井の頭歯科

「結婚相談」を観ました

2022年7月29日 (金) 09:35

中平 康監督     日活     AmazonPrimeVideo

 

 

またまた友人のオススメ作品です。が、非常に奇妙な映画作品なんですけれど、大変いびつな感じを受けるんですけれど、大変面白かったです。

 

とにかく、芦川いづみさんが魅力的!これは相当な人気があったであろうと思われる女優さんで大変魅力的です。私が見た事あるのは川島雄三監督の「幕末太陽伝」だけなんで、そこまで注目はしてこなかったのですが、素晴らしく美しい。美貌のなせる業なんでしょうけれど、それだけでない演技も見せてくれます、でもこれは、もしかすると監督の好みの演出なのかも。

 

1965年の作品です。

 

 

戦後の昭和。友人と上司の結婚式に出席するツルカワ シマコ(芦川いづみ)は30歳になって結婚を焦り・・・というのが冒頭です。

 

 

現在でも感じる事が出来る、結婚という制度でもあり文化でもあり、当然生活でもある事を考えさせるような批評性のある部分もありますが、とにかくかなり突飛な話しと言えなくもないです。

 

 

しかし、なによりも芦川いづみさんの魅力的な表情がたくさん見れます、そういう意味では成瀬己喜男監督の「乱れる」(邦画の今の所完成度と衝撃度でオールタイムベスト級に好きな作品です)に近いとも言えますが、こちらはもっと起伏のあるメロドラマに満ちています。

 

 

 

 

悲しむ、嬉しがる、パッと明るく転換したり、激しく動揺したり、目まぐるしく表情が変わる芦川いづみさん、本当に表情豊かです、そして凛々しい。ある文章を書くシーンの、机に向かっている芦川さんを、ベタにカメラは机の高さで捉えた顎をひいた決意を持った芦川さんの表情は大変凛々しかったです。奥に見えるシマコの母とのギャップ!(シマコの母を演じている俳優さんのお名前がワカラナイのですが、自然さ!演技の自然さというより、本当にこういう人なんじゃないか?と思わせる自然さ!圧巻です、ただおろおろするだけなんですけれど・・・)演技が上手いというのは、映画内現実の中で、そういう風に、ぴたりとはまって見せられる、映画内現実感がある人、だと思っているのですが、本当に凄いです。

 

 

 

沢村貞子の演技はちょっと凄みを感じましたし、この人あまり認識していませんでしたけれど、相当に幅のある演技が出来る人だと感じました。これは相当凄いですよ・・・名わき役という事になってるのでしょうけれど、確かに!と感じました。なんというか、メガネを外す、というだけでスイッチの入るあの目の演技は、本当に凄い・・・

 

 

それにある未亡人役の俳優さんの名前も分からないのですが、とんでもなく肝の据わった、ちょっとどう演じるか?でかなり変わってしまうキャラクターに命を吹き込んで、非常に突飛な、かなり異様な展開の重要な人物に、重みを与えてくれています。それにしても凄いセリフ・・・令和の今ですと完全なる死語を、その時の用例として用いられている所を目の当たりにしました・・・いや、この昭和初期でもなかなか使わない単語だと思います。

 

 

これ、とても日本的な文化の中での「結婚」という制度の成り立ち方を捉えた作品だと思います。そういう意味で言えば、これからも晩婚化というか、既に晩婚どころではない世界なので、もしこの主人公である芦川いづみさん演じるところのツルカワ シマコさんが現代に生きていたら、昔は窮屈で、世間に縛られていた、と感じる事でしょう。もちろん、逆に今でも縛られている部分もたくさんありますし、何も考えないで『今までこうだったから、何も考えずに従う』という事が出来るのであれば幸せな世界だったんだな、とも思う事でしょうけれど。

 

 

生まれる時代や場所は選べないですからね・・・そして2022年の日本は平和でもありますが、だからこその地獄と言うモノもあると私は感じます。どの世界にもその世界なりの地獄があるように。

 

 

注目はもちろん芦沢さんなんですけれど、本当に『おい、どこで見つけてきたんだよコレ・・・』という銅像が数体出てきます・・・すげぇケンタウロス・・・マジで、いろいろな暗喩に使えるよコレ・・・と思いました・・・絶対、監督の趣味だと思う。

 

 

芦川いづみさんに興味のある方に、オススメ致します。

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