井の頭歯科

「東京バレエ団創立50周年 祝祭ガラ2014」観に行きました

2014年9月12日 (金) 08:38

東京バレエ団のイメージといえば、男性ダンサーが多い事だと思います。それくらいしか知らないド素人です。見たことがあるのはアニキ・ベジャールの振付作品「ザ・カブキ」とか「ボレロ」とか。有名どころしか見てないですけど、今回はゲストが凄い!シルビィ・ギエムとマニュエル・ルグリ!!!生見られるのは恐らくそうは無いでしょうし、ギエムは来年の引退を発表しましたし、ルグリの年齢考えると(踊りはまだまだ現役でした!けど)そうは無いチャンスですし。

プログラム順の感想ですが、初めて見る「ペトルーシュカ」にウラジミール・マラーホフ。ストラビンスキーの曲に合わせての小品です。人形劇の人形に命を与えられた3つの人形の悲劇的な演目です。マラーホフの演じるペトルーシュカの動きの人形感は凄いものでした。弱弱しい人形が感情があるために陥る悲劇なんですが、ショッキングな結末で余韻があります。
ただ、マラーホフの踊りはあまりよく分からない感じでして、どちらかと言えばキャラクターダンスのように思えました。
気になったのは人形の異形さ、です。鳥の首が長い人形が出てくるのですが、なかなか怖いです。また恋敵を演じるムーア人の民族衣装が強烈な印象でした。前腕の部分が長くて肘から先に切れ目があり、そこから直接腕が出せる、と描写してもなかなか分かりにくいかと思いますが、とても力強いイメージを沸かせるのです。美術も素晴らしかったです。

続いて「スプリング・アンド・フォール」はノイマイヤー振付です。ダンサーはすべて日本人なのですが、物語の無い作品です。予習として、マニュエル・ルグリの「スーパー・バレエ・レッスン」での「スプリング・アンド・フォール」を見ていったのですが、なるほど、と思いました。全体的に女性ダンサーは躍動感と停止した落差を感じさせてくれましたが、男性ダンサーがいま一つ迫る迫力に足りない気がして、男女の差を感じてしまいました。決して悪くないのですが、かえって「スーパー・バレエ・レッスン」を見なかった方が楽しめたのかも知れません。私は当たり前ですが、バレエを踊ったことが無く、習った事もありません。ですが、このマニュエル・ルグリの「スーパー・バレエ・レッスン」を見たことでかなり意識が変わりました。この番組では(ずいぶん昔にNHKで放送された、その当時のエトワールであるルグリが若い後輩に指導する番組です)練習指導場面をそのまま放送するという、バレエを体感したことが無い人でもどのように練習していくのか?を十分に分からせる番組になっています、もちろん基本的にはバレエを踊る人向けのレッスン番組なんでしょうけれど。ものすごく難しい事を演じているのだ、とか、どのような感情をこめているのか?などを初めて知ったと思います。あまりに経験のない事にはなかなか想像が及ばない私でも、レッスン状況を知ることで出来上がっていく(さらに番組の最後には模範演技があり、これが凄い!)作品の意味を知ることが出来ました。また、その指導者であるルグリの言葉のセンス、教え方の上手さには非常に驚かされました。よく言われますが、良い選手が良い指導者であることは稀だと思いますが、ルグリはその両方を備えた稀な人間なんだと実感しました。その指導を受けた2人のダンサーが上手くなっていく(言われてすぐに身体が動く、生徒側の凄さにも驚かされます)のを見ているとやはり指導の凄さを実感します。

また、どうしても直前に見てしまったのが良くなかったのは、いわゆるプロポーションの問題ですね。恐らく、着物が1番似合うのが日本人の体形であるように、バレエの舞台で映えるのは西欧人のプロポーションなんだな、と男性でも女性でも、そう感じました。

続いて「オネーギン」で、ルグリ!です。これもずいぶん前ですが、東京バレエ団で行った「オネーギン 全幕」を観に行った事がありまして(その時の感想はこちら )その時もタチアーナを演じたのは吉岡さんだったのですが、その時と同じような印象を持ちました。いや、もっとはっきり言えばさらに相手との開きを感じてしまいました。まあ、ルグリと踊って見劣りしないというのは相当だと思いますけど。

ルグリはやはり素晴らしく、オネーギンのこの場面は正直みっともなく縋る男を演じるわけですが、その演じ方にもいろいろあるのだな、と感じてしまいました。なんといいますか、粘り気や湿度をあまり感じさせないスマートさがあるように思うのです。だいぶんと私がルグリを気に入っているからこそ、そう感じるのかもしれませんけれど、とにかく生で見られて良かったです。

