井の頭歯科

「ジーザス・サン」を読みました

2012年1月20日 (金) 09:31

デニス・ジョンソン著     柴田 元幸訳     白水社

友人のオススメで知って、それまで全く名前を憶えてなかった作家さん、気になった紹介をされていたので早速図書館で予約して読みましたが、噂に違わず、そのショッキングさは格別のものがありました。

何に近いか?と聞かれたら文体を無茶苦茶ソリッドにして題材をもっと破天荒にしながらも落ち着くべきポイントを逃さないレイモンド・カーヴァーとでも申しましょうか。もしくはあのトム・ジョーンズをもっと日常に置き換えてドラッグまみれにした感じでしょうか?とにかくザラリとしていて先が読めなく、しかも居心地の悪さが非常に高位で安定しているというシロモノでして、衝撃度ではかなりのものがありました。短篇集なんですが、訳者である柴田さんもあとがき述べられてますが、連作短編としてしか読めない短編集です。

私が気になった、と言いますか、引っかかったのはもうほぼ全てなんですが、あえて絞ると、突然としか言いようの無いこの瞬間を平坦に低い眼差しで捉え、しかも冒頭のもっともドラッグ色の強い「ヒッチハイク中の事故」、描写としてピントは合っているのに情報不足ではない居心地の悪さからくる眩暈や白昼夢にも似た感覚を覚える(そういう意味では「エレンディラ」の頃のガルシア=マルケスに似ていなくも無い)「二人の男」、最後の文章辺りはもう詩のようなソリッドさを感じさせる「保釈中」、悪夢、という形容詞がふさわしいのに、映画や小説やドキュメンタリーで言う『悪夢』とは違った現実味でありリアルを感じさせつつ、視覚的ヒロガリを感じさせる作品中最も個人的に好みの作品「ダンダン」、多分一番カーヴァー作品に近い「仕事」、まさに『ぶっとんでる』「緊急」(なんかどうしても、特にこの「緊急」と「ダンダン」は本当に身に起った出来事のように思えてならないです)、そして完成度として最も高いと思う「ベヴァリー・ホーム」です。

私はもちろん衝撃を受けましたけれど、この短編集を『二十世紀末に出た短編集で誰もが名を挙げる一冊』という風に評価する土壌のあるアメリカ社会というものに衝撃を受けました。そんなに日常にドラッグがあるんでしょうかね。日本はそういう意味では平和なんでしょうね。

しかし映画化してるん(ホントに?)ですか!?見てみたいです。

短編アメリカ小説が好きな方にオススメ致します!

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