舛田利雄監督 東宝 U-NEXT
2024年公開映画/2024年に観た映画 目標 36/100です。 現在は7/36
最近の映画を観ると、どうしても古い作品も観たくなります。最新の映画は確かに凄いし、モダンを観続ける事が、今をみている事になり、その継続が、当然生きてくるのですが、懐古趣味では無いですけれど、昭和生まれとしての、昭和のなつかしさは感じられてしまいますし、だからこそ、当時としては画期的だってんだろう、とか感覚として時代感が理解出来る気がします。
とはいえ、昭和期もなごうございます。昭和初期は全く分かりませんし、第2次世界大戦は1945年に終結していますけれど、この昭和20年辺りも基準点になるでしょうけれど、子の頃も全然肌感覚が無いです、やはり生まれてからの昭和でないと肌感覚は無いですね。それに、昭和が良かったわけではない事は間違いない。凄く汚れていたし、いろいろな意味で今の方がソフティケートされていると思います。
中でも、1番好きな俳優である仲代達也さんが出演しているので。
明治37年満州(現 中国東北部)ハルピン 日本人スパイ(?)2名が捉えられていて・・・というのが冒頭です。
大変有名な日露戦争の陸軍の激戦地である旅順攻略の重要地点の名前が、二百三高地です。名前は知ってましたけれど、恥ずかしながら、司馬遼太郎の「坂の上の雲」を読んでないのですが、コテンラジオの日露戦争を聞いてはいますし、江川達也氏の「日露戦争物語」も一応連載時は読んでました、けど、あれって未完のままなんでしょうかね・・・
それと、戦史モノをどう判断すればよいのか?というのは凄く難しいと思います。なので判断は保留です。何故なら、そう主張したい人、それもイデオロギー的な事で、意図的に資料を基に判断すべきではないと思いますし、動かしがたい事実として、多量の死者が出ている、という事は間違いない、くらいでその他の判断は保留したいです。
それにこれは映画ですし。書籍でも何でも、すべての資料を読み込んだとて、その場に居なかったわけで、その場に居た人でも、記憶違いがあると思われます。都合よく解釈する人もいるでしょうし、私の肌感覚でも、昭和時代なら、乃木さんの司馬史観に対しては肯定的な事が多かったです。けれど、司馬さんが亡くなられた後の批判というのは、あまり好ましい事ではないような気がします。それでも時代が異なるとそういう事も出来ませんし、少なくとも、司馬さんにとっては書籍を書かれる以上、司馬さんの主張が反映されているのは普通の事だと思います。
舛田監督作品って観た事無かった、と自分では思ってましたが、調べてみると、あの「宇宙戦艦ヤマト」の映画の監督、子供の頃観てました・・・そうか、そういう監督なのか・・・実写とアニメーションは違うと思いますし、あまり色眼鏡で見ないようにとは思いますけど、まさかヤマトの監督だったとは・・・
役者さんの仲代達也さん目当てで観ているのですが、やはり主役は仲代さん演じる乃木希典だと思います。凄く、昭和の日本人が感情移入しやすいキャラクター。そして、その親友でもある児玉源太郎を演じるのが丹波哲郎・・・えっと、凄く岡本喜八監督「激動の昭和史 沖縄決戦」の時と真逆のキャスティングです・・・なるほど、これは意識せざる得ないキャスティングですね。
第3軍を率いる乃木の視点で描かれていますけれど、その中に予備役で徴集された、ロシア小説に傾倒する小学校教師をあおい輝彦、その部下の反社会的な人間を佐藤允が演じていて、この2人の、配下軍人の末端の将兵の置かれた現実も映し出されます。
あと、確かに、夏目雅子は美人ですね。私にとっては、三蔵法師の人なんですけれど。
乃木視点だと、非常に厳しい判断をせざる得ないわけで、で、どの段階から児玉源太郎が関わっていたのか?辺りが論争になるんでしょうし、乃木の能力の問題とかも、気になるんですけれど、そういう事は、映画の中の話しと現実は違うので、この映画の中だと、児玉源太郎が差配したわけです。けれど、それまでの、装備や弾数が無い話しとか、本当に苦しい立場に立たされていて、中間管理職の悲哀のようなモノを感じますけれど、とは言え、多大な死者が出ている事実、近代戦闘の要塞化した地への戦闘と言う意味で、当時にはあまり経験したことが無い戦いであり、人間の醜さが戦争で加速する感覚は理解出来ます。
それと、家への市民の鬱憤の晴らし方を観ていると、そしてその後の持ち上げ方を観ていると、凄く感情によって何もかも思うがままに振る舞う幼児を観ているようで、大変にキツイです・・・そしてそれは今も何も変わらない気がするのも、イヤな気持ちになりますね・・・うちの国の特性とも言えると思います。もちろん他の国でも起こる現象でしょうけれど。
あおい輝彦さんは結構良かったですし、佐藤允は、出てくると俄然、映画が動き出すので面白いですし、こういう俳優さん少ないと思います。
ロシア側との交流も実話の様ですし、トルストイは偉大な作家である事は同意したい。
莫大な予算が投入されてますけれど、回収できたのか、微妙な感じがしますし、ちょっと、いや、今だからなのかも知れませんけれど、さだまさしの曲がキツい・・・
それでも、仲代達也の演技の一端を知れる作品なので、仲代さんのファンの人にオススメ致します。