井の頭歯科

「世界の終わりから」を観ました

2023年5月30日 (火) 09:18

 

紀里谷和明監督     KIRIYA PICTURES     吉祥寺アップリンク

タイトルが気になって観に行きました。こういうおしまい、という雰囲気が好きです、根がネガティブなもんで。初めて観る監督です。

両親は事故死して祖母と一緒に暮らしていたのですが、その祖母も在宅で病死してしまった、高校生のはな(伊藤蒼)は不思議な夢を見ているのですが、そこでは昔の日本っぽくて、侍が争っています。というのが冒頭です。

えっと、気分的に「ミッドナイトスワン」を観た後なので寛容な心持ちです、ある種すべての映画に対して優しい気持ちにさせるなんて、なかなか出来る事じゃないですよね。でも、いくらすべてに優しい気持ちになりたいから、と言ってももう金輪際2度と見たくないですけれど。

 

志はかなり高いと感じました。そして結構絵は頑張ってると思います、多分そんなに潤沢な予算があるわけじゃなさそうですし(というか日本映画界で潤沢な予算なんてどこにもないでしょうね・・・)、それなのに、かなり難しい絵が必要なストーリィ。まず、この点をダメなのではなく、志として評価したいです。

まず、良かった所(この出だしで察してください)。

主演の伊藤蒼さん、の泣きの演技は相当です・・・個人的に泣かれる映画って好きじゃないけれど、全編にわたって、ずっと困惑して困ってます、常に、です。まぁそういう脚本なんだから仕方ないのかも知れませんし、この俳優さんの眉毛が凄く特徴的に困ってるように見えます。なので泣き一辺倒の演技なんですけれど、それなりのバリエーションがあって凄い。それにずっと困ってる演技を続けるの、凄く大変だったと思います、お疲れ様でした、と言いたい。初めて観た方と思ったら、吉田恵輔監督「空白」のあの娘でしたか・・・他の映画でも困ってる!

 

凄く、凄く大きく見れば、名作成瀬己喜男監督の「乱れる」の高峰秀子さんのような大役を務めたと言っていいかと思います。

夏木マリさん、この人しかこの役にある程度の説得力を持たせる事は出来なかったと思います、ご苦労様でした、と言いたいです。

それと侍の役の出演者の皆様方、かなり大変だったと思います。侍をこういう形で使うアイディアは悪くないし、日本映画の結構重要なコンテンツだと思うので、それも良かった。

あと、とある女子高生がラスト近くにちゃんと〇〇されたのは溜飲が下がって良かったです。

そして何より、モノクロの絵はかなり頑張ってると思います、それなりにお金をかけていると思います、この点も良かった。

総合的には、1990年代のセカイ系と呼ばれる一連の映画の系譜です。だから、この映画の世界観に没入出来た人にとっては素晴らしい、という評価になると思います。逆に乗れなかった人には酷評されてしまうでしょう。

 

この規模の映画で扱う脚本じゃなかったのかも。ここが最初の一歩目ですけれど、このズレを志と捉えれば、凄く頑張った、とも言えるし、ズレと捉える人には最初からダメってなる。

頑張ってるだけじゃダメなのが映画という芸術でもありますよね。

非常に独特の世界観。でもオリジナリティはあまり感じないです、何処かで見た、何処かで読んだ、そういう感じの世紀末系のセカイ系。セカイ系という単語の定義は難しいところですけれど、個人的な意見でまとめると、世界の中心に自分がいる、と考えがちな思春期特有の感情を、映画なり、漫画なり、本の中で、本当に世界の中の重要な役割を何でもない自分が負わされて、その価値を見出す、という感じになろうかと思います。つまり、そういう話しです。

だから目新しさは無いです。でも頑張ってる。だけれど、細部にいろいろ無理があるんですよね、それに、2023年という今となっては、1990年代のモノが古く見えるのは仕方ないと思います。

いろいろ言いたい事はあるけれど、映画を観ている最中は割合、どうなるんだろう、という気持ちになったし、何しろ優しい気持ちになっているので、そういうのは言語化しなくても良いと思いました。

1990年代の映画が好きな方にオススメ致します。ただし、ミッドナイトスワンを観た後の評価です。もし、観てなかったら、と考えると、怖い。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ブログカレンダー
2024年12月
« 11月    
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  
アーカイブ
ブログページトップへ
地図
ケータイサイト
井の頭歯科ドクターブログ