次に「ラ・バヤデール」の影の場面です。1番有名な場面ですし映画「愛と喝さいの日々」ハーバード・ロス監督のオープニングシーンでも使われています。幻想的なコール・ド・バレエ(群舞と思ってこの言葉を使っています)です。

このバレエくらいコール・ドが主役と思える演目は無いと思います。こういうコール・ド・バレエはもしかすると日本人に向いたものかもしれません。で、気になったのがアラベスクというのでしょうか?片足を上げて片足で立ち、背中を反らせる姿勢をとるのですが、これが綺麗。素晴らしく幻想的です。が、ここで気になったのが振付です、なんとなく私が覚えている振付では上げる足が交互に左右で変わっていったと記憶しているのですが、何故かずっと同じ足を上げるのです。出来れば交互に違った足を上げる方がより美しく見えると思うのですが。少し残念でした。が、それも些細なもので、非常に美しいコール・ド・バレエだったと思います。

で、ソリストの3人が踊った後に出てきたのが上野水香さんの演じるニキヤ。これがソリストの方々が霞むほどの華がありました。こういうカリスマ性は持って生まれたものなのかもしれませんが、登場するだけで場の雰囲気を変えるすさまじさがありました。そういう意味では、ルグリが登場する場面やシーンを分かってしまっていると、どうしてもこういう新鮮な驚きは少なくなっていくものなのでしょうけれど、上野水香さんの登場にはハッとさせられました。そのうえ、素晴らしく日本人離れしたプロポーションと身体の柔らかさ、足の甲、脛までのラインの美しさには前に見た時よりもさらに磨きがかかったように感じました。以前(相当前ですがプティ振付の「シャブリエ・ダンス」 )見た時とはまた違った、さらに進化した上野水香だと思います。昔から身体性には恵まれていましたが、「ノートルダム・ド・パリ」のエスメラルダを踊ったのを観て少しがっかりしてから、あまり見てなかったのですが、今回のニキヤを見て全く印象が変わりました。本当に素晴らしかったです。東京バレエ団に移籍して良かったのか、どうなのか、私には分からないですけれど、少なくともこの公演を見に来て1番新鮮な驚きだったのは間違いなく上野水香さんだったと私には感じられました。ルグリも後述するギエムももちろん素晴らしいダンサーですが、驚く事は無かった(知っているからこそ!)のですが、上野水香さんはその想像をはるかに超えている、という事で新鮮な驚きがあったのだと思います、知らない事の良い面を感じさせられました。
そして最後が来年引退を表明したシルヴィ・ギエムの「ボレロ」です。
私は生で「ボレロ」を見たことがあるのが首藤康之さんだけなのですが、そんな私でも映像作品ではその他の方の作品を見ています。なんといってもジョルジュ・ドンのボレロなんでしょうけれど、それ以外の方も個性を感じさせるダンサーが踊る(アニキ ベジャールのお目にかなったダンサーでないと踊れない作品ですし・・・そう、もうベジャールはいないのです・・・)作品ですし、好みもあるでしょうけれど、ジョルジュ・ドンと双璧をなすのはシルヴィ・ギエムしかいないでしょう(個人的には凄い荒い映像で見たマリシア・ハイデの「ボレロ」も凄いと思ってます)。
シルヴィ・ギエムは日本を好み、日本もシルヴィ・ギエムを好んだのだ、と感じさせるくらいに客席の熱気はすさまじいものがありました。世界的に評価の高いダンサーですし、もちろん非の打ち所のない踊りです。が、周囲の観客のあまりにすさまじい賞賛に驚きを隠せなかったです。何と言いますか、圧倒的な支持だったので、ちょっと熱気にあてられる感じがありました。なんでか私はリチャード・ブローディガンを想い出してました。

「ボレロ」は素晴らしかったのですが、ひとつだけ不満もあって、演奏がいまひとつでした・・・特にボレロってある意味ソロの連続。そのソリストがミスタッチされると、そちらが気になって集中できなくなってしまいます。もう少し配慮して欲しかったです、プロなんですから。ギエムだってびっくりしたと思います。テンションが上がってクレッシェンドで終わる曲、踊るダンスですし、最高に盛り上がっての幕となりました、余韻に浸りつつ家路につきました。

上野水香さん、もっと観に行こうと思いました、しかし、いい写真です。

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