井の頭歯科

「Mommy マミー」を観ました

2024年8月30日 (金) 09:18

二村真弘監督     TOFOOFILMS     シアターイメージフォーラム
2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は25/82
ちょっとドキュメンタリーの良質な作品が観たくなり、話題にも上っていたので。ただし、それなりに地雷臭もしたのですが、今行けるの劇場の中ではこれかな、と思って。
観終わった後、席を立ってから劇場を出るまでに聞こえた、前の前に座っていた若い女性2名の会話
「私、林さんはやってないと思うわ」
「なんで?私もそうかもとは思うけど」
「だって、動機がないじゃない?」
「確かにそうだけど」
「でも私だったら、カレーに入れちゃうことあるかも」
(私:ええええええええええ!)
「なんで?」
「だって子供だったら、どうなるか分からなくても、やってしまう事あるでしょ、私だったら入れちゃうかも」
(私:ええええええええええ!!!!)
「ふう~ん」
という怖い会話を聞きました、そして、この映画を観て、単純に、観たモノの意見をそのまま取り入れちゃう人の実際を見てしまった気がします。それって、当時の放送やテレビ報道が過熱して繰り返した事を批判する映画を観た人として、すんごく違和感しかない反応で、この映画がなんも響いてない証拠、ある種の形や証明になってやしないか?と感じてしまったからです・・・ちなみに他の人は無言でしたので、劇場内みんなが聴こえていました・・・
それと、客層が、まぁとても雑多で普段映画を好んで観に来ている人の割合、が低いので観客のマナーの悪さも、結構な状態でして。私の斜め前のおじさんは完全に飽きてて、スマートフォンを取り出しては何度も時間を見ているようでしたし、なんだかなぁと言う感じです・・・そうテレビの前のお茶の間感覚でした。これが世間という奴か!
本当の所は分からないけれど、お茶の間に存在する、下世話な野次馬(もちろん私もその1人)が観に来ている映画、のような鑑賞体験になってしまいましたし、実際、この監督はまだ若手ですし、それほど上手くは無いとも思いました・・・そう言う意味で残念・・・
あくまで個人的な興味について、シリアルキラーになった、ならざるを得なかった、という人物の動機が気になります、環境含めて。どうしてこのような人物が生まれてしまったのか?について。だから「屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ」のような映画を観に行くわけです。
なので、今作もその点に興味があるわけです。
ですが、残念ながら作りがもうふたつくらい足りないですし、もっと短く出来たとも思います。まだテーマが絞り込めてもいないし、ブレを感じます。でも若さのなせる技、の良い部分もあったし、残念ながら悪い部分も見受けられました。
衝撃作かな?私は全然衝撃無かった・・・
ドキュメンタリー映画って基本的に素材で監督が言いたい事をまとめる作品だと思いますし、ドキュメンタリーだから全部本当、というのはリテラシーが足りないのでは?と思います。それなりの新事実があれば、そこを軸に語れるのですけれど・・・私にとっての新事実は無かったです。無かったは言い過ぎかな・・・知らなかった事はいっぱいあったけれど、事件の根幹に関わる新事実は無かった、と言う意味です。
それでも、ドキュメンタリー映画が好きな方にオススメ致します。
アテンション・プリーズ!
ここからは映画のネタバレがあります。
なので、鑑賞された方に読んでいただきたいです。
まず、監督の動機として、知らない事件について、ちゃんと調べようと思って取材をするのは素晴らしい事ですし、データの出した人、その人とは別の科学的検証の批判者を両方の言い分を聞くのも姿勢として良いと思います。
また、その人物に迫るために、故郷の話しを入れるのも良いでしょう、でも、残念ながら整理出来てないし、何かしらの関連、人物の育成環境に迫るまで至っていない。正直あまり関連を感じませんでした。
また、ナレーションでの手紙のモノローグが入るのですけれど、これが、何時、誰に宛てた手紙なのか?全然分からないし字幕の補正もなく、もう一つ努力して欲しいところです。
で、科学的な検査について、確かに、資料を提出した先生は、その先生が任された中での仕事で、もちろん主観だけれど、そして凄く大雑把ではありますけれど、当時はそれでよかったんじゃないかな?とは思います。ただ、新しい分析方法があれば、当然やるべきだし、偉いなと思ったのは、それでも取材に応じてカメラの前に出てくるこの先生の態度は尊敬に値すると思います。それにこの先生だって新しい検査方法があればやった方が良い、という趣旨の発言しているし・・・
