大九 明子監督 ファントムフィルム
「万引き家族」の松岡茉優さんの演技がなかなか凄くて、「桐島部活やめるってよ」の時とは見た目もあまりに違い過ぎて、同じ人とは思えなかったという意味でびっくりしたので、別の作品を観てみたくなり、手に取りました。で、またまた全然違う人に見える、という驚愕の役者さんでした・・・この方はどういう演技指導を受けてきた方なんでしょうかね?出てる作品ごとに全然違う人に見えるってかなり凄い事だと思います、例えば今作には片桐はいりさんが出演されていますが、片桐さんだってある程度の片桐はいり性とも言うべきベクトルがあると思いますが、松岡さんにはそれが感じられないのに、物凄くリアルに毎回そういう人に見えます、不思議ですし、上手いです。そんな松岡さんの主演作です。
OLのヨシカは20代、中学生の頃の初恋の相手を未だに大好きで妄想として心の糧にしています。会社での同僚のクルミとは仲が良いですが、基本的に人付き合いが苦手ですけれど、会社を出てしまえば、行きつけの喫茶店の店員、コンビニのユニークな店員、バスでいつも同席するおばちゃん、釣りに興じるおじさん等話し相手には困っていない様子です。そんなヨシカに突然興味を示す相手が出現して・・・というのが冒頭です。
脳内で何度も何度も中学生の頃に好きだった人との思い出を脳内再生しているので、現実との距離感が掴めていない、非常にエキセントリックな役なんですが、しかし女性でもあるので(男性のそういう傾向の方はさらに現実との距離が測れない 傾向 があると思います、客観性の問題でしょうか・・・)身だしなみにある一定程度の気配りも感じられます。回想シーンでの学生の頃の感じ(学生服であっても、髪型等そういった雰囲気が分かります)の他者からの視線の拒絶ではなく、周囲に溶け込めるくらいの一般性を手に入れている感じがします。それでも、かなりエキセントリックです・・・
視野見、という造語も素晴らしいですし、私は世間に溶け込めてますよ、的な感覚の何処か穴があったりする部分のリアリティは凄く上手い演出だと思います。会話のタイミングの妙がイイですし、キャラクターが実際に生きているように見えるという意味で、演者の松岡さんの凄さだと思います。
ただ、ある事から、積極的に行動を起こすようになってからの、かなりマッドな手段、さらにこの主人公の行きつく先、映画の結末には、少々違和感を覚えました。物語の中盤の、今までの認識が変化するポイントの演出は素晴らしいのですが、まぁ原作がそういう話しなんだと思いますけれど、着地に結構無理を感じてしまいました。原作は綿矢りさ、凄く有名な作家さんですけれど、まだ読んだことないなぁ。
これだけ作り込んだキャラクターの、最後の着地、そしてこのタイトルの、誰が、誰に、言っているのか?が、私にはよく分からなかったです。
それでも久しぶりにラブコメディ映画を見たわけですが、なかなか楽しかったです、しかし本当に松岡茉優さん、毎回別人に見えるってどういう人なんだろう?
松岡茉優という女優が気になる方、コメディ作品が好きな方、内向的な傾向の方にオススメ致します。
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