五百旗頭幸男 砂沢智史 監督 AYAプロ
富山県、全国No.1の自民党支持者が多い保守王国。その富山県の地方テレビ局であるチューリップテレビが製作したドキュメンタリー映画です。
自民党系市議の政務活動費を調べた事から発生する齟齬に対して、ちゅーりっぷテレビの記者が鋭く、その齟齬を聞いて行きます。市議はしどろもどろになる様から、居直る姿まで克明にビデオカメラに納められて行きます。そしてついに・・・というのが冒頭です。
監督はこのちゅーりっぷテレビの取材記者でもある五百旗頭幸男さんと砂沢智史さん、お2人とも若くて、政治記者であり、この映画の出演者でもあります。
対して、市議の方はかなり年配の人物が多く、そもそも最初はこの富山県市議会議員の議員報酬を60万円から70万円へと10万円値上げする事に対する取材がきっかけとなっています。なかなかな値上げ額ですよね・・・
議員が議会で議員報酬の値上げについて協議している、という事実はなかなか矛盾を孕んでいますが、まぁ仕方ない部分もありますし、第3者機関に委託もしているし、やり方はまっとうに見える、んですけれど、もちろん汚職の無い、不正の無い社会は未だ到達していませんし、当然その第3者機関を行う委員会の推薦者、もしくは指名される人選で、すべてが決まってしまいます。当然、議員と関係のある人選がされているようですし、10万円上げる事が妥当と認められます(特にその理由に隣りの県の市議の給料と比較されてて、やはりあの県とは仲が悪いんだな、と実感)。
その後、ちゅーりっぷテレビはその議員の政務活動について、資料請求を行ってその政務活動費にかなりの誤り、もしくは不正、もっと言えば詐欺が行われている事があらわになって行きます。
市議は市民の代表ですし、当然オンブズマンを含め市民の関心や批判の目を向けられますし、その小さくない部分を報道に頼っていると思います。チューリップテレビの行いは、何処に出しても恥ずかしくない、真っ当な行為です。
そしておそらく、市議レベルではない、国政にも同じような部分があると思います。
そういう「はりぼて」をあらわにするこの映画の意義は大きいですし、中でも、大多数の、慣例に従って行われていたと思われる『集金システム』を使わなかった、唯一この人だけは、と思われていた中堅の議員にまで、別の詐欺疑惑があると分かった落胆はとても大きかったと思います。
その後に続く熱い系議員の問題や、その顛末は恐ろしく、しかも居座り続ける、という『慣例』になって行く様は恐怖以外の何者でもない気がします。
私はこの映画の中で鋭く議員に詰め寄る姿を、必要な事だと思います。メディアによる権力の監視は絶対に必要です。ですが、ドキュメンタリー映画として、作品として仕上げて公開し、興行としている訳ですし、記者側のその後が語られない部分、急にカメラを入れるかどうか?を映し、自ら局を辞職するにいたった経緯を煙に巻くのは、とても恥ずかしい行為だと思います。
叩いて埃の出ない人はいないと思います、それでも、追求はしなければならない、果たして何処にその線を引くべきか?大変悩ましいですけれど、私個人は、相手の立場を自らに置き換えて、その様々な可能性に対して下品ではないか?追求に自己陶酔に至って居ないか?が基準だと考えます。
不正を問われ、カメラの前で挙動不審に陥って行く人物を笑うのは簡単ですけれど、不正に手を染めた事が無い(おつりの間違いやそれこそちょっとっした順番待ち列への横入り、等々)人物は稀だと思いますし、100%に公明正大であり続ける事も無理です。
自分が絶対の正義の代行者として、他者を追求する。とても気持ちいいだろうと理解します。1度やったらやめられないだろうなぁ、と思う一方、それでもメディアによる権力者への監視は必要だと思うのです。
気持ちよくなってたら、それは私にとっては悪意がある、と同義に近いです。
私はちょっとあった、と見れてしまいました。
あと、Wikipedia情報ですけれど、監督の生年月日のうち何年生まれなのか だけ ? になっていて、そういう部分からもちょっと何かしらの隠したいという欲望があるんだな、と思う。もちろん不正ではないですけれど。
蛇足の蛇足 で、やはり何度か差し込まれるたくさんカメラが向いている記者会見の場面を、取材される側から見た絵が出て来ますけれど、凄い圧力を感じます。やっぱり、カメラを向けるというのは暴力に近い圧力があると思いますので、今後は、是非記者会見場では取材対象者側から見た絵を入れるべきだし、質問者の顔も入れるべき。私も携帯電話のカメラを人に向けるのはやめようと思いました、ネコにはしょっちゅうむけてしまうけれど、それはやめられない・・・
ドキュメンタリー映画に興味のある方にオススメ致します。
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