井の頭歯科

「夫たち、妻たち」を見ました

2013年2月16日 (土) 09:21

ウディ・アレン監督      トライスター・ピクチャーズ

ニューヨークに住む大学教授であるゲイブ(ウディ・アレン)は妻ジュディ(ミア・ファロー)と共通の友人夫婦であるジャック(シドニー・ポラック)とサリー(ジュディ・デイヴィス)を夕食に誘っています。ジャックとサリーがやって来たものの、食事に出かける前に急に「私たちは別れる事にした」と告白します。それによって激しく動揺するジュディ。そんな4人が分析医やインタビュアーに答えるような構成で綴られた映画です。

リアルであることを追求するために、あえて手持ちカメラでのブレやカットを綺麗に繋げないことの違和感を残すという手法を取っているのだと感じました。たしかによりリアルさが増す作り方だと思います。もしかしたら全く違う意図があるのかもしれませんが、私個人にはこの映画の撮り方に作り手のリアル志向を、より『これは映画なんだけれど、映画としてだけ捉えて欲しくない、現実に起こりうる話だよ』という意識を感じさせる作りだと感じました。もっとスマートにも出来るけれど、あえてしないんだよ、という意識のことです。

加えて、役者さん方のキャスティングが凄いです。ウディ・アレンはとりあえず置いておくとして、ジャックを演じるシドニー・ポラックのダメさ加減と身なり、そして見た目が非常にリアリティを感じさせます。この人そのものがこういう人なんじゃないのか?と感じさせるリアリティです、無論演じているんでしょうけれど。しかも妻役のジュディ・デイヴィスのエキセントリックというか神経質さは、人柄という説得力を超える何かを感じさせてくるので、もはや演じているのではないんじゃないか?元々こういう傾向のある人なんじゃないか?あるいは演技が上手いというだけでない何かがあったのではないか?と思わせるに充分でした。本当にキャスティングが見事。

ストーリィは、そんなにウディ・アレン監督作品見ているわけではなく、よく知りもしないのに!というお叱りを受けそうですが、まぁ似たような不条理モノ且つ、諦観を感じさせるに充分なストーリィでして、特に秀逸であるとは感じなかったですが、諦観や不条理を感じさせるのは上手いと思いますし、主人公であるウディ・アレンに共感出来る人ならば、結構なカタルシスもあると思います。

人生、という大きなテーマを、恋愛関係という身近なテーマと絡めることでの世界観をつむぎ出すことに成功している作品だと思います。ウディ・アレンがワンパターンであったとしても、だからこそアレン作品が観たいし好きだという人もたくさんいるわけで、その点で成功しているわけで、素晴らしいと思います。

ウディ・アレンの真骨頂である諦観と不条理に耐える男って影があって素敵、な方にオススメ致します。

アテンション・プリーズ!

ネタバレありで感想にまとめてみたくなりました。ただし、あくまで個人的な意見です。これだけたくさんの映画を製作し、監督出来ている人に才能やセンスが無いわけないですが、割合失礼な言い方になってしまいますが、私にも好みがあるわけです。

ウディ・アレンがどのような意図であったのか?は知りようが無いですし(恐らく、直接インタビュー出来たとしても、著作で自らのフィルムを語ったとしても『本当のところ』は吐露しない可能性があるわけです)、受け手である観客が自由に判断し感じることが出来るわけで、製作が終わったところで作者の手を離れ、作品としての評価であるべきだと思います。極悪な犯罪者が描く美しい絵は評価されるべきであって、製作者の人格で作品が判断される必要は無いのではないか?と私は感じているということです。

それなのに、ウディ・アレン監督個人に私はスン・イーさんとミア・ファローのことを知ってしまったので、あまりに衝撃的過ぎて、非常に引いてしまいます。作品と作者の人格は関係ないけど、無理なものは無理、なんですね。衝撃的というか「気持ち悪い」と思ってしまうんです。

私は比較的『諦観』と『不条理』もしくは『理不尽』をアイロニカルに扱った作品に親和性が高いと思います。単純なハッピーエンドでない、その先を見せてくれる作品にシンパシーを感じますし(例えば凄く似ていると感じる「おとなのけんか」ロマン・ポランスキー監督作品【の感想はこちら】は素晴らしいと感じるんです)、好きな映画に「ファーゴ」と「未来世紀ブラジル」と「アメリカン・ビューティー」が入って来るくらいなんですが、しかし、ウディ・アレン監督作品には全然響かないんです。

『なんだかんだ言っても「諦観」というフィルターを通せばかっこよくみえるでしょ?見た目がカッコ悪い私も捨てたモンじゃないんだよ』という自負が感じられるのも不快なんだと思います。ぐるっと1周回ってきたマッチョ志向の裏返しみたいなモノが透けて見えるんです。そのうえゲイブに扮するウディ・アレンがレイン(ジュリエット・ルイス)を諦めることを諦観と感じるか、諦めて1人が1番とか言ってるけど虫が騒ぎだせばまた動き出すならレインが手に負えなかっただけ(自己欺瞞)じゃないか、と感じるかで評価が分かれそうです。

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