セルゲイ・ロズニツァ監督 SUNNY FILM シアターイメージフォーラム
この作品に気付けたのは、友人の先生が観られていたからで、監督作品は以前に観に行こうとしたのですが、チケットが売り切れていたので、残念ながら見られなかった作品です。ですので、この監督作品は初めて見た事になります。
全編に渡って(厳密にいうと、恐らくラストの数カットは、監督自ら撮られたかも知れませんが)、基本的にフッテージした、つまり何処かの誰かが、もしくは国家や当時の体制が残した映像記録であり、様々なモノを繋ぎ合わせて作品にしています。つまり監督が撮ろうとして撮った映像作品では無い、というのが最も特徴だと思います。しかし、まぎれもなく事実が映し出されています。恐ろしいまでの。本当の本当には、確かめようがないのですが、嘘をつく理由が無いので、本当の出来事だと思います。
ドキュメンタリー映画であっても、見せ方、モノローグ、音楽、編集等々によって、割合簡単に、観客を一定方向に引っ張る事は出来ると思います。もちろん今作も、監督の目的に沿った映像を繋ぎ合わせていますし、監督の意図もあるでしょう。しかし、それよりも、事実が、何が起こって、その過程が、結果が、画面に映し出されていると思います。かなりの衝撃作です。この手法でしか味わえないですし、テーマに合っていると思います。
1941年6月のウクライナ、キーウ。ナチスドイツ軍によるバルバロッサ作戦の開始により、ウクライナはナチスドイツの支配下に置かれます。その侵攻の場面から映画は始まります。
その後、ウクライナの人々は、ヒトラーを、解放者とまで呼んでいます。それまでのソビエト連邦の支配がどのような状況であったか?は示されませんが、解放者と呼びたくなる状況だったのでしょう。
しかし、ナチスドイツの支配下に置かれた後に、市街地で爆発事件が起こります。この爆破事件は撤退したソビエト連邦の軍が撤退前に仕掛け、遠隔起爆させたのですが、市民はこのテロリズムをユダヤ民に向け・・・というのが冒頭30分くらいだと思います。かなりの衝撃ですし、撤退していったソビエト連邦の統治が効かなくて、ナチスドイツ軍が統治を始める辺りまでの、市民同士での小競り合いの映像もあるのですが、物凄い衝撃があります・・・
本当に、本当に恐ろしい映画でした・・・
何と言いますか、映画化する為に撮られた映像ではない、という事が、より事実性を顕著にし、だからこそ、映っている、動かしがたい事実を、強く印象付けるのですが、実はまだこの映画の序盤でして、この後、さらなる驚愕の事実が描かれています・・・
この映画を出来るだけ多くの方が目にすべきだと思います。
恐らく、ナチスドイツがユダヤ人に対する処遇なり思想を、ウクライナのユダヤの方も、少しは知っていたのではないか?と思うのです。それなのに、粛々と、列をなして歩いて向かう先の渓谷バビ・ヤールに向かうのが、私には恐ろしく感じます。この先で何が起こるのか?を知っていたのではないか?と思うと・・・そして、市民の側が何かしらの抵抗をした形跡が無いのも、酷く恐ろしい。
そして、この後ウクライナの人々はソビエト連邦に再び解放、支配された後の歓迎ぶり、その後のある裁判、そして裁判結果に基づく刑の執行と、それを捉えているウクライナの人々の様子が写されるのですが、本当に恐ろしい。
人間という生き物の、救えない、愚かさ、底なし沼のような感覚を覚えました、もちろん私という駄人を筆頭に。
だからこそ、知る事の重要性を感じますし、ウクライナ人である監督がこの作品を作り上げた事の意義を強く感じます。
人間である人すべてに、オススメ致します。
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