三池崇史監督 ワーナーブラザーズ
「ハクソー・リッジ」を最近見たのですが、その事から先輩にオススメしてもらったのがこの「藁の楯」です。まだハクソー・リッジとの繋がりが不明なんですが、なかなか面白い思考実験のような映画でした。どういうモチベーションで、いや、もしかしたら複雑な意図があるのかも知れませんが、まだその辺が分からず・・・でもなかなか凄い映画でした。まだ私にはしっくりと来てないので、その先輩といろいろ話してみたいです。
三池崇史監督、よく考えたら初めて見る事になりました。
幼女殺害で服役、仮釈放中にさらなる幼女殺害事件を起こした清丸(藤原竜也)。殺害された子どもの祖父である蜷川(山崎努)は経団連の会長などを歴任された大富豪であった事から、清丸殺害に10億円という懸賞金を賭け、さらに広く周知させるために新聞や広告やネットにまで大々的に宣伝させます、普通は法に触れる行為なのですが、ルールを破った人間に報酬という形でお金を渡して辞職させるという方法で、です。清丸は博多で警察に出頭しますが、その清丸を博多から警視庁に護送するために、spの銘苅(大沢たかお)、同じくspの白岩(松嶋菜々子)、捜査一課から奥村(岸谷五朗)、神箸(永山絢斗)がその任務に就くのですが・・・というのが冒頭です。
役者さんの気に入ったのは永山さんです!チンピラ感が、割合瞬間的に熱くなるのに、仕事は冷静、おまけに腕が経ち、詫びる事が出来るというキャラクターを見事に演じていると感じました。
見終わった直後に考えたのは「理不尽を飲み込む事」と「法治国家で生活する事」の2つでした。正直、ご都合主義的な展開も否めませんし、感情と理性の戦いを見せたいのであろうと思いましたが、それをアクション映画で魅せるのはなかなか難しいのではないか?と感じてしまいました。でも、思考実験として、非常に面白いと思います。
私は報酬に負けて、社会の法を破って、ある一般人の(確かにヒドイ男ですが、それを裁くのが司法だと思うのです)命の危険をいたずらに増加させた新聞やネットの規制を破って辞職した人々の罪が結構重いのではないか?と思います。ここが最初のポイントなんですが、割合あっさりとした描写でした。まぁ設定という事なんだとは思いますが。
思考実験が好きな方にオススメ致します。
アテンション・プリーズ!
今回はネタバレ有の感想です。いろいろとツッコミどころがあるのですが、それは映画をこうしたい!という強い意志の結果ではないか?とも思わされました。
既にこの映画を見た方に読んでいただけたらと思います。未見の方はネタバレがある事をご了承下さい。
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とんでもなく救いどころの無い人間=清丸を法的に守る側に立つ主人公とその仲間は、様々なゆさぶりをかけられます。5人の仲間の中にも裏切り者がいるのではないか?という猜疑心も掻き立てられます。さらに守るに値しないのではないか?という人から危害を加えられた事がある、というような身に覚えがある人間が、それこそ救いどころがないような人間を守る理由があるのか?を何度も何度も問いかけてきます。
感情的にはなるほど、自ら手を下したくなる人が居てもオカシクナイようなふるまいを続ける清丸に同情的な人は皆無に近いと思います。
が、ここは理不尽な出来事が起こりうる現実社会で、日本国という法治国家である事を考えると、おのずと結論が出てくるような気がします。
主人公の行動は、理性的に映りますし、なによりある嘘を自身に信じ込ませる事で生活を成り立たせている事からも分かりますが、感情を抑える論理があります。
感情の発露、スッキリする事を目的としているとなかなか窮屈な世界ではありますが、それも現実だと思うのです。
国家権力の下にある警察組織の一員であれば、職務を全うする事は仕方ない事ですし、法治国家であるのですから、裁判を経ない暴行は処罰の対象になります。
複雑に感じたのは清丸が服役する事になった発端の事件の被害者の父親(まぁ非常にご都合主義的に出会うんですけれどね・・・)を見て、白岩が言う「この人こそ清丸に危害を加えるに値する」という趣旨の発言をすることです。確かにその通りなんですが、これは報復権という問題を孕んでいると思います。法治国家であるならば、個人の復讐という感情発露よりも、法の基による平等な統治の方が重要であると理解されています。法の下の平等を得るためにはある種の理不尽を、出口のない厄介な感情を抱えなければならなくなります。
被害者が報復する自由は国家に奪われている、と考える事も出来ますね。
とは言え、もし、このような私刑を認める事は、かなり危険な事です。裁判という中立性を認めないことになりますし、誤認をどちらがどのように証明するのか?など問題が大きすぎますよね。ある種の自由を捨てても、さらなる自由が脅かされるよりは、私は今の法治国家を維持したいを思います。
個人的には、理不尽な事がたくさん起こる現実世界では仕方のないことだとも思います、その時、その当事者になってみなければ本当にどういう感情が湧いてくるか分かりませんけれど。
私が少し冷めてしまったのは、割合唸る人が多かった点ですね、演出として大きい感じがしました。漫画的とも言えるような気がしますけど。でも、思考実験として、加害者がいて、被害者が近くにいて、また懸賞金をかけた場合、およそすべての人間から危害を加えられる可能性がある時、どのような行動を起こすのか?を見せたかったんだと感じました。そういう意味では仕方ないのかも。
さて、タクシー運転手は何故消えてしまったんでしょうか?また検問が杜撰過ぎるのもちょっと・・・
あと、敏腕的な扱いを受けていますけど、白岩さんはちょっと油断し過ぎだと思います、流石に2回も逃げられるのは腰ひもまでつけているのに・・・
また、白岩が撃たれる理由が良く分からなかったです、実母の報道の差し込み方は上手いとは思うんですが、それによって泣き崩れるっていうのがまた清丸の分からない部分ですね。銘苅も車を止める必要なんてなかったと思いますけどね・・・
10億円というのがリアルな数字だも思いますけど、その辺が最も上手いと感じた部分です。
最期、割合簡単に山崎努が懸賞金を取り下げてしまったのが、少々納得出来ませんでした。それにしても、藤原竜也さん、最近の映画でも確か犯罪者役を演じていたと思うのですが、こんな顔の整っている人のに、それなりの説得力があるのが凄いです。
なんだか「新幹線大爆破」が見たくなってきました。
[…] 詳しい感想は こちら )と言う作品がありましたが、ある意味似ていると思います。 […]