クリント・イーストウッド監督 ワーナーブラザーズ U-NEXT
2025年公開映画/2025年に観た映画 目標52/120 2/8
「陪審員2番」があまりに面白かったので、ついイーストウッドの個人的ベストを確かめたくなって、おそらく10回目くらいの試聴です。ですが、何度見ても素晴らしい作品。
畑を耕す一家の周囲に砂埃が舞い、嵐が訪れようとしています、そこにオンボロな車がやって来て・・・というのが冒頭です。
イーストウッドは落ちぶれたドサ回りをしている売れない歌手レッド・ストーバルで、姉の家に寄ったところで、甥のホイットとお爺さんと一緒にナッシュビルで開かれるグランド・オープリーというオーディションを受けるために旅に出ます。甥のホイットを演じているのは実の息子のカイル・イーストウッド、後のプロの音楽家でベーシストです。しかもイーストウッドの「ルーキー」とか「グラントリノ」の映画の音楽も担当しています。
イーストウッド作品は基本的にマッチョで漢汁溢れる映画がほとんどなんですけれど、この作品と、おそらくもう1つ「ブロンコ・ビリー」でだけ、違ったキャラクターを演じています。
それは負けを認める、夢破れる、世界の認識を自分で変える、という誰にとっても当たり前で歳を取ったり病気になったり精神的に落ち込めば誰にも必ず訪れる、その負を受け入れる男を描いていますし、すごく数少ないイーストウッドが、◯〇する映画です、一応伏せます。普通の多くのイーストウッド映画では描かれない場面です。ほとんどの映画でイーストウッドは負けないし、勝ち気で強気でヒーローです。だからこそ人気があるのもわかりますけれど、ずっと勝ち続ける、というのは無理な話しです。そして、正義のヒーローですら正義と自身の行動の葛藤が起こる世界の中で、イーストウッド的な男気はある種の狂気すら孕んでいると思いますが、それがほとんど無い、稀有なイーストウッド作品です。
この映画はリリシズムを描いていますし、ある種のノスタルジーでもあるし、自己憐憫という部分もあるでしょう。しかし、それ以上の事が起こっていると思います。
ある種のアメリカンドリームの終焉でもあります。
曲も大好き。
しかし邦題は本当に嫌ですね・・・