかった、自分の種を蒔いておいて、映画の冒頭では知らんぷりしているのは、映画の構造上仕方ないのかも知れないけれど、あまり上手くは無いと感じました。
それとマトデは本当にこういう奴だと思ってるし、イヤな奴だな、その食べ方も下品、と思いました。何でこんなにこの人の事が好きになれないのか・・・
もしかすると、フローレンス・ピューが演じた、ジーン・タトロックは自殺じゃなくて、一瞬黒い手袋はめた手が映った気もするし、あんな恰好での自死を選ぶの、違和感あるし、どうなんでしょう?と思いつつも、とにかく凄い存在感と吸引力がある、正直全然顔もスタイルも好みですらないというか、基本的に嫌いな範疇に入るのに、なんでか、目を持ってかれる感覚があって、本当に不思議。同日のこの後同じIMAXレーザーGTで観た「DUNE part two」でも出てきて、なんか妙にザラっとした存在感で、凄かった・・・
それとベニー・サフディの、そういう人感が本当に凄い。この人は監督もするのですが、最近は役者の仕事が凄くて、ちょっとこういうキャラクターの役全部やって欲しってくらいの感覚がありましたね・・・英語訛りの感じもなんかイイ。英語の発音なんか全然ワカラナイのに、何故かこの人は訛っている、と分からせるの凄いと思う。
全然気づかなかったけれど、パンフレットで知った、アインシュタイン訳が、トム・コンティで、ってことはミスター・ローレンスな訳で、びっくり・・・年齢を感じる・・・
それに、デイン・デハーンまで出演していた事に、全然気づかなかった私の目はふしあななんで、私の感想もふしあなだらけだと思ってますし、思ってください。
衣装も素晴らしかった。それぞれのスーツ、本当にいい生地、テクスチャーを使っているのが分かるし、ネクタイや帽子というスーツ周りのアイテムの使い方含めてチャーミング。
最後に、原子力爆弾と水素爆弾の違いや製作の仮定は知れて良かったし、仲間で科学者のイジドール・ラビが言う「300年物理学が発展してきて最後が爆弾に帰結するのは悲しい(正確なセリフでは無いですけれど、私にはこう聴こえた)」という言葉が最も響いたです。
あと、ジョン・フォン・ノイマンが出てこないのはちょっと、と思いましたが、この人が出てくると、どう考えてもオッペンよりもヤバめの人なので、主役なのに喰われてしまうので仕方ないのかも。
日本でこそ公開しなきゃいけなかった作品。