井の頭歯科

「アウステルリッツ」を観ました

2024年6月11日 (火) 09:01

 

セルゲイ・ロズニツァ監督     Imperativ Film     U-NEXT
2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は13/55
関心領域を観て、これは観なければ、と思った作品でしたが、U-NEXTさんにあったので、観ました。本当にU-NEXTさんは有意義。
2016年の、つまり、ロシアとウクライナの戦争が始まる前のドキュメンタリー作品です。
今の、アウシュビッツ収容所、ホロコーストがどのように人々に受容されているのか?負の遺産として施設として展示されているのか?を、展示されている事象ではなく、そこを訪れる観光客を写す事で表そうとする作品です。
そう、悲惨な当時の状況を示す展示や説明は一切ありません。そう言う意味で関心領域にとても近い作品と言えます。ですが、更にドキュメンタリーで現代、というさらに離れた視点から描かれています。
人間観察を趣味にした事がある人なら、大変面白い作品と言えますが、そうでないと、かなり能動的にこちらが意味を取りに行かないと、何も感じられない作品です。ドラマは全くありません。が、観察を通してのドラマは、ある意味出てくる観光客の数だけあるとも言えます。その全部に想像を巡らせる事は出来ませんが、しかし特徴的な人物たちのさりげない行動から、ドラマ性を感じる事が出来ます。
服装、メガネやサングラス、表情、立ち振る舞い、また施設から貸し出されているであろう多言語を翻訳して解説してくれる機械(美術館でよく貸し出されているような機械)の持ち方や聞き方、様々な事柄から、その人の成り立ちを勝手に、個人的に、想像するわけです。もちろん全然確かめようがないですし、そもそも勝手な想像ですし、海外渡航経験もない人間の、偏った想像ですけれど、映っている、という事で脳は働いてしまいます。そしてこの映画は能動的に意味を取りに行くようにさせているわけですから。もちろんLookismという概念がある今(2024年現在)の世界で私の想像を誰かと共有しようとは思いませんが。
凄く不遜な例を挙げると、この映画の割合冒頭に、胸に大きく『F・・KIN 99』と描かれた、アメリカンフットボールのユニフォームのようなTシャツを着た陽気そうに歩く白人男性が歩いているのが割合長い間画面に映っています。これからアウシュビッツの施設に向かうのに、です。
もちろん何気ない、ただの偶然かも知れませんし、意図的(の可能性は低いでしょうけれど)なのかも知れませんが、そこに、勝手に意味を、見出してしまう訳です。
恐らく夏なのでしょう、7割くらいの感覚で、施設の見学者はサングラスをしています。半袖、半ズボン、サンダル、といういで立ちも多いです。
そして、施設の中や重要な説明もされないのですが、注意して見ていると、今まで眺めさせられていた場面を、次の場面では、逆方向から眺めさせられている事に気付きます。
不思議な映画体験ですが、関心領域を観た後だと、かなりきます。凄く喰らうとも言えます。
関心領域を観た方にオススメします。
ネタバレじゃないけれど、とにかくTシャツの柄って凄く面白いし、勝手に意味を感じ取ってしまうし、本当に、都市の名前を堂々と描かれているの、多いなぁと思いました。LAやCHICAGOだとか、ヨーロッパの都市(ROMAとか)の名前も数多く出てきます。不思議。
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