前作の「I, Daniel Blake」が大変面白かったので、劇場に駆けつけました。
しかし、邦題が、まったく、1mmも、全然、共感出来ません。というか、ヒドイタイトルだと思います。いくらなんでも改変し過ぎだと思います。こういう邦題を決める人の気持ちが理解出来ません・・・原題の「Sorry We Missed You」には、いくつかの意味が、この映画の中で気づかされますが、いくらなんでも、な邦題です、それをここにも書きたくないので、今回は原題のみで表記したいと思います。観たいという人の気持ちを削ぐ感じになっているとさえ思います。
Sorry We Missed Youというのは不在者通知表の事なんですね、知らなかったです。
リッキーは元建設業関係だが、職を転々としています。妻アビーは在宅訪問介護士の仕事をしていてとてもタイトでハードなスケジュールの毎日です。高校生の息子セブ、小学生の娘ライザと共に暮らしています。金融危機によって住宅ローンを反故にされ、借家で暮らす事に嫌気がさし、心機一転、生活保護すれすれからの脱却を願って宅配ドライバーの面接に来ているのですが・・・というのが冒頭です。
前作「私は、ダニエル・ブレイク」は疑似家族ものを下地に、複雑怪奇な官僚的、カフカ的な行政に対する映画でしたが、今作は全く違って、前作にはまだ残っていたユーモアさえ、ほぼありません。大変にシビアでヘヴィーなイギリスの生活、その中でもかなり厳しい部分を、浮き彫りにしています。 社会の複雑さ、簡単に、何がダメ、悪い、と言えなくなった部分に光を当てている映画だと思います。
最初に企業側は、アクシデントが起こった時の責任を、フランチャイズのドライバー契約、という形で、避けてきます、リスクヘッジ的な企業側からすれば合理的判断でしょうけれど、利益の追求に個人の尊厳が剥奪されるほどのシビアな部分がある、というのは知らなかったです。今年発売されたゲーム、だけどゲームというよりはゲームの形をとったエンターテイメント作品の「Death Stranding」も配達業を扱っていて、映画の公式HPに監督である小島秀夫もコメントを出していて、とてもタイムリーな映画なんだと思います。
とてもリアルでフェアな映画でもあって、会社側の窓口であるマロニーの心情を吐露する場面では、まるで内在的な、悪の凡庸さ的な、ハンナ・アーレント的な、事を指摘しているようにも見えます。
追い詰められるリッキーに、誰でもが多少は同情的にならざるを得ない部分があり、それこそが、ある種の普遍性だと思うのですが、まるで人が使い捨てられていく感覚を伴い、大変鑑賞後はヘヴィーになります。
ラストの、衝撃度は今年1番かも。
ただ、現代日本だと、私の肌感覚ではもっと進んでいる気がします。主人公リッキーのような人に家族がいる事が、既に少々古く感じる部分、あります。おそらく同じような境遇だと、そもそも婚姻関係を結んでいないし、結婚していたとしても、子供がいないのではないか?と思うのです。
ただ、今観るべき作品であるのは間違いない。
働いている人に、配達業から荷物を受け取った事がある方すべてに、オススメ致します。
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