井の頭歯科

「ロボット・ドリームス」を観ました   Robot Dreams

2024年12月7日 (土) 09:38

 

パブロ・ベルヘル監督     THE KLOCK WORX     吉祥寺アップリンク
2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は47/124
評判の1作です。とりあえず、予告編も観てない状態で行きました。
凄く、凄く良かったです。普通に考えれば、今年の№1と言える作品。ま、少し引っかかるところもあるのですが、観ている時は文句なしの傑作!と思いました。
大都会ニューヨークのアッパーイーストに住むDogは孤独な生活をしているのですが・・・というのが冒頭です。
どうやら、原作の漫画が存在するようです。その漫画もセリフが存在しないみたいです。
で、これは別れと再会と承認の話しで、大変にムネアツな展開なんですけれど、それを言葉ではなく、動くや表情、つまりアニメーションで伝えてきます。もうこれが最高なんです。
何処かの国のドラマのように、忙しく働く人が目を離して集中しないでも話が追えるように、何でもセリフで説明するという視聴者の事を考えているようで、実は甘えさせ舐めている演出とは真逆の構造。
普通、映画は映画館で観るもので、それなりの集中を要する作品です。テレビドラマのように流し見するべきものでは無いと思いますし、流し見するくらいの作品を作るのって作品に対しての志が低いと言わざるを得ない、です。そんなの観る価値が低い。
当然、それなりの集中力が必要なのですが、当たり前ですけれど、観れば納得の、ただ見ているだけのはずの人も、画面に集中せざるを得ない、どうなるのだろう、とか、謎や、この先を知りたいとかのフックが大変に強い作品なので、心配ご無用です。
私は公開翌週の祝日の夕方回で観ましたけれど、満席の上に、子供が数多く居て、うるさくされたら嫌だけど、この子たちにも良い映画体験になって欲しい!と思いながら観ましたが全然うるさくなかったです。きっと子供でも理解出来る作品だと思います。
もちろん1人で来ている人も、カップルの人たちも居ましたが、皆一応に、暖かな空気の中で劇場を後にしました。
セリフを使わない漫画というといろいろありますし、私が最初に体験したのは鳥山明先生の「ドクタースランプ」でしたが、めちゃくちゃにスタイリッシュに見えました。あとくらもちふさこ先生の「天然コケッコー」でも素晴らしい表現でした。どちらもストーリー漫画のある1回だけですけれど、だからこその驚きですが、本作は映画丸ごと1本ですから、試みとしてはかなり志が高い。
その志の高さに対しての細やかな配慮が、また。そしてだからこそ、音楽と動きの同期、つまりダンスが素晴らしい。ホモサピエンスの創造した中で最も素晴らしい事の2つ、歌とダンス、この2つともに表現されています。本当に際立って素晴らしい。
ともろ手を挙げて最高なんですけれど、観終わった後で考えさせられてしまう部分もあるにはあるんです・・・その辺はネタバレを含むので・・・
とにかく、今劇場でかかっているうちに、是非!
歌とダンスが好きな人にオススメします。

アテンション・プリーズ!!

