井の頭歯科

「愛がなんだ」を見ました

2021年5月14日 (金) 09:24

今泉 力哉監督     エレファントハウス

映画に詳しい方が、今泉力哉監督の「あの頃」が凄い映画だった、というのを聞いて、では是非見てみたい、と思いましたが、かなり興味の薄いジャンルの話し(過去のアイドルの話しだったので・・・)であったので、過去作で何かないかと見てみると、Netflixにこの作品が入っていたので見てみました。結構なホラー作品のように感じました・・・とは言え、これは完全に私の受け取り方の問題だと思います、基本恋愛映画は苦手です。でも、倦怠夫婦モノは何故か好みの作品が多いです、多分根がネガティブだからでしょうけれど。

テルコ(岸井ゆきの)は20代後半(?)のOL。好きな人がいて、それがタナカマモル(成田凌)。タナカに呼び出されれば、すぐに駆け付ける、という非常に『ご都合の良い女』に見えるのですが・・・というのが冒頭です。

映画の途中に仕事場の友人ですらない人が言うセリフ「自分も?」が最高でした。真実だと思います。このセリフを言う女優さんの造形がかなり好みでした。唯一、理解出来る言葉で語られるのがこの名前も無い職場の同僚のセリフだけなのも、きっと私の受け取り方の問題なんだと思います。

私はホラー作品、タガが外れてしまった人の話し、と解釈しました。恋愛は、きっとドーパミンは出てると思いますけれど、あまりにその、所謂キマッテいる状態の中毒なんじゃないか?と思うのです。思いだされるのは、同じく私にはホラー小説であった山本文緒著「恋愛中毒」です。この映画の主人公のテルコの先行きは、きっとこの小説の主人公のようになるんでしょうね、本当に恐ろしいです。客観性が無い、というのがいかに恐ろしいのか?を示してくれます。

人を好きになるのに理由はいらないとは思いますが、社会不適合者にまでなっていくのは抵抗がありますし、普通は自分という人格なり身体性なりがあると思いますが・・・

キャスティングが素晴らしいです。多分この映画を好意的に捉える女性たちにとっての、うすぼんやりした集合体の芯を造形的に捉えると、岸井さんの顔立ちになると思います。凄く褒めてるんですけれど、もっときれいに可愛く眩しく撮ろうとすればできるのに、全然しないのが凄く共感を呼ぶと思います、自己投影を安心して出来るラインだと思うのです、美人過ぎない可愛過ぎない、絶妙のライン。私は褒めています、本当です。

さらにテルコの友人ヨウコに好意を寄せる青年に、あの「葛城事件」(私の2016年のベスト3に入る映画作品でした 詳しくは、 こちら )の次男くん!もう怖すぎる。本当にこういう人が居そうです。責任は取りたくないし、自我が傷つくのも怖いが、この関係だけでも僥倖、として先には進まなくていい、ぬるま湯が最高の贅沢、と考える人も居ていいと思いますし、様々なオヤジやオジサン世代のダメな部分を見て育てば、割合普通に出てくると思いますね、こういう人。そもそもの熱量が低位安定している人。

成田・今ヶ瀬・凌さんもどことなくダメな感じがイイですね、しかし、結局なんだかんだこの人はそういう風な人に寄せるのが上手い、流石役者さんですし、近年たくさんの映画に出てるのも分かります。役柄によって簡単に色が変えられるのが凄い。

頭に虫が沸くと大変ですし、沸き続けて居られる精神力は、ちょっと引きます、高校生じゃないんだから。

執着、という感情を基にしたホラー作品として、凄いです。

恋愛映画が好きな方に、オススメ致します。

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