古賀豪監督 東映 吉祥寺アップリンク
とても評判が良かったので、個人的にはかなり警戒して臨みました・・・なにしろ世間の評価と私の好みはかなりズレたところがあるのだと、ミッドナイトスワンとか市子とかゴジラマイナス1とか君たちはどういきるのかとかで懲りた1年でしたので・・・
まぁみんな観たいモノを観れば良い訳ですし、観ないと評価も出来ないですし。
で、この映画は当たりでした。人気が出るのも非常に良く理解出来ました。
先の大戦後の復興著しくもまだ傷跡の残る昭和31年。戦争で莫大な利益を得たとされる龍賀一族の当主が亡くなったので、取引のある血液銀行の一員水木が龍賀一族の住む哭倉村を訪れるのですが・・・というのが冒頭です。
大変面白い脚本だと思います、原作はもちろん水木先生なのですが、水木先生テイストの脚本を書いた吉野弘幸さんが本当に凄いです。どう考えてもこの脚本が無いと、それ以外の素晴らしい要素を詰め込められなかったので、吉野さんの功績はかなり大きいと思います。
これは、今年の映画で言うなら「福田村事件」のように、興味のある人しか見ない作品よりも(作られた事は大変に素晴らしい事ですが)、エンターテイメント性を担保しつつ、ストーリーの中にテーマが織り交ぜられているので、どんな人でも観る事が出来る、そして、アニメーションだからこそ、子供にでも理解出来るようになっている点が、本当に素晴らしいです。正直「福田村事件」よりも、恐らく長く観られる作品になると思いますし、そのテーマを理解する人が多くなると思います。
それと、これは凄く当たり前のことですし、なんでこんなことが許されていたのか?全然意味不明ですけれど、この映画の中で語られる『M』と言われる血液製剤って、多分ヒロポンの事でしょうし、そういった割合昭和の暗部にも、調べようと思えば調べられるようにしているのは配慮がなされていると感じました。誠実さがあるのは善き事だと思います。都合の良い事だけ、心地よい事だけにしないのは重要ですし子供騙しにしないのも立派。
そういう脚本上の配慮の良さがあってこそ、なんですけれど、その上に更なる創意工夫があります。
今作はいわゆるバディムービーでして、水木という観客の目線の語り部と、予告で名指しされているので構わないと思いますが、鬼太郎の父のバディが謎を解決する話しです。
しかも、水木はどう考えても原作者水木先生を彷彿とさせるキャラクターで、戦争体験者です。その上、戦争で最下層で戦わさせられた、水木先生と同じ玉砕の命を受けた者なのですが、その事がこの脚本で非常に生かされているのも素晴らしいと思います。
久しぶりに野沢さんの声聞きましたけど、この人年取ってない気がします。
それと、ここまでの悪役、ちょっと今年観た映画や小説、ゲームでもなんでもアリの中でも、ここまでの純粋な悪を感じるキャラクターはちょっといないと思います。
ネタバレは避けますけれど、これは観た人といろいろ語りたくなる作品。
横溝正史 meets 水木しげる + バディ 映画
是非のオススメ作品です。
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