デイヴィッド・ボダニス著 伊藤 文英・高橋 知子・吉田 三知世訳 早川書房
患者さんからお借りしていた本なんですが、とても面白かったのに読み終わるのに時間がかかってしまいました、何故なら仕事の合間だけで読み続けた本だったので(笑)科学伝記モノで、しかも面白おかしく、そして時にスリリングに『方程式』の成り立ちとその歴史を学ぶことが出来ます。基本的には学ぼうというわけではなく、知る楽しみを刺激する本であり、ぐいぐいと引き込まれましたが、なにぶん、仕事場での合間合間に読み続けたので、少し時間がかかってしまいました。
私は読書する場合は、いくつかの本を平行して読んでいることが比較的多いです。例えば、通勤用、仕事場の合間用、トイレ用、読み詰まった時に気分転換出来る(短編)用、などですが、もちろん波に乗ってしまって続きが気になって仕方が無い場合などは集中して持ち歩きながらでも読んでしまいますが、いくつかの本を読むのが贅沢な気がします。なので、エッセイや短編、今回のような科学モノや純文学小説など、ジャンルも違うものだと、よりしっくりいろいろな用途に分けて読みやすいシュチエーションがあるような気がします。
世界で最も知られている『方程式』であるE=MC2は一体どういう意味であり、何故こんなにも有名になったのか、そこに科学に疎い一般の人々にとっても関係深く感じさせられるものが潜んでいるのか?をとてもスマートに語ってくれる本です。いつもながらオススメ頂いた患者さんに感謝です。
科学者アインシュタインがこの『方程式』を生み出した経緯、また構成されているエネルギー(=E)、質量(=M)、光速(=C)そして2乗について、分かり易く、しかもその意味するところとその歴史的経緯を踏まえながら解説されるので、面白く読めます。
この『方程式』がどういう意味があるのか?は全く知らないけれど、この『方程式』は知っている状態で読みましたが、だからこそいかに凄い『事実』なのか?を衝撃を持って読めましたし、この『方程式』に関わった様々な人々の物語を俯瞰することも出来ます。しかも語り口がソフトで眼差しが暖かいのです。
もちろん、この『方程式』から原子力関連のすべてがはじまるわけですから、悲劇を含んだ物語でもあります。なので、今こそ知っておくべき知識かもしれません。そして科学史モノとしても楽しめます。
質量は光速を2乗したエネルギーを持つ、ということに気がつけるとはどういうことか?非常に興味深かったです。
また、この『方程式』から始まった核兵器開発と第2次世界大戦に於ける開発競争、そして関わった人々の葛藤や評価も鋭いものがあり、中でも重水素関連の手に汗握るサスペンス、そして『命令』の重みを感じることで作戦を躊躇してしまう人間ドラマを丁寧に描いています。
関わった人々の後日譚まであって、なんだか「ガープの世界」ジョン・アービング著みたいでした。
原子力に興味のある方に、漫画『栄光無き天才たち』のような科学史ドラマに興味がある方にオススメ致します。
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