井の頭歯科

「八甲田山」を観ました

2023年10月20日 (金) 09:09

 

森谷司郎監督     東宝     DVD
知人にお借りした、有名な日本映画です。公開は1977年、私は7歳でしたが「天は我々を見放した」というセリフは有名で、何も見ていないのに、覚えています。
明治35年(1902年・・・120年前・・・)弘前第八師団の第四旅団本部で会議が始まります。ロシアとの戦争が避けられない事態にあった日本陸軍は、寒冷地での行軍、野営等の装の為の演習として、雪中行軍を行う事とし、歩兵第五連隊と歩兵第三十一連隊に、それぞれ厳冬期の八甲田山で訓練を行う事となりましたが・・・というのが冒頭です。
原作は新田次郎の「八甲田山市の彷徨」で、ややこしいのですが、これは1902年の八甲田山雪中行軍遭難事件を基にしたフィクションです。ですので、いわゆるハリウッド映画の実話です、と同じくらい脚色はされていると思います。
出演俳優が物凄く豪華で、これは東宝もかなり力を入れた作品だと思われます。何と言っても脚本を橋本忍ですから、かなりの超大作と言って良いと思います。
高倉健、北大路欣也の2大スターの競演ですし、丹波哲郎、加山雄三、大滝秀治、緒形拳、森田健作、前田吟、菅井きん、秋吉久美子、加賀まりこ、小林桂樹、三国廉太郎ざっと私が知っていて画面で確認出来た俳優さんだけでも、これだけ揃っている作品はそうは無いと思います。
中でも、北大路欣也さんの演技は、この状況下の中での中間管理職の悲哀を感じさせるに十分で、演技の熱量は高すぎるくらいですし、個人的好みからも離れますけれど、そういう事を全部失くして、とにかく観てください、としか言いようのない迫力があります。
高倉健の渋さ(公開年が1977年、撮影は1年以上前と考えても当時45歳・・・若すぎるのに渋い)、丹波哲郎の安定感、加山雄三の洒脱さ、大滝秀治の老獪さ、緒形拳や前田吟の言葉使い、秋吉久美子の若さ、加賀まりこの美人度、小林桂樹の普通さ、そして三国廉太郎のとぼけ、どなたも凄いのですが、北大路欣也さんが全部持って行った感覚があります。
それ以上に凄いのが、撮影、です・・・
驚愕の映像だらけですし、実際に、かなりの寒冷地で行われた撮影のようです・・・つまり、実際にかなりの寒さの中で撮影されている、と思われるのです・・・今だとまず出来ない過酷さだと思います・・・
なにしろ照明が、ほとんどの場面で弱い上に、恐らく、顔に当てる分しかない、くらいの過酷さだったと思われます・・・
当たり前ですけれど、これは、恐らく、晴れ待ちならぬ、吹雪待ち、という事もあったのではないか?と思われます・・・何時間待つことがあったのか?恐ろしいですし、役者さんもですけれど、撮影クルーも相当な負担があったと思います。
超大作ですし、物凄く贅沢で優雅な時間の使い方もしています、これは今の人が見ると、テンポが悪いと言われかねないですけれど、個人的には2023年の今の感覚で観ても、かなり必要な時間のかけ方だと思います。贅沢な事だと思います。
寒冷地で厳冬期に、わざわざ行った雪中行軍の中での、中間管理職の悲哀とともに、何と言いますか、意見が出来ない、というか論理的な判断が行えない事の恐ろしさを、十二分に理解出来ます。個人的に思い出したのはリドリー・スコット監督「ブラックホーク・ダウン」の戦闘シーンです、現場は地獄絵図なのに、司令部も混乱していてまともな指示が出せない中で、ヒトが死傷していく様が、恐ろしいまでに同じ気がします。
主演の徳島(高倉健)大尉と神田(北大路欣也)が、もし率いる隊が変わっていたとしても、恐らく軍隊であり、決定権が上にある状態ですと、同じ結果だったのではないか?と思われますし、そうい意味で悲惨ですし、どんなに現場の責任者が意見具申を行ったとしても、決定権を持つ者が愚者であれば、全く意味がない、という事の典型な気がします。
翻って、うちの国の官僚は試験があるけれど、政治家を選ぶ選挙に於いて、圧倒的に有利な二世議員三世議員が多く輩出され当選している現状は、かなり危なく危険な気がしますけれど、それを国民自ら選んでいるので、まぁ自業自得、という事に今後なるんでしょうね・・・
雪山登山に興味のある方にオススメ致します。

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