井の頭歯科

「すばらしき世界」を観ました

2021年11月12日 (金) 09:44

西川美和監督       ワーナーブラザーズ

2021年見逃し後追い作品 その3

U-NEXTはかなり早い段階で今年の見逃し作品を配信してくれるので、大変ありがたいです。

長い刑期を満了し終えて出所した三上(役所広司)は、裏稼業や暴力団を渡り歩いてきた男であり、つい暴力によってしか解決できない男ではありますが、堅気になる強い決意と共に、身元引受人になって貰った弁護士(橋爪功)を頼って網走から東京に出てくるのですが・・・というのが冒頭です。

まず脚本というか原作があり、佐木隆三さんの「身分帳」という作品が基になっています。1990年の作品なので、なんだ最近じゃないか、と思いきや、30年も前の作品なんですね・・・私はノンフィクションの作家として佐木さんの作品はいくつか読んでいますけれどやはり「東電OL殺人事件」のルポが、私はあまり好きではなくて・・・何と言いますか、事件の詳細ではなく、事件を調べている自分に酔っぱらってる感じが否めないんですね。もっと事件そのものに迫って欲しいんですけれど、まぁいつもの新潮45な感じを受けるんです。

映画の質はほぼ主演である役所広司さんが担保しています。本当にこの人の演技はいつもハイクオリティで驚かされますし、どんな役でも水準以上の出来にしてしまうのが素晴らしいです。

裏社会で生きてきた人にとっての理屈、当然一般社会では受け入れられない可能性が高いんですけれど、それでも行動には一貫性が感じられます。

今作もかなり良い出来栄えなんですけれど、やはり気になる部分もあって、せっかく役所広司扮する主人公三上の言動や成長が描かれているのに、なんとなくラストが、個人的には気に障りました。ある意味良い結末とも言えますけれど、泣く、という演技の質が、とても気になるのです。

果たしてそこまでの関係性があったのか?という事なんですけれど。

それと、非常に突き抜けた、それこそ三上よりも突き抜けた存在を演じている長澤まさみさんが非常に良くも悪くも印象的でした。演者としての凄みも感じましたし、衣装と人物のギャップが素晴らしい。そして三上なんかよりも恐ろしく闇が深い。それなのに、美人、というのがキャスティングとして凄く良かったです。

役所広司という俳優が好きな方に、長澤まさみが好きな人に、オススメ致します。

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