ジェイソン・ライトマン監督 ドリームワークス
リストラを社員に宣告するのを肩代わりする、という企業に勤めるライアンは1年のうち300日以上を出張に費やします。そして様々な場所で人に解雇を告げる仕事をし、時々は講演も行います。その講演の内容は「人生の荷物は軽い方が良い」です。ですから何事につけてもクール、そしてマイレージに換算できる物事にだけ、こだわりを見せるいわゆる独身貴族です。そんなライアンが似たような価値観を持つ女性アレックスと知り合い、仕事では正反対の意見の持ち主で大学を出たばかりの理論だけを振りかざす小娘ナタリーと同行の出張をする羽目になり・・・というのが冒頭です。
全米各地を転々とするライアンのスーツケースの纏め方ひとつ写すだけで、いかに洗練された旅行者なのかが良く分かるなかなか素敵な描写なのですが、映像的にもとても綺麗ですし、空から写した都市を見せるやり方もかなり心掴まれました。そういったセンスは上手いですし、ジョージ・クルーにーはさすがの演技を見せてくれます。この人の演技は好き嫌いはあるでしょうけれど、やはり最初に見た「ER(緊急救命室)」のダグラスは印象的でしたし、「オー・ブラザー」と「バーン・アフター・リーディング」のコーエン監督作の演技(両極端なキャラクターでしたが、どちらも良かった!)も良かったですが、今回は洩れ伝わってくるご本人の私生活にかなり近いキャラクターのように感じましたし、表情の演技力が非常に重要な構成になっていると私は思うのでキャスティングとしてはベスト!と思いました。また、小娘役(笑)と言いますか、理論派で小生意気でなお愛らしいキャラクターのナタリー役のアナ・ケンドリックは非常に上手いと思いました。何でもかんでも早口で喋りまくし立てるその口調は印象的であり、なお難しい演技が求められると思いますし、かなり2面性あるキャラクターを演じきっていたと感じました。とある事件後のナタリーの、ただ歩く後姿は結構印象的ですし、その足取りを重苦しくさせ過ぎない部分の演出も、個人的には好感触です。
出張を経験している方に、家族がいる人、いない人に、オススメ致します。
アテンション・プリーズ!ここからネタバレあり、です。
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結局最後をどう捉える?なんですが。
私は最後の行き先を示す掲示板の前で佇んでいたライアンの表情に、今まで信じていたものが感情的に自発的に崩れ、しかし以前の『身軽こそすべて』に戻ったのではなく、諦観でもなく、優しさを内に秘め、限界や己を受け入れた後の覚悟の強さを滲ませつつ優しさがベースに感じられる表情、かなり難しい演技だと思います。それに相まってトランク(私は仕事の相棒、と認識しました)から手を離すシーン、ちょっと仕事に、空に戻ったとは捉えにくいのではないか?と感じました。これだけの変化を経た後であっても、昔あれだけ入れ込んだ「空」という世界の美しさは変わらない、と言う風に感じました。
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