フィリップ・ド・ブロカ監督 ユナイテッド・アーティスツ
友人にオススメして頂きました!いつものごとく、そのチョイスに痺れます。正直全然知らなかった監督です。ウィキ情報ですとトリュフォーの助監督を務めていたとか。後から知ったんですが、納得してしまいました。
第1次大戦末期のフランスのとある城塞都市から、ドイツ軍が撤退を開始しています。しかし、ただ撤退するのではなく、街を吹き飛ばすほどの爆弾を仕掛け、イギリス軍が街に入った後に爆発させようと準備しています。その断片的な情報を掴んだイギリス軍は、フランス語が出来るというだけで抜擢した伝書鳩通信兵プランピック二等兵(アラン・ベイツ)に斥候を命じますが・・・というのが冒頭です。
とてもアイロニーに満ちた作品ですし、ただ上辺だけ楽しむ事も出来る作品だと思いますが、それだけでなく、非常に練られた脚本だと感じました。また画面に映る様々なモノに趣向を凝らし、ちょっと現実離れした、ファンタジックに見えてリアルな部分もあり、不思議な感覚に陥ります。
キャラクターとその衣装がとても印象的で、演じる役者さんの演技(とても繕ったというか、大仰な感じ)も相まってリアルが溶解していくような不思議な感覚に陥ります。とても中島らも的な、呪術的な世界観を味わえるのです。特にジュヌヴィエーヴ・ビュジョルドが演じるコクリコがとてもエキセントリックで素敵です。どこかで見たことある感じがするんですが、何処で見たのか思い出せない・・・似ている人なのか?名前は全然覚えてないので・・・
で、そのサイケデリックとも言えるかのような世界観を主目的に作られているわけではいのが秀逸でして、ちゃんと批判精神を、風刺を感じさせるんです。例えばフランス映画でサイケデリックでというと私には「ワンダー・ウォール」(ジョー・マソッド監督、ジェーン・バーキン主演、音楽は大好きなジョージ・ハリスン!)になってしまうんですが、あの不思議な感覚よりも、もっとメタ構造になっていて、不思議、綺麗というだけでない独特のデカダンスを感じます。何処か背徳感があり、それでいて現実が遠のくかのような不思議な感覚、でも決してグロテスクでもないんです。これがグロテスクであれば多分ホドルスキーみたいな作品になると思うんですが、グロテスクにしない絵柄です。
でもグロテスクな部分が無いわけではなく、映画の最後はビターというかある種の人間のグロテスクを表していると思います。
サイケデリックな作品が好きな方、デカダンスに興味のある方にオススメ致します。
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