ヨルゴス・ランティモス監督 彩プロ
予告編でその不穏さが際立っていた作品なので興味持ちました。ミヒャエル・ハネケ作品のような不穏さでしたので。
厳格な父親が絶対権力を握る家には子供が3人います。無邪気な青年である長男、ちょっと不安定な長女、おとなしい次女、そして夫に従順な妻が暮らすのは庭も広く、プールも完備された素晴らしい家なんですが、高い塀に覆われ、周囲に隣家も無い、外界からは完全に隔離された世界です。しかも父親以外は家から一歩も出られず、学校にも行かずに生活しているのです。テレビも無く、電話も隠され、知らない単語の意味は母親から意味の無いものへと変換されて教え込まれています。そこでは父親が子供を加護し完全なる支配下に置かれている世界が繰り広げられているのですが・・・というのが冒頭です。
予告編以外の情報は出来うる限り遮断して観に行くのが常なんですが、今回はその予告編だけでも不穏な空気にしはいされた映画なのであろう、ということが良く分かる作品でしたが、予想通りに非常に不穏な空気の映画でした・・・そしてかなり役者さんには負荷のかかる演技が求められる(ただし、ギリシャという国ではそれほどでもないかもしれません)作品で脚本だと思いました。初めて見たギリシャ映画で、いつか行って見たい土地です。
ある意味愛情の裏返し的な、そして隔絶された世界がどのように生み出されるのか?あるいはその世界がほころびを見せるのはどんなきっかけであるのか?という細かな部分を見せ付けてくれます。それも非常に皮膚的な手段を用いて。この皮膚的な手段が本当に恐ろしく不穏に見せますし、ある行為がその行為と結びつく感情を完全に除外された形で写されると、あまり使いたくない単語ですが『生理的な嫌悪』を感じさせるに充分な効果があるのだというのを知りました。しかし不穏すぎる・・・単純なホラー描写よりも、個人的にはこういう不穏さ、一見しては分からない心の中の狂気や、抑圧された感情の発露の方がリアルで恐ろしいです。
最後の展開及びクライマックスの切り方に、もう少しカタストロフィを感じたかったんですが、それでも充分凄い映画体験でした。
あと、私は映画にぼかしやモザイクが入ることを全面的に下衆な行為で、隠すことでより猥褻になると思いますし、隠す事が健全という考え方がいやらしい、と感じるのですが(年齢制限というR指定という制度があるなら、ぼかしやモザイクは製作者が入れる以外は必要無いと思います)正直、この映画の場合はぼかされていて良かったのかも知れません。恐怖、感情を湧きあがらせる効果をより、生んでいたと思います。とにかく恐ろしかったですね。
ミヒャエル・ハネケ作品を観たことがあり、尚且つ楽しめた方にオススメ致します。
そういえば、この映画の最後のカタルシス、歯医者である私は結構怖かったです。う~ん、アレはヤですね・・・
[…] ランティモス監督、ギリシャの方です。私が最初に観たのは「籠の中の乙女」(の感想は こちら )ですし、その後の「ロブスター」も好きな作品です。まぁかなり変わった監督さんでも […]