井の頭歯科

「画家と泥棒」を観ました

2022年10月25日 (火) 11:04

 

 

ベンジャミン・リー監督     MadeGOOD 1Films     U-NEXT

 

映画ライターの村山章さんが衝撃の作品!とご紹介していたのと、U-NEXTさんでなら見れるので、観ました。村山さんのご紹介された映画の仲では私の1番は「手遅れの過去」デニス・ホーク監督です。今作も衝撃がありました。今作はドキュメンタリー映画です。

人間の身長ほどの大きさのキャンバスに白鳥を描いていく女性のプライベート映像が流れて、画廊にかけられ・・・というのが冒頭です。

女性画家バルボラ・キルシコワはノルウェイのオスロに暮らすチェコ出身です。そしてこの作家の白鳥の絵画を盗んだ泥棒はベルティル、30代後半のリアルな犯罪者で薬物中毒者です。

絵画が盗まれた後、犯人が捕まって、裁判が行われ、その裁判でバルボラはベルティルと接触をし、そして絵画の行方を尋ねるものの、分からなかったのですが、モデルとして描く事を決め、画家と泥棒の奇妙な関係が始まります。

画家はかなり写実的な絵画の描き手で、だからこそ、絵画の評価は分かりませんが、写真のようでありので、似ているか似ていないかで言えば似ていると思いますし、綺麗です。綺麗なだけなのかも知れませんけれど、後半に出てくる、確かにこれは・・・という一連の絵画作品は、ああ、この人やっぱり、的な恐ろしさがあって。

これは視る、視られる関係の映画なのですけれど、つまり「燃ゆる女の肖像」的な関係でありながら、びっくりする展開があって、というか、まぁ正直に言えば編集による面白さがあって、確かにびっくりします。

何と言いますか、闇を覗くものは、闇から覗き込まれている、という事かもしれません。

すっごくヘンテコリンなドキュメンタリー映画とも言えます。

絵画に興味がある方にオススメ致します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレアリの感想だと、やはり泥棒の恐ろしさよりも、画家の恐ろしさ、の方が際立つ作品ですね・・・どうしても見せられる順番で、あくまで画家が泥棒に寄り添っているように見えて、実際の所は、画家が泥棒の弱さやダメな部分に吸い寄せられている、とも言えます。本当にヤバいのは、画家なんですよね・・・でも芸術家ってこういう人の事じゃないか?とも思います。

 

 

写実的な絵は全然嫌いじゃないですし、象徴主義も好きですけれど、この映画の画家バルボラの絵を綺麗だとは思いますが、正直そこまで素晴らしい作品か?と最初の2枚では思えませんでしたが、後に判明してくる暗い作品は好みの傾向ではあるのですが、もっと、という感じはしました。まるで絵画の事は知らない全くのド素人ですけれど、好みの話し、は誰でも出来ると思います。

 

 

ただ、なんとなく、画家は絵が売れる、とか有名になる、という部分に拘りが無いとも言えますし、本当はあるからこそ、ドキュメンタリー映画に出ているのでは?とも思えるのですが、正直何処まで考えているのか?分かりませんでした。今考えてみても、どっちとも言えない気がします。ただ、描かれているモチーフ、特に人間というよりは、自分の弱さとか、ダメさに強い興味があり、ダメになりたい、までは言い過ぎかもしれませんけれど、何処かに破滅願望のようなモノを感じますし、はっきり死を感じます。そういう風に見せる文学者や画家は多いと思いますがほとんどが男性で、しかも、その手の見せ方を特定の女性に魅せてなんとかしよう(性的関係に持ち込もう)という男性は多いものの、女性のタイプは珍しいと思いますし、実際に何処までベルティルに、いや、ベルティルの何処にそこまでの弱さを感じているのか?はちょっと分からなかったです。

 

 

ベルティルは環境がそうさせてしまった、と言える部分も多いでしょうけれど、しかし、良く描かれるタイプのワルであり、画家と比べて、普通の人に見えます。特別凄いのは、刑務所を出ているのに、割合彼女が絶えない部分ですね、ホントにスゴイ・・・

 

 

刑務所に入る前の顔つきと目の危うさに、薬物中毒者の特徴を感じます、リアルな、かなりリアルなモノだと思いますし、口調、喋り方の、ろれつが回っていない感含めて、やはり薬物中毒者のソレを感じますけれど、刑務所に入る事で立ち直れている、と感じられますし、これは薬物中毒の恐ろしさ、常用性や再犯率を考えると。かなり凄い事だと思います。

 

 

で、ラストのビックリですけれど、あれが、どこまでの感覚なのか、そして何と言いますか、凄く女性的な感覚でしょうね、とは思います。ちょっと、正直、引く。いや、正直ドン引きです・・・そう言う意味で衝撃的。 この映画の仲で1番共感出来たの、バルボラの今の彼氏さんです・・・この人の話している事、まんま、その通りだと思います。でも、これが、芸術家のパートナーの苦労なのかも、とは思いました・・・ 薬物に縋っているのと、芸術に魅入られてしまっているのだと、どちらが危険なのか?と言えば、いろいろなケースがあると思いますけれど、今作の画家ベルボラと泥棒ベルティルの場合は圧倒的に、バルボラがヤバい。なんか、途中まではあくまで撮影される事に意識的で自己演出出来ていた感じがするのですが、途中から、マジで歯止めが効かなくなってきているように、視えなくもない。という部分も、また恐ろしい。

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