井の頭歯科

「日本のいちばん長い夏」を読みました

2012年2月21日 (火) 09:31

半藤 一利編集       文春新書

これまで、太平洋戦争については良く分からないことがあり(呼称としても個人的には今のところ「太平洋戦争」を使用したいと考えております)ますが、もちろん東京裁判についても、漠然とした知識からだけでも、非常に強引な、裁判という形式を取った『何か』なんだろうと認識しております。東京裁判の矛盾点や認識の相違、もしくははっきりとした歪みについては、様々な媒体で反論、検証されるべきでしょうし、議論はあって良いと思います。が、しかし、何よりも、戦時中の、しかも責任ある方々を含む存命者がその時の状況を語り、自らどのような判断に従った結果、このような惨状を招いた、という検証が、日本人自らの手でなされないことに疑問を感じていました。が、この座談会の本を書店で見かけて早速購入しました。なかなか凄いメンバーが揃って(一部後から挿入されているようです)いますね。こういう考察こそが、必要だったのではないか?それを行わずして東京裁判の強権的、公平感の無い部分を突いても説得力に欠けるのではないか?と常々思っていたので、この本の存在に非常にびっくり致しました。でも、もちろんもっと多彩で多様な検証が必要だと思いますが、既にかなりの方が鬼籍に入られており、その時期を逸してしまっていると思います。そういう意味では戦後はきっとこれからも続くのではないか?と感じてしまいます。検証や証言をもっと集めて大まかな見解だけでも出しておいたほうが良かったと思うのです。それが区切りに出来る『何か』だったのではないか?と本書を読んで感じました。

戦争時代に様々な場所に居た実際の人々、それは軍部の中央に在籍されていた方から、政治の中心におられた方、さらに刑務所内にいた方、一兵卒だった方、捕虜になっていた方、ジャーナリズムに携わっていた方、一般市民の方、外交関係の方、本当に様々な方々が、割合忌憚無い自身の言葉で語られる座談会です、どこの何に問題が潜んでいたのか、あるいはその当時を知らない人がどれだけ俯瞰出来るか?ということに役立つ資料だと思います。

陸軍大臣であった阿南惟幾、そしてその遺言である復員の手配を成し遂げるという偉業をされた荒尾興功の覚悟や努力は並大抵のものではないと思います。特にその自死を遂げ暴発やクーデター、そしてテロを収めた阿南の凄さも光りますが、おそらくもっとキツイであろう生き忍んでまでも阿南の意思を継いで実行した荒尾さんの姿は非常に感銘を受けました。

また、それと同じよう感銘を受けるのが、大岡 昇平であったり、今村 均の存在です。それぞれの覚悟の見せ方があり、懸命な『何か』を背負っていると感じられました。

そして、本当にその当時の日本は追い詰められていて尚、混乱に混乱を重ねていたのだという事が、これだけでも分かります。そしてこの座談会に於いて、それぞれの人々が、少しでも後世の役にたてて欲しいと思っていること、誰か特定の個人の責を求めているわけではないが、しかし、何処に問題のかけ始めや修正すべき点があったのか?を受け手に考えさせる余地を残して話されるのが印象深かったです。

敗戦時のことが気になる方にオススメ致します。

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