高橋 ヨシキ著 スモール出版
高橋ヨシキさんはアートディレクターで映画ライターでデザイナーという肩書ですが、とても理知的な方で、文字通りに受け止めると眉を顰めそうですが、サタニストでもあります。とは言え私もこの本を読むまではサタニストという言葉の定義が理解出来ていませんでした。無知である事は恥ずべき事でもありますし、実際害も多いと思います。文字が読めても、文脈が読めない、ユーモアのセンスが理解されない事も多くありますし、尊敬出来る作家・金井美恵子を評して言われる「悪口・辛辣」という言葉も、私からするとユーモアを交えた上での、辛辣に聞こえる、しかし正確に表そうとしているだけ、のような気がします。悪口を言いたいのではなく、正確さ、言葉の表記であったり、定義に沿うという非常に重要で必要な事柄に厳しいだけだと思うのです。文脈を読もうと思えば理解出来ると思うのですが、文字を読む練習はしても文脈を読む習慣(特に読書ですね)が無くなりつつあるので、自戒も込めて気をつけようと思います。特にテレビのニュースでは、まさに文脈が発生しない状態でしか接する事が出来ませんから。
サタニストとは(あくまで本書を読んだ私の個人的解釈です)、徹底的な個人主義的な思考を持って、来世やスピリチュアル等の戯言を排し、自らを鏡として現世をより自由に楽しく生きる為の哲学、自己宗教という事かと思いました。そして、これはとても理知的で論理的で整合性があり、不条理な現世を生きる上でとても重要かつ必要な視点ではないか?と感じました。なんかすごくぐるっと回って、リチャード・ドーキンス(「利己的な遺伝子」とか「神は妄想である」とか9.11以降はかなり強い口調で「宗教」を批判するようになった生物学者ですね)の思想に近い気がします。ドーキンスは宗教を信じるには値しないし危険な妄想、と断じていますが、多分サタニストはニヤっと笑いながら、その滑稽さを指し示したり、矛盾を指摘したりするんでしょうね。
そんなサタニストである高橋ヨシキさんが回答する人生相談です。まぁいつも、人生相談をいう単語を聞くと、PUFFYの曲の「夢のために」の歌詞である「人生相談は子供だまし」というフレーズを思い出してしまいます。しかし、そうでない人生相談も時にあるような気がします。それは頭ごなしでなく、自ら考える道筋を示すようなモノであれば、理解出来るように感じます。そして高橋ヨシキさんの回答はなかなかに考えさせるのです。まぁ、そうは言っても高橋ヨシキさんくらい考えを徹底させる方の回答ですと、ある一定確立で同じような場所に立たされることにはなってしまうのですが。
中でも私が面白かった問いかけと回答ですが、回答は書籍を読んでいただくとして(とても哲学的な回答だと思いますし、ユーモアのセンスも良いので笑えます!)、列記します。
『夫との価値観の違いに悩まされています』
『社会をサバイブする為の心構えを教えてください』
『友達が「自分は異星人だ」と思い込んでいます』
『絶対にいないと思っているのに幽霊が怖いんです』
『事故物件ってどう思いますか?』
この回答は本当に膝を叩き、そして胸がすきました。考え方そのものに、その哲学に、真面目さを感じずにはいられませんでした。
チャーチ・オブ・サタン創立者のアントン・サンダー・ラヴェイ師の著作「サタニック・バイブル」をとても読んでみたくなりました。
自己を豊かにする学問、文化、音楽、美術、文学、哲学に今後も、残り少ないであろう時間を使って行きたいです。
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