井の頭歯科

「人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版」を観ました

2024年7月19日 (金) 09:11

 

武石浩明監督    TBSドキュメンタリー     Amazonprime
2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は18/68
またまた山映画好きの友人からオススメいただいたので、すぐに観ました。彼は全然山登りをする人間じゃないのですが、彼も私も、恐らく、登山に興味があるわけではなく、人間の狂気に、興味があるのだと思います。今回も、恐ろしいほどの狂気が画面に映し出されていました・・・
スリルジャンキーの映画と言えば、私にはどうしても、ハート・ブルーとハートロッカーの2本を監督したキャサリン・ビグローの事を、そしてその中でも特にハート・ブルーのボーディ役、パトリック・スウェイジを思い出してしまいます。私が観た事がある映画や小説の世界で最も、スリル・ジャンキーとしての姿形がかっこよく、悪なのに惹きつける魅力があるという典型例として認識しています。
そして今まで観てきた山岳映画の中には、この手の人たちが数多く出演しています。特に中でも忘れがたいのが同じ友人が見せてくれた「メル―」の3名登山家です。彼らは常軌を逸していますし、その常軌の逸仕方に、狂気の上の狂気を感じますし、その狂気に魅せられる人が存在する事にも、理解出来るようになりました。
そしてこの映画は山野井さんという登山家が、何をしてきたのか?を追いつつ、1人で登る、というフリーソロという事にこだわり続けている様を描いています。
フリーソロ、誰も助けてくれない状態で、命綱無しでのクライミングの事のようですけれど、劇中のクライマーの言葉を引用すると「遊びとか行為でここまで人命がかかり、亡くなられている競技は他にない」とも言っていますけれど、まさに狂気です。
ホモサピエンスは進化の過程で、恐怖を覚えています。学んでいると言ってもイイです。それは当然、死を忌避する行為です。しかし、同時に好奇心というホモサピエンスくらいしか獲得できなかったモノもあると思います。これに信念とかが加わってくると、尊い事や宗教的奇跡などが現出するんでしょうけれど、確かにクライミングでも起こるとは思いますが、その代償はあまりに大きいと思います。
この代償が、どのようにして支払われ、生活に影響を与えるのか?を、ドキュメンタリーですから、画面に映し出されるのですが、私個人としては、非常に恐ろしいです。凍傷も恐ろしいですけれど、そもそも命の危険があるけれど、それでも登山に出掛けてしまう人の狂気、代償を支払う事を理解してもやめられない狂気、大変に恐ろしいです。
そして、相手は自然なので、当然のごとく、その摂理のみで営まれている世界に、人間が入っていくのに、自分だけが出来る、と思い込めるのも根拠の無い自信を垣間見てしまいます。もちろん非常にその世界での高いレベルを自覚しているからこそ、なんでしょうけれど、それでも、そもそも全くの自然の中で人間の1人のチカラなんて無いにも等しいという事は十二分に理解している人が、発している言葉として、恐ろしいのです。
そこに、初登頂とか、初踏破、とか、いわゆる名前を残す、という現象に対する強い希求もある気がしました・・・
山野井さんの人柄、その上での狂気。
ホモサピエンスの狂気に、あるいは登山に興味のある方に、オススメ致します。

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