吉田大八監督 松竹
今年日本公開映画を1ヵ月に3本みれたら36本になるので、その中で個人的なランキングをきめようとしているのですが、NetflixやU-NEXTやAmazonPrimeという動画配信サービスのおかげで大変達成しやすくなりました、有り難い。今作もNetflixにあがっていたので。
大手出版社薫風の創業者が亡くなった事で、次期社長を巡って社内の雰囲気が変わった会社を舞台に文芸誌の新人編集である高野(松岡茉優)、そしてカルチャー誌の新任編集長速水(大泉洋)を中心に進んでゆく物語です。
文芸誌は全然詳しくないですし、そもそも雑誌を買うなら書籍を買ってしまう人間なので詳しくは無いのですが、2021年に雑誌を作って売っていくのはとても大変だと思います。
吉田大八監督作品は本当にクオリティが高いと思いますし、好きな作品が多いです。「桐島、部活やめるってよ」とか「紙の月」はちょっと突き抜けた面白さ、さらに脚本も良い上に、キャスティングのマジックが起こっていて、そういうのも素晴らしいのですが、今作はとてもエンターテイメント方向に振り切った感じで、やはり監督ってそんなにたくさん映画を撮る事は出来ないので(例外的な多作のかたもいらっしゃいますけれど)、1本毎にかなり変えてくる人と、同じようなモノばかり撮る人がいますけれど、チャレンジングな前者の方に入ると思います、吉田大八監督は前者で、後者の典型的なのがウディ・アレン監督ですね。
今作は主演は大泉さんなんだと思いますが、今作は大物俳優がたくさん出てきて、それぞれ非常に良い場面を作ってくれています。中でも良かったのは佐野史郎さんですね。また國村隼さんの長髪姿を見れる貴重な作品ですし、演技で笑わせてくれます、イイです。
その上で、やはり大泉さんは今までにないキャラクターで、そこがとても面白かったです。凄くご自身から(と言っても、まぁ「水曜どうでしょう」の大泉さんしか知りませんので、それもテレビの中の話しなのかも知れません。『腹を割って』話したわけではないですが)遠いキャラクターで、それでも大泉さんが演じると、とても愛嬌ある人に感じられるのが良かったです。1つだけ無くてもよかったな、と思ったのはコップを投げるシーン。
それと、松岡茉優さんは本当に見るたびに違うキャラクターを演じていて、本当に凄いですね。今回はまぁ普通な感じですけれど、それでもそつなくこなされていて、その上好感度があるから、視聴者の受け皿になっているキャラクターですから、ある程度普通で、しかも好感度が必要で、それなりに難しいですけれど、良かったと思います。
なんで騙し絵の牙、というタイトルなのか、イマイチ納得出来ていないですけど。
エンターテイメント作品に興味のある方にオススメ致します。
ただ、文芸誌が無くなって良い、コストパフォーマンスに見合わない、という理由だけでは決して納得出来ない部分もありました。それを言えば出版社がなくなる話しだと思いますし。また、個人が世界に向けて発表できる事が可能になった現代ですと、どのみち出版、特に雑誌は難しい時代だと思います。それでも私は書店に行きたいし、電子書籍には抵抗しかないなぁ・・・取次systemも、なんだかなぁとは思うんですけれど。
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