プラトン著 藤沢 令夫訳 岩波文庫
ソクラテスという存在、プラトンという弟子、そしてアレクサンドロスの家庭教師の孫弟子アリストテレス、しかしその3人の著作を未だ読んだことが無く、その中で最も挑戦し易そうな作品だったので読んでみました。で、薄い本なのですが、いろいろ注釈が多く、読みやすいにも関わらず時間かかりました。しかし読んでよかったです。
パイドロスという人物とソクラテスがとても現代的(というか普遍的)テーマである「恋」について語り合うという作品です。ただそれだけなのに、その裏にある「弁論術」という、もっと言えば「真実」と「魂」というものについて語った作品です。導入はまさに自然でまるで童話のような自然さです。パイドロスとソクラテスが夏の日差しの中で出会い、その人柄を忍ばせつつ、パイドロスが設問し、それにソクラテスが答えつつ、議論を深めて行きます。
こうした2人による対話方式でのやりとりであるので分かりやすいうえに、なんと言いますか、ソクラテス、という存在そのものが面白く、そしてそのソクラテスが憑依するかのように話すその喩えが、また秀逸でした。もちろん神や魂やそしてその永遠性について、当時と今現在(あるいは個人的な認識でも構わないですけれど)では受け入れ方にかなりの違いがあるのでしょうけれど、それを差し引いても、比喩的表現と考えれば納得できる多神教の中での話しと、私は受け取りました。
「恋」に陥ってしまっているものとの関係について、恋されているものは恋しているものに理解を示すべきではないという論理的弁論術者の意見に対してのソクラテスの「神」の代弁としての反論、理性と人間の関係、2頭の馬の喩えの上手さ、とても面白く読みました。
しかし、中でも1番心に引っかかったのは「文字を学ぶことの弊害」という部分です。これはすさまじく凄い発言だと思いますし、ある意味真理でさえあると納得させられてしまいました。ここでの感想もそうなのですが、なんと言っても文字や言葉をよりよく操る為の、コミュニケーションスキルを訓練する為に始めた部分もあるものですから、結構ショックを受けました。
ソクラテス、に興味のある方にオススメ致します。
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