クリント・イーストウッド監督 ワーナーブラザーズ
でも今作は良かった。
リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)は法執行官に憧れる、しかしうだつの上がらない男です。かなり太目ですし、規則を守るために大目に見る、という匙加減が出来ない男です。そんなリチャードが雑用係りを務める会社で唯一、リチャードを馬鹿にしない弁護士ブライアント(サム・ロックウェル)との友情めいた出会いもつかの間、リチャードは会社を解雇され・・・というのが冒頭です。
どうしたの?イーストウッド??というくらいイーストウッド性が希薄でした。なんなら悪役にイーストウッド性を感じたくらいです、つまりいつもと逆の構造をしています。
結局、ほとんどの作品が、最後は暴力を使って、悪(もちろんイーストウッドにとっての)を懲らしめます、自分の振るう暴力には寛大で、女性は弱くて守られるべき存在で、そして俺が法律、という事です。そんなイーストウッド性が感じられる人物が悪役なんて、とてもびっくりしました。やってる事はいつものイーストウッドなんですけれど、構造が逆転しています。
リチャード・ジュエルを演じるポール・ウォルター・ハウザーの体形と表情、すごく典型的なルサンチマンを溜め込んだ鬱屈した男性像に見えますし、正直偏見を持ったルサンチマンを溜め込んだ役を演じてきている気がします、特に「ブラック・クランズマン」の時のことですけれど。その「ブラック・クランズマン」の白人至上主義者の役名アイヴァンホーが主人公のように、見える人物が今回の主人公リチャード・ジュエルです。
しかしリチャード・ジュエルはアイヴァンホーとは違って・・・というのが今回です。どう違うのかはネタバレになってしまうので避けておきます。
それから弁護士訳のサム・ロックウェルが素晴らしかったです。最近のサム・ロックウェルは本当に良い役ばかりですし、とてもふり幅が広くてイイですね、役者が好きなタイプの役者さんだと思います。「スリー・ビルボード」も「ジョジョ・ラビット」も良かったですが、どの出演役も似ていない、というのが凄い所だと思います。
メディアと政府組織にタッグを組まれると、どうにもならない気がしますし、この1件で、救われた人物もいますけれど、裁かれなかった人物も多数いるのが、とても気になります。
クリント・イーストウッド作品があまり好みでない方に、オススメ致します。いつも言ってますけれどクリント・イーストウッドの最高傑作は「センチメンタル・アドベンチャー」です、私にとって。
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