チャン・フン監督 クロックワークス
ソン・ガンホが主演していますし(ポスターの笑顔が眩しいくらい印象的ですね!)、予告編を見て気になったので見ました。2018年見逃し後追い作品その3です。
1980年、ソウル。タクシー運転手を生業とするキム(ソン・ガンホ)は父子家庭です。娘を溺愛しているのですが、生活が苦しく・・・そこに10万ウォン(がいくらくらいなのか?全然分からないんですけど)の支払いをする代わりに光州まで行ってくれないか?という外国人客を乗せる事になり・・・というのが冒頭です。
全く不勉強ながら、光州事件というのをこの映画で知りました・・・韓国が軍事独裁政権時代が結構最近まであった、という事実もビックリですけど、80年って私10歳です、全然知らなかったです・・・学校でも全然話題にならなかったですね、まだ小学生だから仕方ないのかもですけど。
とてもユーモラスは始まり方をする映画なんで気を抜いていたら、かなりシビアな展開が待っています。そして主演のソン・ガンホの演技は本当に素晴らしいです。この人の出てる映画ですと「殺人の追憶」が最も好みでしたけれど、この映画も素晴らしいですね。
韓国映画は独特の黒味があると感じています、文字通り『黒色』に交じりっけなしの、とても深い黒さを感じます。なんと言いますか、何処まで逃げたとしても世界の中にこの黒さがある、という感じの黒色で、恐怖さえ覚えます。
また市井の人が活躍する映画、バディムービーとしても傑作ですし、観て良かったです。
ある男が勇気を振り絞って、Uターンするシーン、すっごく良かったと思います。
日本における統治のあり方ってすごく変わっていると思います。実力者が実際の実力や暴力や兵器を使って、キングとして統治するのと違って、天皇という政治権力争いから降りた代わりに任命するだけの権威に認めてもらう、という統治だと、ざっくり考えていますけど、もし、明治維新が革命なのだとして(もちろん全然違う見方もあると思いますけれど、だとすると革命的権力の移譲って日本国にあったのか?不勉強ながら知りません・・・)、その1回くらいしか、下からの革命って行われていないんじゃないか?という疑問を覚えました。少なくとも、ヨーロッパではいくつかの革命がありますし、聖俗を分けての統治がなされている(いた過去)と思いますけど、詳しくはどうなんでしょうね、ちょっと調べてみたくなりました。失敗した例だと、いわゆる大塩平八郎の乱とかいろいろありそうですね。で、光州事件はそんな事に考えを巡らせるかのような事件です。ちょっと調べただけでも、かなり膨大な資料がネットにはありまして、あくまで概要での理解ですと、こんな事考えてしまいました。
閑話休題
でも、映画として大変面白く出来上がっています。政治的にはノンポリシーというか生活が苦しいのでやや政権よりのタクシー運転手、思想的にどうか?は分からないがルポタージュに命を懸ける外国人記者、アカと侮蔑されているデモを行う大学生、蹂躙された地方都市で生活する市民、様々な、それぞれの見方が出来ますし、もちろん蜂起し混乱に至った都市機能を回復しなければならない軍人も出てきます。たくさんの人が争い、武力衝突が起きてしまって、エスカレーションする様は大変恐ろしいものがあります。
とても小さなタクシーを運転しているソン・ガンホが、笑い、泣き、想い、行動を起こす事に、車を運転する際の、アクセルを踏み、ブレーキをかけ、シフトチェンジする様が、オーバーラップして躍動感にリズムを与えているのが印象的でした。彼は車の、タクシーの中と外で結構行動規範が変わっているのも面白かったですし、だからこそ、タクシーの中で彼が変容するときの重みを感じてしまいました。
光州事件が気になる方にオススメ致します。
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