問題は新しい方法があって、保存されている資料で調べればよいのに、結局調べていない、という事です。これも検査結果を実際に提示出来ていないんですね・・・もちろん違う可能性あるけれど、この事件の資料を使って調べられていないわけです・・・そりゃ説得力は落ちますよ・・・
次に目撃情報ですけれど、1階からなのか、2階からなのか?全然意見としての信憑性が低い。これはずっと言われてる事ですよね。
で、最後に動機です。ここに最も興味があるのだけれど、分からない。何も新しい証言も無ければ憶測すらないです。
で、私も冤罪だろうとは思います。思いますが、冤罪事件で判決が出ていて、それを覆すのは凄く難しいという事実は、これまでの歴史が物語っていますし、そもそも、新しい科学的知見や捜査方法が見いだされた時に、それを適応する仕組みが無いのが問題。だとすると冤罪事件ってもう簡単に覆す事が出来ないし、そもそも法治国家の体を成していない事が問題。
でもそこまで切り込むわけでもなく、当時の判決を出した裁判官にインタビューするも特に何も答えが得られるわけでもなく、当たり前ですけれど、裁判官が自分の判決に対して、簡単に反対や疑義を発言するわけないし、そもそもただの当事者で、これも仕組み、システムを変えないとイケナイ話しに見えます、というかずっとそうです。
であれば、このシステムが問題です、という指摘をして人口に膾炙する認知を高める作品にすればいいのに、それはしないんですよね・・・ココにブレを感じます、まだテーマが絞り切れていないように感じるんです。
動機も不明、真犯人のめぼしも無く、新事実と言えば、特に無いし、地方の保険金詐欺について、集団での詐欺事件の側面は理解出来ましたし、知れて良かったけれど、それはこの事件の本質と、関わってはいるけれど、それを基に過剰な報道をして過去と、同じ構造になっていると思うと、なんだかなぁと言う気持ちになります・・・
林宅に居候していた人物、これもどこまで何が怪しいのか?凄く分かりません。当時を知る人物で、確かに不審ではありますけれど、だからと言って何か出てくるわけでもなく、さらに、監督自ら法を犯してGPSを取り付け、しかも逮捕、示談で不起訴処分です・・・
GPSを取り付けたのは誰なのか?その人物と示談中の会話で何か新事実があったのか?という新しい強引な手法を試していたのではないと思われるので、ここでこの映画の信憑性まで下がってしまいました・・・という事はこの映画に出てくる人物で、カメラに収められている人物は、もしかすると監督にとって都合が良いように描かれ、切り貼りされて映されている可能性が高くなると思います・・・それでも、映画の中に、自分の逮捕のシーンを入れているので、まだ、少しは信頼性が残っている、という事です。そう言う意味でもまだ稚拙なんだと思います。
あ、偉そうに書いていますけれど、もちろんこれは何も作品を作った事が無い、なんなら能無しの白痴な私の勝手な感想で、他のドキュメンタリー作品と比べて、稚拙なのではないか?私はそう感じた、と言っているだけです。単純に作品を作って映画館でかかっている人に言える言葉なんて何もないです。ゴミがわめいているだけです。
そういう事件としての、動機、真犯人、そういうのは全部全然何も解決していないどころか見る前と見た後でも何も変わらないです。
1点だけ、その後の家族の様子の中で、この映画は林家の長男の視点で進むのですが、お姉さんの話しの部分だけは、映像もそこにモノローグを当てるのも上手いと思いました。
それ以外の、海とか空とか雲とかの映像部分はもっと削れるし、短くも出来たと思います。
で、林死刑囚の夫の独白なんですけれど、私は、全然信憑性を感じませんでしたし、この人は次の瞬間に「あれは嘘やで映画だからオモロくしようとしただけや」と言い出しそうなんです・・・だって詐欺事件の主犯ですよ・・・味を占めて何度もやって、周囲の人物も巻き込んで、凄くいかがわしい人物に感じました・・・なのでこの人物の発言は全然信用できないし、この人の立場で、こうしてカメラの前に出てくるの、凄い神経の持ち主だな、とも思います。
良かった点を挙げておくと、フレデリック・ワイズマン特集をシアターイメージ・フォーラムでやるの知れた事。名作チチカット・フォーリーズを見れるチャンスがある。二村監督も、是非一緒にフレデリック・ワイズマン見ましょうよ~きっと衝撃あると思いますよ。

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