内田 樹 、 岡田 斗司夫 著 徳間ポケット
あの岡田さんと、あの内田さんの対談本!かなり読む前から興味をそそられました。こういう対談本はあっという間に読めますし、何より面白いんですが、この2人だと化学反応が起きそうですし、実際非常に面白い対談だと思います。岡田さんの対談本は少し前に読みましたが(「マジメな話し 世紀末・対談」岡田 斗司夫著の感想はこちら)、非常に面白い聞き手であり核心を突いて話しを引き出すのが上手い方、とてもインタビュアー向きな方だと思います。
内田さんはそれこそ非常に面白くて切れる頭の持ち主であり、私も何冊かの本を読んでいますが(中でも精神科医春日 武彦さんとの共著「健全な肉体に狂気は宿る-生きづらさの正体」角川Oneテーマ21は大変面白かったです)、ちょっと自分の考え方の死角を照らしてくれるように感じられます。そして身体と心についてのまたはその関わりへの洞察鋭い方ですのでその辺りも面白いと思います。
割合対照的な2人だと思うのですが、そこを上手く操るのが岡田さんの上手いところだと思うのです、実際とても面白くて、しかもまえがきで岡田さんが語っている部分がある事で、本書の導入として素晴らしいと感じました。
納得し、同意してしまう事多数なんですが、中でも「イワシ化」する社会や「自分の気持ち至上主義」という言葉の考え方、なにより決め台詞のようなインパクトが素晴らしいです。自ら論理的に考えたりしないで、気分がすべてを決定してしまうことの怖さを表していると思います。気分は様々な要素で変わるし変える事が出来るけれど、考えをすすめるには自らが介入し頭を使って考えなければいけないのですが、その事を端的に表せていると思います。
評価と贈与の経済学、というタイトルがおよそ全てを表しているのですが、評価されることの価値、そして贈与という行為の意味を、言葉の意味以上に、今からの(今だけでないところに大きな意味があるのですが!)付加されていくであろう意味を読み取ってお互いに確認しあう部分が新鮮で面白かったです。
ただ、全面的に賛同出来るわけではなく、個人的な感覚としてですが、評価と贈与という行為は今までも行われてきたし、これからも行われてゆくであろうと思います。それがより確かな基準というかルールや慣例になるかどうか?がまだ不明で不安定なだけなのですが、定着するのはなかなかに難しいとも思います、この高度資本主義社会においては。まるでマイケル・サンデル教授の「それをお金で買いますか?–資本主義社会の限界」(の感想はこちら)の話しを未来の視点から見た話しに近いのではないか?と感じました。社会的慣例やルールになれば良いとは思うものの、それには個々人がより賢く、論理的にならなければいけないと思うのですが、マキャヴェッリの「人は見たい現実しか見ない」じゃありませんが感情的に流されやすい生き物だとも思うのです。
それでも、異論を挟みつつも、という事ですが、個人的に贈与の重要性を認識していなくとも、この評価yと贈与という行為は繰り返され連綿と続いてきた行為であることのは充分同意できますし、それこそ今必要な認識であると思います。
そして岡田さんの現状分析や行為の裏いある隠された欲望の読み取り方の凄さ、そしてそれを様々な形でパラフレーズして説明する能力がとても高いと感じました。内田さんの分からない事への追及の仕方、2人の認識が合意に至るまで繰り返される核心を突く質問や例えの出し方で、より深い理解に繋がったと思います。
経済、に興味のある方に、そして理解に至る道の面白さに興味のある方にオススメ致します。
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