ここからはネタバレありの感想なので、未見の方はご遠慮くださいませ。

ネタバレありの感想だと、本当に細かく描写される、ストローが逃げるのを追う唇の動きとか、めちゃくちゃに重たさを感じさせるロボットの起動シークエンスとかが最高ですし、現実味を感じさせるんです。基本的にホモサピエンスが全て動物になっているだけなのに、ある動きや特性を、動物に擬人化させる事で、よりそのキャラクターの人間性が浮き上がるなんて、なかなか思いつく事じゃないです。大変に面白い。
ある種の絆が生まれる瞬間はもう少し積み上げても良かった気がします。起動から公園でのローラースケート場面はもう少し見ていたかったですし、Dogが注意書き等を読んでいれば、まだ防げた夏の海水浴シーンも非常に多幸感があり最高に盛り上がります。
ここから、恐らく映画内で1/3くらいでもう海水浴場で動けなくなるロボット、そして別れ・・・あまりに早いと感じました。
この別れから、本作のテーマ、ロボットのドリームスが始まるわけです。
夢の中でDogに会う様々なシーンが描かれます。夢だと分かっていても、醒める瞬間の悲しさと同時に、Dogへの心の動きを感じさせてくれて、これが地味に蓄積されていきます。
その後ロボットは廃棄された後に救い出されたRascalと共に暮らす事になり、このRascalとの関係性が深まります。Rascalさんもなかなか良い人。正直、私はDogさんよりもRascalさんとの方がより良い関係に映りました。
で、その後に、なんというか、この映画のクライマックス、いわゆる一瞬の再会と、ある種本当の意味での別れと、それぞれの承認の話しなんだと思うんです。
一瞬の再会、いわゆる邂逅。それだけで価値があるモノです。
しかし、再開したとなると、そこにどうしても選択肢が明示されてしまう、それはある種の強制を強いる事になります。今の相手と今の私を比べる事になるから、です、どちらを選ぶのか?を。当然今の生活があるわけで、簡単に元に戻れるわけじゃないのに、戻りたいという単純な欲求や、過去を認めたいからこそ自分は間違ってなかった事を示したい欲求が重なります。
現実的に言うなら、今の肯定をほとんどの人が選んでいるはず。そしてそうではなく過去を選択する事に、叶わないからこそのロマンティシズムがあると、言えます。
しかしこの作品では、再会を認識しているのはロボットの方だけで、Dogは再会を認識していない。ここにロボットの非常に強いDogへの愛がある。
その前段階に、白昼夢のような最後のロボットドリームズが描かれているわけです。
ここでロボットは新しい黄色値引きロボットに疎外感を与える事を避け、それでも再会の喜びに震え、MyFavoriteであるSeptemberをかけるわけです。意気投合し、それぞれが踊り合う。身体を動かし、連動している事を確認するロボット。でも姿は現さない。Dogもなんとなく気配は感じてくれた様子。
こんなに利他な存在がいる事に、胸を打つシーン。
RascalはDIYな人でおそらくビル管理人。雑務をこなしつつロボットとの新たな生活者であり、よき理解者。
Dogはどうかというと、寂しさを埋める為の動機であり、他者との関係性を結びにくい。その遠因がなんなのか?は考察に値するとは思いますし、Duckとの関係からは、何となく想像出来ます。自分からは努力をあまりしないタイプ。白馬の王子さまを待つ感じが近い。もしくは行動に移すのに時間がかかるタイプ。
と、いろいろ考えたりもしたけれど、1番良く分からないのは、やはりロボットが自我を持っている 他者 なのか、それとも電気的シナプスの連動でありアルゴリズムの結果の行動を起こせる 存在 なのか?です。
見ようと思えば、確かに、これは男女(以外ももちろん可能なカップル)の話しとも見れなくもない。けれど、やはり動物にしているし、男女(に限らないカップル はやくそういう含意を含む言葉が出来たらいいのに)なのかも知れないけれど、まぁ今ならバディもアリだと思いますが、やはり、わざわざ相手をロボットにしているわけで、これは一考に値する気がします。
で、私の結論は、夢を見ているので、自我が存在する他者。なんだけれど、そうなると、この他者を購入している、なんなら主従関係が存在する、が気になってしまうのです・・・
しかもロボットが凄くDog的な主従関係すら楽しめている感覚があるんです・・・
凄く受動的にDogの好意ある行為を、単純明快に、認め喜んでいるロボット・・・物凄く犬っぽい。もしかすると、インプット期で吸収しているのかも知れない、けど順応力が高い!そしてそれが、まさに宣伝文句の「孤独なあなたに」な感じがする・・・・さらに言えば、これすらシステムとして組み込まれている可能性は否定できない。
それでも、その後にロボットがドリームズを見るこのロボットはロボットそしての生成、いやさ誕生の過程を経てはいるが、やはり自我が存在する他者であると思いたい。
ロボットだけれど、他者であり、思い出を共有出来ている存在。分かりやすい男女にしなかった分、しかも無機物にしたことで、いろいろ考えてしまったけれど、やはり他者なんだろうと思います。たとえ、そうプログラミングされていようとも。Dogとの経験をしているロボットは他に居ないし、SeptemberがFavoriteなロボットも他に居まい。
思考はぐるっとめぐって帰ってきただけ、な気がしますけれど個人的には必要な作業(めんどくもあり楽しみでもある)だったと思います。
やはり、孤独を感じているあなたに、という宣伝、そして購入者と購入されたロボットという部分を回避出来ていたら、もっと名作になったと思います。
そう言う意味ではDogはRascalと比べて、DIY精神も無ければただ普通に組み立てただけ・・・これが重しのように後からズシリと感じる違和感の正体なんではないかと。
だからこそ、もしかすると、Rascalと出会えたロボットの幸せを描いた作品なのかも知れません。
ブログカレンダー
2024年12月
« 11月    
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  
アーカイブ
ブログページトップへ
地図
ケータイサイト
井の頭歯科ドクターブログ