ホン・サンス監督 ミンサ・フィルム・インク
2021年見逃し後追い作品 その4
そうか、初めて観る監督で、これは結構考えさせられるぞ、という感じです。すっごくいかようにも考えられる感じでして。この監督はちょっと一筋縄ではいかないタイプ。明確なカタルシスは訪れないタイプの監督だと認識しました。他の作品も見てみないと、多分評価できないし、もしかしたら繋がりがあるかも知れません。
鶏が庭で飼われているくらいの田舎に見えるけれどソウルの何処か。結婚してから1度も離れた事が無かった夫が出張して久しぶりに1人になったガミ(キム・ミニ)は先輩であるヨンスンを訪ねるのですが・・・
別に著しく難解な映画ではないと思いますし、ただ単に明快な答えを提示されない事は事前情報としてあってもいいかな、と思います。そしてホン・サンス監督作品が好きになる人は結構一定数いると思いますし、私ももう少し見てみないと分からないですが、とても読み取ろうと思えばいくらでも出来そうな映画で、そういう意味で、豊かだと思います。
明快な大団円を望む人には向かないと思いますけれど。
とにかく、結婚後1度も離れた事が無かった夫婦の夫が出張になり、1人になった女ガミが、先輩2人を1人ずつ訪ね、最後に偶然同期(?)にも会う、という3部構成の映画ですし、短いです。それとあまりに異質な感じのあるカメラの寄りです、多分これもヒントの1つだと思います。
すごく女性を意識していると思いますし、それも結構不思議な感覚で意識している感じです。
基本的には女性に向けられた映画なのではないか?と感じました。
女性の方にオススメ致します。
アテンション・プリーズ!
ネタバレありの感想ですので、ここからは本作を未見の方はご遠慮ください。
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まず、やたらと暗喩的に男女の違いを強調する手法だと思います。雌鶏と雄鶏の関係や迷惑行為とその空間の中でのマウンティング、さらに鶏という朝鳴く主張の強さ、更に必ず3幕とも闖入者的な訪問者があって、必ず男性で、しかもどこか変、何かがオカシいし、凄くみじめな存在として描かれています。幼児性とも取れる発言も多いですし。
1人目のヨンスンは離婚していますし、同居人は肉を焼くのが上手い女性で、しかしパートナーのような関係ではないみたいで、明らかに年齢さが大きく、ちょっとどんな関係であるのか想像し難い。さらにガミはしきりと関係性、特に秘密を打ち明けられる関係を求めているようで、実は自分は夫と一緒にいるし離れてはいけないと言いつつ、それはすべて夫の言い分で、それをただ言われているから守っている、という風にも、取れる言い回しなんです。これは2人目の時も3人目の時も同じです。恐らく主要なテーマなんだと思いますし凄くストレートに考えれば女性の自立を考えさせられるんでしょうけれど、そうすると何故急に3階に拘っているのか?とかマッサージ師とかピラティスの教えでいくら何でも10億ウォン(≒9600万円)はちょっと現実的ではない気がします。しますが、恐らくそんな事よりも、経済的自立を成しえた女が、その上に手に入れたいモノは?という感じがしました。特に2幕で出てくる男が、1番惨めな男の姿として私には映ったので。
で、3幕目は、ついに過去に男を取り合った女性としての同期(?)の女が出てきます。でも、この辺の会話が何を指し示しているのか、どうにも理解出来なかった、何かピースが足りない気がしますけれど私の読解力はこの辺が限界。過去の男と付き合っている女との、共生、という所でしょうか。
この幕に出てくる男も、非常にせせこましく描かれていて、まぁ非常に男性的。昔の話しになると急に饒舌になってみたり、それとなくマウンティングをしだすのが印象的。権威に弱いのはやはり男性なんだと思いますし、まぁそれによって社会的な立ち振る舞いが決まっているのでしょうがないとは思いますけれど、女性相手にそれをするのは、ちょっと、とは思いますね、自戒を込めて。ま、そんなに女と話す機会すら無いので心配いらないのだが。
必ず山で繋がるのもなんか意味があると思う・・・何となく単純には山が男性性を示しているんだとは思いますが。
映画内映画で流れる映像が美しいけど、カメラワークが異常に機械的過ぎる、すっごく違和感があるので、なんらかの意味があると思うのですが・・・そして1幕目の中で隣家の娘との会話、さらにその隣家から逃げた女が存在し、そこにヨンスンを頼りにする就職活動する隣家の娘、読み取ろうとすればいくらでも出来そう。
しかし、逃げた、と過去形にしているので、普通に考えたら、夫の暴力から逃げた隣家の妻が暗喩としてのモチーフで、3名の女性と出会った事でガミが自主性を取り戻す、いやそもそも社会的に無かったと意識させられていた状態を知る、という事で、これから夫から逃げる、という事なのかも。という風にいくらでも解釈できる映画体験でした。
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