クロエ・ジャロ監督 サーチライト・ピクチャーズ
少し時間があったのと近場の映画館の開始時間がピタリとはまって見られる環境にあったので。それに、フランシス・マクドーマンドがカッコイイですし。コーエン兄弟の「ファーゴ」の時から好きになりましたけれど、近年も「スリー・ビルボード」の演技も素晴らしかったですし。
2008年、アメリカ。リーマンショックの余波を受けて一つの街が存在しなくなります。その街を出た70代とおぼしきファーン(フランシス・マクドーマンド)は自家用車で放浪生活をするようになるのですが・・・と言うのが冒頭です。
私の知識が足らないので、いろいろ調べないとワカラナイのですが、いわゆる季節労働者、繁忙期になる産業の臨時の担い手として全米を移動しつつ、完全に自家用車(といってもかなり改造していますし、キャンピングカーとは違う乗り物で、凄く機能的で面白いのが特徴)での生活、ハウスレス状態が日常の人々の生活を追ったドキュメンタリー風映画です。
原作もあるようですし、役名が出演者名の方も多くて、多分原作の登場人物も多く出演されているのだと思います。
とても伝統的なアメリカ人のように感じます、西部開拓時代の、伝統を感じるのです。そう、私の嫌いな西部劇の時代の伝統を、です。その当時は恐らく、国家によるセーフティネットなど皆無に近い状況で、希望だけを頼りに、西部開拓に向かった人々の現代版としてもアップデートが感じられます。
年金に頼る事が自尊心にどれだけの負荷がかかるのか?に自覚的なファーンは仕事を求めて各地をさまよい、同じような人々との交流から、相互ほう助社会を、ノマドの連携を模索しつつ、死という逃れられない事実に向き合う姿が印象的でした。途中からはファーンがまさに決闘に臨むガンマンのように見えてきます。
また、感傷的に煽る構図や、自然光の美しさを感じさせる絵が大変多くて、綺麗ではあるものの、それだけではない厳しい生活を考えてしまいますが、確かに景色は素晴らしいです。フォレスト・ガンプの途中でランナーになる辺りの美しさと言っていいと思います。
ただ、セーフティネットの無い社会の恐ろしさは、とても怖いと思いましたし、結局のところ、豊かな両親の基に生まれたものは更に富み、貧乏な家庭に生まれたものは貧乏になる傾向は、日本よりもさらに強いアメリカという社会の一部を垣間見る事が出来ます。
もう1点、良く分からなかったのが、何でAmazonは季節労働者を受け入れているのでしょうか?年間通して必要な気がしますし、よくこの映画にAmazonが撮影許可したなぁ、とは思います。
1番気になったキャラクターは歩いて放浪を続ける少年です。凄く佇まいが良かったです。ある種ノマドの先を行く、しかも高齢者じゃない存在。孤高の人に見えました。
誰でも1度は憧れる移動する住居生活に、興味のある方にオススメ致します。
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