ドゥニ・ヴィルヌーブ監督 ポニーキャニオン
プリズナーと言えば、私にとっては、イギリスのTVドラマ「プリズナー№6」なんですけれど、個人的にはこのTVドラマは本当に素晴らしい作品だと思いますが、全く違った意味で、完全に、「神さま」によって、自らが、プリズナーになっている人の話し、と理解しました。私は神が人間を作ったのではなく、人間が生きている間に経験する不条理を乗り越える手段として、人間が神さまを作った、と理解する者です。そういう話しが好きな人は苫米地さんの著作「なぜ、脳は神を創ったのか?」(の感想は こちら )やリチャード・ドーキンスの「神は妄想である」が面白いと思います。
やっぱりドゥニ・ヴィルヌーブ監督の映画は一筋縄ではいかない作品で、その意味を探りたい、知りたい、と思う人には響く作品ですし、今回も宗教性の高い作品なんですけれど、そういう意味でも、とりわけ解釈が難しい、無神論者の私からすると、そういう風に見えますよね?と穿ったように考えようとすればどこまでもできますよ、という部分な所が、鼻につく感覚になりました・・・今までには「灼熱の魂」(の感想は こちら )「メッセージ」(の感想は こちら )「ブレードランナー2049」(の感想は こちら )と3作ほど見てます。特に欺瞞を感じたのは、評価の高い「灼熱の魂」なんですけれどね・・・
現代アメリカ(スマートフォンが普及する前くらい)の田舎町。感謝祭を祝うケラー家の父ドーヴァー(ヒュー・ジャックマン)家族とフランクリン家の2つの家族のそれぞれの6歳くらいの娘2人が突然いなくなってしまいます・・・警察に届け、容疑者まで逮捕に至りますが、証拠が見つかりません・・・敬虔なキリスト教徒であり、何事にも備えようとしてきたドーヴァーは・・・というのが冒頭です。
まず、脚本うんぬんというよりも、ロキ刑事を演じたジェイク・ギレンホールと、暴走する父ヒュー・ジャックマンの演技合戦が素晴らしいです。まさに名優と呼んで差し支えない2人の演技だけで、十分元が取れる映画だと思います。
音楽も、大変効果的でしたし、必要な所で、必要な音量で流れるのが良かった。
で、宗教性を抜いたら成り立たない内容だと思います、が、もちろんサスペンス映画としても十分に成り立っていますし、そこはエンターテイメント性とも言えます。犯人は誰なのか?というフックも強いですし、ミステリ要素もある。でも、すべてが宗教性に収斂していくのが、ちょっとやり過ぎ、作り込み過ぎ、波乱万丈過ぎ、という点で、「灼熱の魂」と同じなんですね・・・
ポール・ダノが観れたのも、個人的には嬉しかった。
宗教性について考えてみたい方に、オススメ致します。
アテンション・プリーズ!
ここからネタバレありの感想になります。未見の方はご遠慮ください。
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神を信仰する、という大義名分を手に入れた人は、神を信仰していない、いや誤解を恐れずに言及するなら、すべての他者へいくらでも残忍になれる典型的な話しですね・・・気分が暗くなります。
ドーヴァーの憤りは理解出来ますけれど、いくら何でも盲目的過ぎる・・・しかし、この盲目的な存在を作り上げるのが、宗教の特性とも言えます。神、という存在証明出来ない「上位」存在を通して、よりよい生活や社会を作り上げる為にしているのに、その事で結果、盲目的な人の集団になりかねない危険性を孕んでいると思うのです。
すべてに対して対処したい、安寧を得たいというドーヴァー、とてもプロテスタント的な感じがします。
ロキ刑事はあくまで無神論的。そこが対照的。
で、ストーリィなんですけれど、なんか、都合良い相手(つまり犯人)を探したら、こうなった、的な存在過ぎるんですよね、老婆の存在と、その旦那・・・これは、脚本段階でこういう展開を見せたいからそれに合った人物を作為的に意識的に作った、と観客に思われちゃダメだと思います。しかも、たまたまペドの神父というまた、ダメにダメを重ねた相手の地下室で遺体として見つかる老婆の旦那ってどんだけこの土地は歪んでるんだよ・・・いくらなんでも、重なり過ぎ、偶然という演出・・・
だから、恐らく1番不可解なのは、迷路の自殺しちゃう人。多分この人も誘拐されたトラウマから、実際に人を殺しているわけではないが、同じ被害者の家まで侵入してまでいろいろ知りたいし、模倣しているんでしょう。けど、そんなトラウマ抱えたヤツがのうのうと、しかも近所で暮らしてるってそんな偶然あるのだろうか?????この人はそれなりに迷惑な人で、被疑者かも知れないが、犯罪も犯してはいるが、自殺する必要あったのだろうか?ココがシナリオとして弱い気がします。
でも、個人的に思う1番のゲスは、ドーヴァーでも黒幕老婆でもなく、もちろんその旦那でもなくて、一緒に誘拐されたフランクリン家のヨメです・・・ 「ケラーには手を貸さない、でもやらせておくのよ」 こんなヒドイ発言、よく旦那に言えるよな・・・
自らは手を下さないが、その果実は手に入れたい。うん、私はこういう人物こそが1番恐ろしいと思います、分かっていて、決して自らその責務を負うのではなく、都合の良い所だけを欲する人物。こういうのを下衆と言うのだと思います。。
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