渡辺 歩監督 東宝アニメーション
まず、原作既読です。そして、五十嵐大介さんの漫画の中では、個人的な評価は、普通な作品、と思っています。おそらくほぼすべての既刊されている漫画単行本については目を通しています。その中でも、かなり作品内のリアリティラインがぶれる作品だと思います。個人的傑作は「魔女」だと思いますし、その中の1つの短編を題材にした映画なら、もっと素晴らしい作品になっていたと思います。
ただ、五十嵐さんの絵柄(私は個人的には、宮崎駿先生の直系と、漫画では、感じております)、この余白を基本的には嫌うかのような書き込みの多さと豊かさに満ちた、この絵柄こそ、五十嵐さんの最も特徴的な部分で、自然に対する憧れと畏怖が入り混じった描写が最高だと思うので、映画化していただけて、大変喜ばしく、嬉しく感じました。その絵が動いている、それも自然に感じられる、という1点において、この映画は素晴らしいと思います。
しかし、ストーリィは大変飲み込みにくい作品であるのも事実だと思います。果たして海と空をどう捉えたら良いのか?は考えても分からないです。けれど、まるで曼荼羅のような映像体験としての素晴らしさ、トリッピーな体験としての、サイケデリックをさらに進めた、言い方は少し雑であまり使いたくない単語ではありますが、スピリチュアル 的 な映画としては、かなり突出していると思います。ただ、私はあまりスピリチュアルなモノを評価したくない感覚があります。辞書によると、霊的な、魂、とかそう訳されていますが、使っている人の感覚を考えると、いわゆるニューエイジ的な神秘主義的なモノと考えているような気がします。まぁ名探偵ホームズの原作者で有名なコナン・ドイル先生を考えて頂けると、分かり易いと思います。
冒頭の主人公視点でのZ軸に進んでいくアニメーションもあまり見た事がなかったシークエンスで良かったです。
ただ、少々話しを飛ばしていますし、本当は5巻完結漫画を2時間でやるのは無理があると思いますし、デデという大変特徴的なキャラクターを非常に都合良く使っている、という点も気にはなりますけれど。
隕石の意味、海と空の存在の意味、ラストの意味、そういう事を考えたらだめで、そのまま受け取れる人には最高の映画(映像?)体験になろうかと思います。
精密でそしてグロテスクで、そして美しくてどこか儚いモノを描かせたら画力で言えば日本のトップクラスの絵を、動かしてくれているだけで感謝すべきなのかもしれません。
自然、に興味のある方、原作を読んでいる方にオススメ致します。
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