井の頭歯科

「アプレンティス ドナルド・トランプの創り方」を観ました  The Apprentice

2025年2月7日 (金) 09:39

 

アリ・アッバシ監督     キノフィルムズ     新宿キノシネマ
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   4/11
私にとって2024年のアメリカ大統領選挙の結果はなかなか衝撃的でした。なんでこんな人が存在するのか?果ては大統領職に就いて、その後本当に様々な軋轢と下品さを振りまきながら、議事堂襲撃まで(私から見ると)扇動しているにも拘らず(だから今恩赦を与えているわけで・・・)再度、大統領選に出馬して当選してしまう(もっとも、民主党の候補者選びの紆余曲折も考えると・・・)という事が起こるなんてびっくりしたわけです。
それでも、トランプ支持者の方々の意見に、分からないわけではなく、確かに虐げられてきた方々からすると、心底応援しているのでしょうけれど、ドナルド・トランプという人の幼稚性や居丈高で自承認欲求の高さや下品さを考えても、いや、だからこそ応援支持しているのだという事が理解出来るようになってきました。民主的な選挙を経た結果で、民主主義的なリーダーになった事は、今のところ選挙の不正の話しは聴きませんし、受け入れるべきなのでしょう。
という事は、ビデオジャーナリスト神保哲夫氏の言うパクス・アメリカーナの終焉を観ているのだという事も理解しました(世界の警察としての役割を降りて、自国中心主義、モンロー主義的な志向に至った)。選挙に勝つという事でその後の製作が決まるわけで、投票権のある人の過半数が、自国中心的な振る舞いを強く望んだ、と言えるし急激な変化を望んでいるし、ひいてはドナルド・トランプという人格を肯定している訳です、結果として。
でも、選挙での投票行動を鑑みるに、というか選挙権のある人々の中に、俺もドナルド・トランプみたいに、欲望に忠実でいたい、なんならマナーなんてなくていい、という層が一定数いるかも知れないし、そもそもずっと前からそうだ、と言う感じが、凄く恐ろしいです。特に調べたり、一貫性すら求めずにいられる姿勢が恐ろしい、と思ったわけです。だって関係性すら生まれない、王様の様な特権を民衆が望んでいるように見えるし、ヒトラー的な感情論や現在は否定されている優性論を持ち出さなくても同じ事が出来ている、ように見えるからです。
伝わるか分からない上に私の言語のスキルに問題だと思うんですけれど、男尊女卑のバックラッシュにも思えます。どの辺から男尊女卑的な志向があったのか?は諸説あると思いますけれど、女性側からしたらずっとだよ、とも言えますし、テクノロジーが進化しても、感情に流される、感情を完全に排するわけには行かず、ホモサピエンスが賢くなるしかないのですけれど、テクノロジーが発達した事で、浅薄で薄っぺらな状態でも生きていける為なのではないか?とか考えたり全然思考がまとまらない状態です・・・
今では常識となった民主主義や人権概念だってフランス革命で生まれるまで無かったし、その思想の基盤のトマス・ホッブズ、ジョン・ロック、ジャン・ジャック・ルソーと積み上げて来た状態の中でもルソーの一般意思があるのかないのかワカラナイ状態で希求する事だとすると、確かにコテンラジオでいう宗教チックな部分もあるわけです。その宗教チックなものに支えられている民主主義や人権概念だって根付くのに時間かかったので、加速主義的に考えたら、もうどうなるか見ていく、という事なんでしょうけれど・・・ドナルド・トランプが登場して支持されているという歴史はあるわけで、本当にどうなるんでしょうね・・・
なので、ドナルド・トランプの創り方、という部分に興味があったので観ました。
20代のドナルド・トランプ(セバスチャン・スタン)はお気に入りの会員制高級クラブで弁護士であるロイ・コーン(ジェレミー・ストロング)の目にとまり・・・というのが冒頭です。
近代アメリカ史に詳しくない(というか何も知らないに等しいのが私)ので知らなかったのですが、ロイ・コーンという人物が恐ろしすぎるのですが、この人物がドナルド・トランプを育てたとも取れる映画です。割合事実に即しているようです・・・だから余計に恐ろしいのですが・・・
怪物が、もっと手に負えない怪物を作った話し。
実在するロイ・コーンという人物が、非常に気になります。こういう人物が生まれるのって、とても偏った考え方があると思うのですが、中には徹底して、徹底的に、自己中心的な考えとその為には法を犯す事も厭わない人が出てきますよね・・・だけれどこの人物が映画で描かれているのがおおよそ本当だとして、これは今までに見てきたタイプの中でも突出して抜き出た存在だと思います。善悪の判断ではなく、利益、もしくは欲望に対してのみ忠実であるので、違法行為や自己矛盾性も厭わない(ように見える)人物が法の知識を仕事にしている恐ろしさとでも申しましょうか。しかし、この人物でも、愛国である事にだけは、辛うじて、信仰の様な側面があります。
そして悪性だとしても、突き抜けた存在に、人は魅了される事もあります。正直、徹底的に行う、という事に関しては私もかなり魅力に見えました。ここまでだと清々しい気持ちにさえなります。
ただ、私はロイ・コーンという人物がただ単に、因果応報と言うモノでは?としか思えなかったですし、その因果が、まわりまわって全人類に影響を与えたとなると、映画「炎628」のラストを思い出してしまいました。無かった事には出来ませんし。それに病気の事はドナルド・トランプと関係ないです。
それから、とある有名人というかアーティストが出てくるのですが、こんなところに出入りしてたのか!という驚きがありました・・・
普通この映画の中の若い頃のドナルド・トランプのように自己肥大が過ぎる人物ってそう大成しないと思うのですが、稀有な例なのでは?とは思います。自己矛盾が無く、徹底的に攻撃。非を認めないという人物に徳を見出せる人は少ないでしょうから。
映画はある地点で終わるのですが、その続きは現実世界で続いています。だからこそ恐ろしい。ホモサピエンスって考えたりするから進化してきたのですけれど、そんな事は知らない俺を尊敬し続けろ、という人物に魅了された国が何処に向かうのか?気になります。それに、確かにパクス・アメリカーナのコストは膨大でしょうけれど、始めたのも自己都合なら辞める時も自己都合なんで、より落差が大きいですし・・・
そして、ドナルド・トランプを演じたセバスチャン・スタンが、おバカなチャーミングさがある状態から、完全に私の知る、ドナルド・トランプになっていく様が、恐ろしいほどに似ています・・・どうしたらこんなに似せられるのか????恐ろしいくらいで、ドキュメンタリーっぽい画質のおかげもあると思いますけれど、凄い。
そしてロイ・コーンを演じたジェレミー・ストロングも素晴らしく恐ろしいです。この人映画内で唯一、字幕でドナルド・トランプにアムール的な言葉を使うシーンがあるのですが、もしかしたら本心だったのかも。友情って、金で買えないモノ。当たり前だけれど、そして知ってもいるのだろうけれど、このロイ・キーンはやり方があり、そして希求していたように思われる。
が、彼が作り上げた怪物は、それさえ不要としているわけで、まぁ、ね・・・本当に「炎628」のラストを連想させる・・・
パクス・アメリカーナの終焉に生きる人で、その元凶の一因を見て見たい人にオススメします。
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