ヨルゴス・ランティモス監督 A24
ヨルゴス・ランティモス監督作品はやはり「籠の中の乙女」(の感想は こちら )が飛び抜けて素晴らしい作品だと思いますし、成熟度で言えば最新作である「女王陛下のお気に入り」(の感想は こちら )はかなり洗練されていますけれど、個人的好みとしてはやはり「籠の中の乙女」は本当に素晴らしい作品だと思います。とは言え役者さんにはかなり、いや、トラウマ級の負荷がかかりますし、実際にその後、この映画に出演された事が原因かは不明ですけれど自死されている方がいらっしゃいますので、本当にどうかと思うのですが、しかし、非常に変わった作品を、それもヨルゴス・ランティモス監督でなければ作れない作品を作っているのが本当に素晴らしいと思いますので、見逃していた今作を観ようと思いました。
アメリカの2020年代、心臓外科医として働くスティーブン(コリン・ファレル)は妻(ニコール・キッドマン)と中学くらいの娘キム(ラフィー・キャシディ)、小学校低学年の息子ボブの4人の裕福な家族です。しかし、そこにマーティンという高校直前の男の子が近寄ってきて・・・というのが冒頭です。
聖なる鹿殺し、と言っているので、そして作中にキムの文才を表す為にイピゲネイアと言っているので間違いないと思いますが、ギリシア神話のモチーフです、監督がギリシャ出身もあると思いますが、神話の話しは基本的に悲喜劇であり、結末には諦観が含まれていると思いますし、まぁ因果応報な話しが多いです。が、中でもギリシア神話は多神教の神話なので、非常に人間臭い神様の話しです。イピゲネイアの話しはどちらかというと後日譚に当たる部分で、まぁ映画の後の世界を暗示させる、という事だと思います。
ちょっと分かりにくいけれど wiki情報 アウリスのイピゲネイア
神話は知っている人は知っている、調べたい人は調べるとは思いますけれど、別に知らなくても十分楽しめる作品ではあると思います。
特にカメラワークはかなり独特ですし、凄く寓話的な話しです。でも、ホントこの監督は頭がオカシイと思います(←凄く褒めています)。
そしてこの監督にコリン・ファレルは気に入られてしまったのだと思います、しょうがないとも思いますけれど。それとニコール・キッドマンの非常に醒めた演技が秀逸です。こういう人本当にいそうですし、私は夫も非常に問題があるけど、この奥さんにもかなりの問題があると思います。
でも、私はこの作品よりも、そして前作ロブスターよりも、最初の「籠の中の乙女」があまりに酷すぎて(←何度も言いますが、褒めています)大好きです。こんなに変わった映画を作ろうと思えるんですから、監督もそうとう変人だと思います。
ただ、なんで劇場で観なかったか、というと、下半身が動かない、は演技としてはなんか間抜けに見えるからです。凄く簡単に誰でも出来ると思うので。ちょっとチープに感じたんです、実際見ても絵は凄く綺麗ですし、カメラワークも新鮮さがあったし、特に廊下のカメラの動きとか画角とかシンメトリーですし、表情読み取れない角度で、しかも何故か視点が妙に高いんですよ、そうすると結構な不安感もありますし。でも驚かせようBGMがちょっとうるさくも感じました。
凄く良かったのは、心臓外科医のファニーゲームが始まったところです。馬鹿みたいで最高です。
逆に残念だったのは、ラストシーン。けいさつはどうしたの!ってどうしてもなると思います・・・
ヨルゴス・ランティモス監督作品が好きな方にオススメします。
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